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浸透進むオンラインの基本無料ビジネスモデル、対価の支払いをしても良いと考える20代はどれだけいるのか

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 無料で使える事に慣れた20代はどこまで支払いに応じるか

ゲームをはじめとしたオンライン上のコンテンツのビジネスモデルは多種多様だが、基本利用は無料で広告収入などでサポートし、プラスアルファ機能を用いる場合には有料・課金制を取るスタイルが多い。ブラウザ上で遊ぶ、あるいはアプリで提供されるゲームは、今では多くがその様式を採用している。また昨今ではパッケージ版のゲームでも、追加シナリオや特殊アイテムの類をDLC(ダウンロードコンテンツ)として有料販売するものも増えている。それでは基本無料で使えるコンテンツに対し、若年層はどれほど対価の支払いをしても良いと考えているのだろうか。SMBCコンシューマーファイナンスが2015年12月に発表した調査結果「20代の金銭感覚についての意識調査2015」を基に、その実情を見ていくことにする。

若年層、今件調査では20代の人達は、基本は無料で使えるコンテンツへの対価の支払いに、どの程度の抵抗感、同意感を覚えているのだろうか。4つのパターンを例示し、その度合いを確認した結果が次のグラフ。

↑ 「基本無料」で使えるコンテンツへ、対価の支払いをしたいと思うか(2015年)
↑ 「基本無料」で使えるコンテンツへ、対価の支払いをしたいと思うか(2015年)

「ゲームやアプリをもっと楽しめるようにする追加購入」、例えば追加シナリオの導入や装備の拡張などが好例、に関しては、4割が肯定的。もっとも積極肯定派は5%ほどで、残りはケースバイケース。男女別では男性の方が好意的。それだけゲームの内容そのものへののめり込み度、熱中度が高いということか。

一方、「コミュニケーションを彩るコンテンツの追加購入」、例えばLINEのスタンプや、多人数同時参加型ネットワークゲームにおける自キャラの服装の特別版、に関しては4割近く。ただし積極派は「もっと楽しめる」云々と比べてやや少なめ。また男女別では消極派が多分に上乗せされているが、女性の方が好意的な人が多い結果が出ている。

コンテンツの利用そのものに影響は直接無いものの、中長期的には大きな影響が生じるであろう、創り手側への支援的な寄付、例えばサイト運営者や動画製作者への投げ銭やおひねり、チップ、カンパ、ギフトなどは、3割近くが好意的。こちらは女性よりも男性の方が積極姿勢を見せている。

動画系サービスでよく見られる、広告表示を無くすための料金添付・追加購入に関しては肯定派は2割足らず。男性が積極派も含め女性より高めの値が出ているものの、2割を超えた程度であり、他の項目と比べても取り入れる姿勢を示している人は少数派に留まっている。

動きとしては20代女性はコミュニケーションのため、男性はゲームそのものの快適性、ゲーム内の立場での優位性のために対価を支払ってもよい、と考える傾向があるようだ。また、男女ともに自分の利用の上で直接影響がある場合はより積極的に対価を支払う動きを示すが、創作側支援といったリターンがすぐに見えるわけではないものには、いくぶん尻込みをしてしまう。

なおこれらはあくまでも一般論、総論であり、各項目で具体的に対価支払い行為を実行するか否かは「得られるサービスと支払う金額との価値判断、コストパフォーマンス」「支払い方法の簡便さ」「サービスの安定性・信頼性」など多数の要因が作用する。また「基本無料で使える」との前提が省略されているものの、キックスタートなどのクラウドファンディングを用いたコンテンツ系の事業への出費も、考え方としては似たようなものであり、参考にできる値でもある。

「積極的にしたい」の回答率が大よそ5%足らずなのがやや気になるところだが、コンテンツへの対価を極力避けたい人が多数派を占めるのには違いないものの、一方で支払いを毛嫌いする人ばかりではないのも事実。むしろ支払いのためのハードルをいかに下げていくか、それこそ言葉通り投げ銭やおひねり、チップ感覚で出来るようにするか、仕組み側の整備の問題でもあるのだろう。

ちなみに同様の調査項目における昨年との比較を確認したのが次のグラフ。

↑ 「基本無料」で使えるコンテンツへ、対価の支払いをしたいと思うか(支払いに前向き派)
↑ 「基本無料」で使えるコンテンツへ、対価の支払いをしたいと思うか(支払いに前向き派)

広告費表示の項目は2015年からのもので2014年分は無し。「ゲームやアプリを楽しむための追加購入」「コミュニケーションの付加価値のための追加購入」は実質的に変化無しだが、「クリエイター支援の寄付」が小さからぬ減少を示しているのが気になる。やはり具体的に即効性の効果が見えにくい対象への対価支払いは敬遠されるのだろうか。あるいは他項目との組み合わせによる工夫も必要かもしれない。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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