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新成人の7割強は「お金の余裕が無いから車を持てない」

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ いつも道路を埋め尽くす自動車達。若年層が距離を置くその理由は

「若者の(自動)車」離れなる言葉が関係業界を中心に語られている。若年層自身はどのような感想を車に抱いているのか。先日成人式を迎えた新成人に尋ねた結果を、ソニー損害保険が2016年1月に発表した調査「2016年 新成人のカーライフ意識調査」(2015年11月21日から30日にかけて2016年の新成人男女に対しインターネット経由で実施。有効回答数は1000件。男女比は1対1)の結果から確認していく。

昨今の「若者の車離れ」と呼ばれている状況に対し、若者自身の代表的な立場となる新成人にいくつかの質問を実施。それぞれに「とてもあてはまる」「ややあてはまる」「どちらとも言えない」「あまりあてはまらない」「全くあてはまらない」の5つの選択肢から自分の心境にもっとも近いものを選んでもらい、そのうち前者2つ、つまり肯定派の回答数をまとめた結果が次のグラフ。例えば『「若者の車離れ」とは自分のこと』の項目では全体で41.2%なので、41.2%は「とてもあてはまる」「ややあてはまる」のいずれかと答えている。掲載されている数字以外はすべて否定派では無く、「どちらとも言えない」も多分に含まれている事に注意を要する。

↑ 「若者の車離れ」と呼ばれる状況についての意識(2016年新成人対象)(「当てはまる」派率)
↑ 「若者の車離れ」と呼ばれる状況についての意識(2016年新成人対象)(「当てはまる」派率)

新成人の限りでは「若者の車離れ」を自認している人は4割強。属性別では都市部の回答率が高く、車の必要性の度合いが自覚に影響しているものと考えられる。一方「車に興味がある」人は4割強から5割近くだが、男性の方がやや高めの値を示している。自動車への必然性が高い立場にあることを考えれば、興味を示すのも当然といえる。都市部は地方と比べて「若者の車離れ」を自認する人が多い一方で、「車に興味がある」人もいくぶん多く、複雑な心境下にあることをうかがわせる。

「車に乗る必要性を感じない」人は3割近く。こちらも誤差の範囲ともいえるが、都市部の回答率が高め。公共交通機関が発達し、各種施設も居住地などの間近にある場合が多い都市部では、車の必要性は低いと考えれば道理は通る。

注目すべきは「車所有の経済的余裕がない」。こちらはほぼ7割の回答率。購入時の初期投資コスト、各種維持費、そして車検代と定期的に多額の出費を求められるため、自動車の所有には相応の経済的裏付けが求められる。その裏付け(に自信)が無い人が、新成人の7割にも達している実態は、自動車関係者は大いに認識しておくべき。

一方、車そのものの魅力に関する話だが、「所有はカッコイイ」「メーカーに若者向けの車を作ってほしい」との話は4割台に留まっている。カッコよさは都市部ではあまり認識されていないこと、男性はメーカーに若年層向けの車を他属性と比べれば強く求めていないなど、興味深い動きも確認できよう。

自動車所有関連で常に言及される、経済的余裕に関する視点においては、実のところは(少なくとも今調査項目の始まった2011年以降では)大きな変化は無い。

↑ 車所有の経済的余裕が無いと思う割合(当てはまる派合計)(各年新成人対象)
↑ 車所有の経済的余裕が無いと思う割合(当てはまる派合計)(各年新成人対象)

少なくともこの数年では、経済的視点からの「若年層の自動車離れ」の実情に変わりはなさそうだ。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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