高齢者の住宅内における事故の実情を探る
若年より多い高齢者の住宅内事故
住宅内の階段の昇り降りや部屋のちょっとした段差のある場所の行き来。若年層には何気ない行為でも、高齢者には大きな事故の危険性が。身体の衰えで日常生活の事故リスクが高まる高齢者、その実情を内閣府が2016年5月付で最新版(2016年版)を発表した「高齢社会白書」など各種公的機関の公開値から探る。
他国同様日本でも、高齢により虚弱化した際に、自宅をリフォーム(改装)して住み続けたいと考える人は多い。
要は「自宅に住み続けたいが、そのままでは体が弱った自分にはリスクが大きすぎる」との認識。無論リフォームの概念そのものが日本にも(高齢化と共に)浸透しはじめたのも一因。そして高齢者は体力などの問題から外出をひかえるようになるのも原因の一つだが、高齢者による事故は、その7割強ほどが住宅内との結果が出ている。若年層と比べると、6%ポイントほどの違いがある。
特にレジャー施設などと想定される「海・山・川等自然環境」「公共施設」、外出時には足を運ぶことが必要不可欠となる「一般道路」の値が高齢者は低く、住宅における値に積み増しされている。つまり外出機会・割合そのものが高齢者の方が低い次第。
住宅内事故の場所やきっかけ
もっとも事故発生事例が多い家庭内(住宅=自宅)。その家庭内における事故の「発生場所」「事故時のきっかけ」を記したのが次のグラフ。若年層は台所での調理、高齢者は居室や階段などで歩行していた時の転倒・転落事故が多いのが目に留まる。
発生場所では階段のリスクの高さはそれほど大きな違いは無い。若年層は台所での事故が断トツで多く、次いで居室となっている。若年層は本格的な自炊をする機会が多い表れでもある。高齢者はトップが居室、ついで階段、そしてようやく台所となる。若者にとっては何気ない移動にも難儀を覚え、トラブルの原因となるようすがうかがえる。あるいは居室から出る機会があまりないとの解釈もできる。
その状況を明確化できるのが「事故時のきっかけ」。高齢層では階段の昇降時と思われる転落によるものが約3割とトップ(廊下や居間では「転落」は不可能)。そしてごく普通の歩行時における転倒が2割強で続き、若年層ではトップの調理時における行動「刺す・切る」「さわる・接触する」(対象は調理で熱せられたものだろう)を抜いている。単なる移動ですら、高齢者、特に虚弱化した人には高いハードルであり、事故に結びつきやすいことが分かる。それゆえ高齢者は今までの、若い時の習慣のままでは安全な生活ができなくなる心配があるからこそ、リフォームをして生活しやすいようにし、自宅に住み続けたいと考える。
他にも回答を良く見ると、「トイレ」「廊下」「玄関」のような、若年層から見れば事故の要因があまり想定できないような場所で、若年層の値を超えた高齢者の事故が確認できる。今件は高齢者住宅のリフォームなどによる配慮が必要なことに加え、(若年層にとっての)常識が通用しなくなることを十分理解した上で、高齢者には対応すべきであることを再確認させてくれる結果でもある。
さらに付け加えると、高齢者の事故は家庭内で発生したものでも、重篤(じゅうとく)化リスクは高い。同じような事故でも、若者にはほんのわずかな打撲に過ぎないが、高齢者には骨折などの大怪我に至る場合もある(同じダメージでも回復度合いは年齢で大いに異なる)。家庭内事故では、中等症(3週間未満の入院を必要とするケガや病気)の事例が若年層の2倍近い割合で発生している。
高齢者は運動能力や反射神経だけでなく、身体そのものが弱っている。当然、過負荷はもろい。本人自身が注意するのはもちろん、周辺の人も十分に配慮を払ってほしいものである。
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