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世界各国の再生可能エネルギーによる発電量を探る

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 山間部でも良く見かけるようになった太陽光パネル

米国ダントツ、続いて中国

容易に再生が可能な太陽光や風力などのエネルギーをまとめて再生可能エネルギーと呼んでいる。大部分は発電に用いられるが、世界各国ではどの程度の利用が行われているのだろうか。その実情を国際石油資本BP社が毎年発行・公開しているエネルギー関連の白書「Statistical Review of World Energy」から確認していく。

今白書では最新の2015年分だけでなく1965年以降における、各再生可能エネルギー発電所による発電・消費量推移(基本的に電力は蓄電が難しいため、発電量は消費量と同じになる。最大発電能力とは別であることに注意)を、エネルギーとしての石油換算で算出し、計上している。今回は最新の公開内容において計上値(石油換算100万トンを1.0)が1.0以上のものについて具体的にグラフに反映している。なお「再生可能エネルギー」とは風力発電、地熱発電、太陽光発電、バイオマス発電、廃棄物発電などを指す。水力発電は別途計上されており、今件には含まれていない。

さてまずは、最新データの2015年における上位国、そして全世界の再生可能エネルギー発電・消費全量に占めるシェアのグラフを形成する。エネルギー関連では常に上位についているアメリカ合衆国が、今件でもトップ。シェアにして2割近くを占めている。

↑ 再生可能エネルギー発電所発電による電力消費量(2015年)(100万トン(石油換算))(1.0以上、国名判別分のみ)
↑ 再生可能エネルギー発電所発電による電力消費量(2015年)(100万トン(石油換算))(1.0以上、国名判別分のみ)
↑ 再生可能エネルギー発電所発電による電力消費量(2015年)(全世界量比)
↑ 再生可能エネルギー発電所発電による電力消費量(2015年)(全世界量比)

アメリカ合衆国の71.7(×100万トン石油換算)は、同国の原発発電量189.9の4割近くに相当する。内訳としては風力発電の割合が大きく、約6割を占める(43.6×100万トン石油換算)。

アメリカ合衆国に続くのは中国。これは後述するが、同国での再生可能エネルギーの加速度的な伸びによるところが大きい。もっとも同国ではそれ以外のエネルギー生成量(、そして当然ながら、あるいはそれらの原因としてエネルギー消費量)も急増しているので、特に珍しいものではない。

第3位はドイツ、そしてイギリスが続く。ドイツが上位についているのは、太陽光発電の国策的な電力買取によるところが大きい。もっともこの国策も国家財政と健全なエネルギーバランスの維持の上ではプラスをもたらさないとの認識が強まり(例えば「国の買い取り制度」も結局は国民の負担が増えるだけ)、大幅な軌道修正を行っているため、今後もこの順位を維持できるかは不確か。

経年変化をたどる

これを2015年の上位国などから抽出する形で、2001年からの(つまり今世紀の)推移を眺めたのが次のグラフ。

↑ 再生可能エネルギー発電による電力消費量(2001~2015年)(100万トン(石油換算))
↑ 再生可能エネルギー発電による電力消費量(2001~2015年)(100万トン(石油換算))

アメリカ合衆国では国策としてエネルギー創出に対する関心が高く、各方面の再生可能エネルギーに対する研究も盛んにおこなわれている。絶対量はともかく、この成長ぶりが、同国のエネルギーに対する熱意を表している。

他方ドイツやスペインの伸びは直上で示したように、主に太陽光発電エネルギーの固定買取制度によるもの。しかし加速する財政的負担に、技術進歩によるコストダウン・安定性の増大が追い付かず、国の財務状態を悪化させることとなり、制度そのものが行き詰っている。今後において、これまでの伸び率が維持できる可能性は低い。実際、スペインは横ばいから失速方向にシフトしている。

インドや中国も、ここ数年間で高い伸び率を示している。特に中国は大きな上昇カーブを描いており、2011年にはドイツを抜いて世界第二位に躍り出た。これは両国の経済発展に伴い、エネルギーの必要性が急増したことによるもの。再生可能エネルギーに限らず、他のこれまでの記事にある通り、他の主要エネルギーもまた、続々と生産・消費量を積み増している次第ではある。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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