いつごろ観ているのか、小中高校生のテレビ視聴事情
若者のテレビ離れが語られはじめて久しいが、それでも子供にとってテレビはもっとも身近な友達で、コミュニケーションのネタを安価に提供してくれる身近な存在に違いない。その視聴動向を、NHK放送文化研究所が2016年2月から3月にかけて発表した2015年国民生活時間調査の報告書などを元に確認していく。
次に示すのは、小学生・中学生・高校生における、平日のテレビ視聴行為者率の動向。「行為者」とは指定された行動を実際にした人のこと、「行為者率」は指定された時間に該当行動を15分以上した人が、属性対象人数に対しどれほどいたのか、その割合。例えば該当属性の人数が500人で、特定時間帯のテレビ行為者率が10%ならば、その時間帯には500×10%=50人がテレビを観ていたと回答したことになる。
またテレビ視聴の行為はテレビ器材(据え置き型テレビだけでなく、ワンセグによる視聴も含む。録画視聴や購入・レンタルソフトの視聴は除く)を用い、放送されている番組を観ること、実質的に回答者が「テレビを観ている」と自認できる行動を意味する。
なお縦軸は次に示す日曜のグラフと区分を統一してある。やや上が大きめに開いているのはそれが原因。
昼夜を問わず一番テレビをよく観ているのは小学生。特に朝方、朝食時の視聴動向は中高生と比べて約2倍の多さを示している。また下校時間も中高生より早いこともあり、夕方の行為者率上昇も小学生が一番早く、次いで中学生、高校生の順となっている。
夜間のピーク時間は小中学生でほぼ同じ、食事時あるいはその直後。小学生の方がテレビを観ている人は多いが、就寝時間が早いため、行為者率が下がるタイミングも一番先となる。他方、中学生はしばらく視聴を続けるようで、22時ぐらいまでは横ばい、その後に失速していく。
高校生は上昇タイミングが一番遅いが、食事時よりはむしろ食事をし終えた後の方が行為者率は高くなる。ピークは22時。食事も終わり、翌日の準備なども終えた後の、プライベートタイムにゆっくりとテレビを楽しんでいる感はある。他方高校生は午前ゼロ時の時点でも5%、20人に1人はなおテレビを視聴し続けており、夜更かしをしてテレビを楽しんでいる人が一定数いることがうかがえる。
日曜は平日とは大きく傾向が異なる。朝食のみに跳ね上がることは無く、遅めの朝食を摂った後はそのままテレビ視聴継続の時間帯に移行する。中学生は午前中ほぼ観通しで午後にやや減り、高校生は元々テレビ視聴者は少なめ。そして小学生は午前10時頃まで大きく上昇し、その後は昼までやや下がる。いわゆる「ニチアサ」の番組などを視聴しているものと考えられる。
夕食にかけていずれの属性も行為者率は上昇するが、高校生はやや大人しめな増加に留まり、しばらく横ばい。インターネットへのアクセスをしている人が多分にいるものと考えられる。中学生は夕食時までが高めで、その後はやや減り、就寝時の22時ぐらいになると低下する。
小学生は食事時以降も上昇を続け、20時半にはピークとなる45%を超える高値を示す。ほぼ20人に9人がテレビを観ている計算になる。ただし翌日は学校であることに加え、元々就寝時間が早いこともあり、行為者率が下がるのも早い。
昨今ではテレビ視聴のスタイルとして、好きな番組を録画しておき時間の空いた時に再生して観るケースも少なからずあるため、テレビ番組の視聴の観点ではもう少し上乗せがなされることになる。とはいえ、他の行動様式(睡眠や勉強)の動向と合わせ見るに、今回のテレビ行為者率の動きが、ほぼテレビ番組全体の視聴の傾向と一致すると見て良いだろう。
テレビ番組は今なお学校修学世代には欠かせない存在に違いない。他方、少しずつ距離をおきつつあるのもまた事実。その動きが進むにつれ、テレビ視聴のスタイルにはどのような変化が生じるだろうか。
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