「自国最優先」は1/3、他国への積極的なアプローチは6割…日本国民が望む対外姿勢と経済状態の推移
移動機関が多様化し、物品の行き来も成され、情報の伝達が瞬時に実行される昨今では、他国の情勢は自国と無関係ではいられない。日本は基本的な施策として、他国にどのような姿勢を見せるべきと国民の視点では考えられているのだろうか。アメリカ合衆国の民間調査会社PewResearchCenterが2016年10月に、定点観測による国際調査から日本に関わる項目を抽出分析した報告書「Japanese Back Global Engagement Despite Concern About Domestic Economy」(※)からその実情を確認していく。
大雑把な仕切り分けではあるが「自国優先、他国はそれぞれの国の努力に任せる」「他国の諸問題への手助けをすべき」の二択を用意し、どちらに回答者の考えが近いかを答えてもらった結果が次のグラフ。特定した国、情勢、項目を設定しておらず、あくまでも概念的なものとしての回答となる。
調査期間で大きな違いは無いが、自国優先派が3割強、他国手助け派が6割前後となっている。2011年春に他国手助け派が大きく伸びたのは、多分に東日本大震災の影響が生じているものと考えられる。
一方、経済的な観点に限り、「国際経済に関与すること」に賛成か反対か、それぞれの特徴的な意見を合わせ、答えてもらったところ、賛成派が6割近く、反対派が3割強との結果となった。ほぼ対外姿勢全般と同じ結果が出ているのは興味深い。
国際経済への積極的関与は新市場の開拓、そして日本自身の成長にも寄与するので賛成とする意見、市場開拓により雇用が奪われたり賃金水準が下げられるので反対とする意見。どちらも国際化により発生しうる事案であり、どちらか一方のみというものでもない(為替レートが多分に影響するが)。メリットとデメリットを合わせ、どちらがより自分の目でウェイトを有するかの結論として、賛成派が6割ということなのだろう。
経済に関わる話と連動するが、内閣府の世論調査でも見かける、「日本の経済状況の現状」に関する回答者の意識の経年変化も今報告書では取得できるので、合わせてグラフ化しておく。こちらは今世紀初頭から多数回の調査が実施されており、景況感の移り変わりが把握できるものとなっている。
マイナス思考的なところが強いのが第一印象だが、この動きに関しては内閣府の調査でも同様のもので、今件報告書でも「歴史的な流れとして日本では元々低い値が出ることに注意すべき」との言及がされている。
他方、2007年春までの好景気、2008年春以降の金融危機と2011年の震災、それ以降の猛烈な円高による不況感、2012年冬の総選挙以降の政策転換に伴う景況感の回復が、非常に分かりやすい形でグラフとなって表れているのが興味深い。ある意味、景気動向を推し量る良い指標としても良いだろう。
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※Japanese Back Global Engagement Despite Concern About Domestic Economy
「日本国内において」2016年4月26日から5月29日にかけて都道府県別に仕切り分けされた上での固定電話番号7割、携帯事業会社の構成比率を元にした携帯電話番号3割に関して、それぞれRDD方式で取得した番号に対し日本語による通話を行い、応答した人が18歳以上であればインタビューを実施している。サンプル数は1000件。年齢、性別、教育、居住地域の人口密集度合いによるウェイトバックが実施されている。