「男らしさ・女らしさは必要」同意は8割以上・結婚や家族に関する考え方への肯定度合い
自らの経験則も左右する伝統への肯定感
社会的通年、倫理、道徳観、伝統的な考え方は、個々の地域や国、民族の長い歴史の間につちわれてきた、経験則による知恵、ルールのようなもの。それらの考え方への肯定度合いはどれほどなのだろうか。国立社会保障・人口問題研究所が2016年9月に発表した、日本国の結婚や夫婦の出生力の動向などを長期的に調査・計量する「出生動向基本調査」の最新版「第15回出生動向基本調査」(※)の公開値から確認していく。
次に示すのは今調査対象母集団のうち初婚同士の夫婦のうち女性、および未婚の男女それぞれに、家族や結婚に関する伝統的な考え方を提示し、それについて賛意を有するか反対意見を持つかを尋ねた結果。厳密には「まったく賛成」「どちらかといえば賛成」「どちらかといえば反対」「まったく反対」の4選択肢を提示。そのうち、伝統的な考えに該当する意見サイドの回答率を足したもの(回答時にはいずれにも合致しない「不詳」もある)。
例えば「生涯独身は良くない(賛成)」で未婚男性が64.7%と出ているが、これは「生涯独身はよくない」とする設問で、伝統的な考え方としては賛成となるので、賛成派の意見を足した結果が64.7%となる次第。逆に「婚前交渉はかまわない(反対)」は、「婚前交渉はかまわない」との設問では、伝統的な考えでは良くないとするものであるから、「反対」が伝統的な考えによる意見であるとし、反対派の意見を足した値の11.0%が計上されている。
未婚男女・既婚女性で伝統的な考えに対するスタンスに大きな違いは無い。ただし細かい点を見ると、「産むなら20代のうち」では既婚女性が高く、「結婚に(自分の個性や生き方などの)犠牲は当然」とする意見は未婚男性が高いなど、それぞれの伝統的考えに対する、立ち位置からの思惑の違いが見えてきて興味深い。つくづく、既婚男性の意見も見たかった感はある。
個々の項目全体としては、男らしさ・女らしさが必要である、子供を産むなら20代のうちとする意見が大よそ8割でもっとも同意者が多い。次いで一生独身は良くない、同棲をするなら結婚すべきだ、子供は持つべきだ、母親(子供が小さいうち)は家にいるべきだ、離婚は避けるべきだ、結婚せずに子供を持つべきではないなどの意見が6割から7割で多数派。結婚に犠牲は当然が半々、夫は仕事で妻は家にいるべきだとする意見は少数派となっている。
婚前交渉(結婚前の男女間の性行為)、自己目標(人生において結婚相手や家族とは別の、自分だけの目標を持つ)の所有に関しては伝統的な考え方としては否定されるものではあるが、これに賛同する人は1割程度。多くの人は婚前交渉はかまわない、家族や配偶者とは別の、自分だけの目標を持っても良いと認識している。
「伝統的な考え方」への同意意見の変化
今調査項目では未婚男女・既婚女性それぞれに関し、1992年分から経年変化の調査結果が公開されている。そこで未婚男女に関してその変移を見ていく(既婚女性は対象比較となりうる既婚男性の値が存在しないので省略する)。
なお空欄の年数は回答値がゼロなのではなく、その年では設問そのものが存在しなかったことを表す。具体的な数字は直近年のもの。その他グラフの見方は上記と同じである。
まず男性。伝統的な考え方を支持するとの意見が増えているのは「生涯独身は良くない」「同棲なら結婚」「結婚に犠牲は当然」。逆に伝統離れをしているのは「夫は仕事、妻は家」「母親は(子供が幼いときは)家にいるべき」。伝統離れに関しては社会実情の変化を受けてのものと考えられる。また婚前交渉を容認する動きは昨日今日の話ではなく、少なくとも1990年代前半からであったことも確認できる。
女性も男性と上下の動きに大きな違いは無い。強いて言えば「夫は仕事、妻は家」に関して男性よりも早期に、伝統には賛成しかねるとの動きが出ていたことぐらい。
伝統的な考え方を論じる時にはそれ自身の法的な、社会全体に結果として与える影響から鑑みた良し悪しと共に、現状ではどれほどの人が賛意を持っているのかも、論議の上では重要な要素となるに違いない。
※「第15回出生動向基本調査」の調査要綱は次の通り
基本的に5年おきに実施されている調査で、直近値となる2015年実施分は2015年6月に、同年6月1日時点の事実について調査したもの。調査対象は独身者調査で18歳以上50歳未満の独身者、夫婦調査は妻の年齢が50歳未満の夫婦(回答者は妻)。調査対象地域は2015年国民生活基礎調査の調査地区1106地区(2010年国勢調査区から層化無作為抽出)の中から選ばれた900地区。調査方法は配票自計、密封回収方式。配布数・回収数は独身者調査では1万1442票/9674票(記入状況の悪い920票は除外のため有効票数は8754票。
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