数は増加から減少へ、総面積も…書店の現状を数字面から確認する
書店数は減少、総面積も増加から減少へ
ネット通販が普及し、電子出版も浸透が進む現在でも、紙媒体の出版物を購入するメインルートとして君臨しているのが書店。しかし状況の変化に合わせて、または流される形で、集約化・大型化の動きが進んでいる。その実情を日販の『出版物販売額の実態』最新版(2015年版)などから確認していく。
まずは書店数と総坪数の推移。入手可能な『出版物販売額の実態』を基に、2004年度から2014年度における、各年度末の数字をグラフ化したのが次の図。右側の坪の軸は「変化を分かりやすくするために最下層がゼロではなく90万坪」であることに注意してほしい。
「書店数の減少」「総坪数の増加」の流れがかつてはあったことが確認できる。ところが2010年度をピークにその流れは変わり、店舗数だけでなく坪総数まで減少しはじめている。数年継続した流れである以上、トレンドが変わったと判断した方が妥当ではある。
タイミングから察するに、スマートフォンの普及に伴い出版物を取り扱う本屋の需要減退が加速したか、震災で痛手を受けた本屋が閉店を余儀なくされたなどが主要因として考えられる。または既存店舗の集約・大型化が一段落ついたのかもしれない。むしろそれら複合的な要因が偶然にも畳み掛けるように同時に生じた、その可能性が一番高そうだ。
店舗数の減退は以前から継続中でその勢いは強い。この数年は総坪数こそ減っているものの、それでも1店舗あたりの平均面積は増加中のさなかにある。あくまでも単純計算でしかないが、書店数・総坪数、この2つの数字から1店舗当たりの平均坪数を算出すると、「書店の大型化」(大型店舗のみが生き残る、新設店舗の大型化、既存店舗の拡張、etc.……)の動きが見える。
結論としては
「店舗数減少」
「1店舗当たりの平均売り場面積の増加」
「書店の集約化・大型化」(方法は様々)
などの動きが書店界隈に生じており、このような結果が出たと考えれば道理は通る。
経産省の資料を基に中長期的な流れを追う
「出版物販売額の実態」とは別のソースとして、経済産業省の商業動態統計を用い、同様の総書店店舗数と売り場面積の動向を確認すると、書店数の減少がここ数年(グラフでは2004年度から)の間のみではなく、1990年初頭から起きていたことが分かる。また店舗当たりの売り場面積の拡大は、商業動態統計のデータが取得可能な1972年以降継続しての動きであり、加速中であることも把握できる。
2014年の店舗数・売り場面積の減少度合いは異様な動きに見えるが、現時点では速報値のみの公開なので確認はとれないものの、書店の少なからずが販売スタイルを多様化し、「書籍・雑誌小売業(古本を除く)」に該当しなくなったものと推測される。実際、「CDレンタル店舗数をグラフ化してみる」でも「CDやDVDのレンタル以外のサービスでは、ここ最近、書籍・コミックのレンタル・販売の兼業が増加傾向にある」と解説しているが、CDレンタルショップが書店にすり寄るだけでなく、書店がCDレンタルショップにすり寄り書店扱いを受けなくなった事例も多分に考えられる。とはいえ、経済産業省・商業統計調査の仕切り分けの限りでは、書店がここまで減少したことに変わりはない。
インターネット通販の普及は、一般小売業として書店に大きなプレッシャーを与えている。しかし、それはあくまでも書店業界・周辺業界の動きを加速化させただけ(あるいはそう見えているだけ)で、流れそのものは前々から起きていたことになる。そしてその動きは今後も継続することは間違いない。
他方、最近では地域社会への密着性をさらに強固なものとするため、大手コンビニの一部が、これまでの方針から転じ、書籍への重点施策を打ち出す姿勢を示している。書店数の減少は、印刷物を調達する場における、新しい時代への後押しの原動力となるのかもしれない。
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※一部グラフで最新年度以外の数字が表記されていませんが、これは資料提供側の指示によるものです。何卒ご理解ください
(C)日販 営業推進室 店舗サービスグループ「出版物販売額の実態2015」