先進諸国における携帯電話普及率の推移の実態
今や多くの人にとって日常生活には欠かせない存在となった携帯電話。先進諸国におけるその普及率のこれまでの推移と現状を、国際機関である国際電気通信連合(ITU: International Telecommunication Union)の調査結果をもとに確認していく。
「先進(諸)国」との言葉には色々な定義、見方がある。そこで今回は明確な基準として「G7対象国」を用い、その各国を対象とする。ロシアを加えてG8でも良いが、ロシアの携帯電話普及率推移は、むしろ新興国のそれに近い。よって同国動向は別の機会に譲る。
まずは現時点で公開されている最新値、2015年における携帯電話普及率。この携帯電話には従来型携帯電話(フィーチャーフォン)以外にスマートフォンなども含む。また、単純に「契約者数÷人口」で普及率を算出していることに注意。後述するが100%を超える値を示す国もある。
イタリアの151.3%をはじめ、複数国が100%を超えている。これは「契約数÷人口」から算出しているのに加え、「プリペイドの扱いやSIMカード(契約者情報を記録したICカード)の互換性への対応が各国で異なること」を起因とする。要は一人が複数枚のSIMカードを「契約」し、電話をかける相手によってカードを切り替え、少しでも安い料金で利用しようとする「生活の知恵」的な使い方による。例えば1人が3枚のSIMカードを使い分けているとすれば、契約数は3、人数は1人なので、普及率は300%と算出される。
なお後述する広範囲のグラフで明確化されているが、ドイツは2009年から2010年にかけて大きく普及率が減退し、それ以降も横ばいのままに転じている。これについてITU側では2010年以降は普及率の計算の際に用いる契約数に関して、非活性化されているSIMカードの契約数は除外したためとしている。ドイツ国内の携帯電話事情に大きな変化が生じたわけではない。
これを公開値として確認ができる値、2000年以降の動きについてグラフ化したのが次の図。
グラフのスタート時点、つまり2000年の時点ですでに、少なくとも2割強、イタリアやイギリスではすでに8割近い普及率を示している。上昇傾向は各国でさほど大きな違いは無く、先行する形を見せているイタリア・ドイツ・イギリスでは2007年から2008年で早くも頭打ち、上昇率の鈍化を示している。SIMカードの使われ方でやや違いを見せるが、この3国では携帯電話はほぼ飽和したようにも見える(ただしドイツの停滞動向に関しては上記説明の要因も理由の一つ)。特にイギリスでは2009年以降ほぼ横ばいを維持している(こちらは特に特記事項は無く、計測方法の変更による横ばい化ではない)。
一方、フランス・日本などは、引き続き上昇傾向を維持している。この2国は他国と比べてやや大きめな上昇率が2011年から2012年にかけて確認できるが、これはスマートフォンの飛躍によるところが大きい。さらに若年層への普及加速化、そしてシニア層へ携帯電話が浸透し始めたのも一因だろう。イタリアのようなSIMカードの多用スタイルはほとんど無いため、同国のような高い値を示すことは考えにくいが、上昇はまだしばらく続くものと考えられる。
日本やアメリカなどでは、どの程度の値が天井値となるのか。そしてその域に達した場合、携帯電話を中心に据えた社会情勢と人々のライフスタイルはいかなる変化を見せるのか。すでに消費性向に大きな変化をもたらしていることから、注目が集まる話には違いない。この数年の動向を注意深く見守りたいところだ。
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