スマホでパソコン離れが進んでも「自宅に無いと不便だな」との考えも増加中な米国事情
日本同様にスマホの普及でパソコン離れが進む傾向のある米国。しかし同時に「自宅にパソコンが無いと不便」と考える人も増加している。その実情を、同国の民間調査会社Pew Research Centerが2015年12月に発表した調査結果「Home Broadband 2015」から確認していく。
米国では自宅内のブロードバンド環境(≒パソコンによるインターネット接続環境)の普及率が少しばかりではあるが減り、それを補うどころかインターネット普及率全体を底上げする形で、スマートフォンのみによるインターネット利用者が増加している。直近の2015年では手持ちの環境としてのインターネット接続環境が、スマートフォンのみの人は13%に達している。
それでは自宅にブロードバンド環境が無い≒パソコンによるインターネットアクセスができないことに、不便を覚えていないのだろうか。いくつかの具体例を挙げて調査対象母集団全体に、その心境を尋ねた結果が次のグラフ。
就職活動や各種技術習得の際に、パソコンが無いと不便だと感じる人は7割超え。強く感じる人だけでも半数を超える。政府が提供する各種サービスの利用や情報取得、生活の質の向上が得られるかもしれない情報の取得でもほぼ同率。健康に係わる情報ではやや値は落ちるがそれでも6割強。通常のニュースや情報の取得でも6割強、強い度合いの不便さも1/3超えの人が感じている。「自宅にパソコンによるブロードバンド環境が無くても、特に不便さは感じない」との意見は2割から3割程度しか同意者が居ない。
昨今では米国でも、パソコン経由の利用者だけでは無くスマートフォン向けも用意されるサービスは増えているが、それでも便宜性では多くの場合、パソコン向けの方が上となる。インターネットで提供されるサービスが増えるに連れ、スマートフォンで代替できる場合があっても、自宅のブロードバンド環境の非整備による不便さを覚える人は増加する。この2年間で「パソコンが無いと不便だ」と強く感じる人は、各ケースにおいて大きな増加を示している。
単にインターネットによる提供サービスが増えただけでなく、スマートフォンで利用したが操作性や画面表示能力、処理スピードなどの観点で、パソコンと比べた上での使い勝手の悪さを実体験し、「使えなくは無いが、パソコンの方が一層使いやすそう」との認識を示した人も、多分に「不便さを強く感じる人」に加わったのだろう。
「自宅にパソコンなし、スマホだけのネット環境」の人は特に若年層で増加中だが、その若年層では「自宅にパソコンを用いたブロードバンド環境が無いと不便だ」と強く感じる人の割合は全体平均よりも高い値を示している、つまりより強い不満を覚えている。
スマートフォンの利用に慣れてパソコンの利用をするまでには至らず、「不便だけどその不便さは、わざわざパソコンを利用するまでのものでは無く、スマートフォンで我慢できる」人もいるが、多分に「インターネットにアクセスする廉価な手法としてスマートフォンを利用しているが、やはりパソコンの方が便利。だがコスト高で手が出せない」人がおり、その人たちの不満が増加している。その実情がこのような数字に結果として表れている。
無論スマートフォンにはスマートフォンなりの長所があることに変わりはないが、出来ないこと、困難なことがあるのも事実。そしてインターネットの便宜性を知ってしまった以上、より便利なものにあこがれを抱くのも、人間の本質によるもの。中途半端な空腹感への充足は、余計にお腹が減ってしまうのと同じ。今後も「スマホのみ」の人の増加と共に、この不便さを感じる人、不満を覚える人は増えることだろう。
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