肥える男性、やせる女性…長期的な「肥満者」「やせの者」の割合変化
メタボの指摘を受ける中年男性の増加、やせ過ぎとの懸念がある若年女性たち。その話は実態としてどれほど事実を貫いているのか、それとも単なる印象でしかないのか。その実質を厚生労働省の定点観察的調査「国民健康・栄養調査」の結果から確認していく。
「国民健康・栄養調査」では肥満者及びやせの者の定義に関して、指標値の一つBMIを用いている。これは肥満度を表す一つの指針で、Body Mass Indexの略称。計算式は簡単で「体重÷身長÷身長」と表せる。BMI値が測定出来た人を肥満(BMI>=25.0)・普通(18.5<=BMI<25.0)・やせの者(BMI<18.5)に分類する次第。
現時点で1980年から2014年分までの年次詳細データが取得可能なため、この値を元に「肥満者」「やせの者」の比率動向を年齢階層別(20歳以上)に確認していく。まずは男性。
中長期的には男性はどの世代でも肥満者の比率が増えている。つまりふとましい傾向が強くなっている。詳しく見ると30代から60代まではほぼ同じペースで、20代はやや緩やかに、そして70代以上は今世紀に入ってから上昇率が大きくなっている。ただし70代以上は寿命が延びるに連れて、より高齢層の比率が高まっているため、それも一因と考えられる(高齢層属性のより高齢化)。
他方やせの者の比率では大きな変化は無し。数字の上では60代から70代以上で減少の動きがあるが、70代以上に関しては肥満者同様に「より高齢の者」の比率の増加が一因だろう。しかし60代も減少している以上、高齢者におけるやせの者の割合が多少だが減っていると見て問題はなさそうだ。
続いて女性。
肥満者に関して30代以下は大きな動きなし(2015年の30代における大きな減少はイレギュラーの可能性が高い)。20代で最近上昇する気配も見せているが、この動きが確定的なものかはもう少し様子を見る必要がある。他方40代から60代では20代の上昇とほぼ同じタイミングで減少の動きを示している。
他方やせの者の比率は20代では前世紀に一段上昇する形で増加した後は横ばい、30代から60代までは今世紀に入った前後辺りから増加の動きが生じている。女性のスリム化が進んでいる、一部で話題に登る過度なダイエット周りの話を想起させる流れではある。
健康的な状態、やせ型か肥満型かは単にBMIの大小だけで決まるわけではない。今件動向はあくまでも指標の一つの変化でしかないとの認識が望ましい。他方、長期的な流れとして、男性は肥満傾向、女性はやせ型にシフトしていると解釈できるのもまた事実。エネルギー摂取量は食生活・摂取栄養素の多様化と共に男女とも漸減していることと合わせて考えると、興味深い話ではある。
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