日本人であるか否かを定義づけるのに必要な要素は何か
各国の国民、例えば日本ならば日本人であるか否かの定義は多様な見方がある。法的な解釈以外に、真の自国民ならば満たしておきべき条件の見解は誰もが持っているはず。その実情を、米国の民間調査会社PewResearchCenterが2016年10月に発表した、定点観測による国際調査から日本に関わる項目を抽出分析した報告書「Japanese Back Global Engagement Despite Concern About Domestic Economy」(※)から、他国との比較も合わせ確認する。
次に示すのは単純な国籍の話では無く、真の日本人として認識をするためには、どのような要素を満たしているか否かについて、提示した要件が重要であるか否かを尋ねた結果。今項目は日本人に対して行われていることに注意。日本人のアイデンティティーのウェイトを認識できる。
日本で生まれたことが重要だとする人は77%、中でも大いに重要だとの意見は半数に届いている。重要性は無いとする意見は22%。日本語が話せるか否か(どの程度の精通度かは今件では問われていない)は重要派が92%となり、今件設問ではもっとも多くの人が重要視している。日本の慣習と伝統を共有しているとの意見は90%だが、とても重要とする意見は43%に留まり、日本生まれとする回答と比べると少ないのが印象的。
項目は今件3つのみだが、その中では日本語が話せるか否かが、日本人としての必要要件としてもっとも重要視されていることが確認できる。生まれや伝統・慣習の共有は言語ほどではないが、重要な要素との認識は強い。ただし生まれに関しては重要でないとの意見も2割強居るのは覚えおくべき動きではある。
今件はここ数年で多数の移民(難民)が中東から押し寄せたヨーロッパ事情に合わせて設定された感がある。同調査のEU関連のレポートが同じ時期に発表されており、同一項目の結果も取得ができる。次に示すのはEUの調査対象国となるフランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、オランダ、スウェーデン、イギリス、イタリア、ポーランド、スペインの中央値を算出したもの。個々の国の回答値は、それぞれの国の国民であるか否かへの問いであることに注意。EU所属民として、ではない。
生まれに関しては重要性を認識しない人の意見がやや多いものの、それ以外は大よそ日本とさほど変わらない回答結果が出ている。真の自国民であるか否かの判断要素は、日本の判断基準は日本特有のものでは無いということだ。
なおアメリカ合衆国の同様の設問の回答は、「とても重要」の回答値のみが取得できる。それによると、生まれについては32%、言語は70%、習慣や伝統は45%が、大いに重要だと考えている。これもまた、生まれ以外は日本やEUと大きな違いは無いと見ても良いだろう。
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※Japanese Back Global Engagement Despite Concern About Domestic Economy
日本国内において2016年4月26日から5月29日にかけて都道府県別に仕切り分けされた上での固定電話番号7割、携帯事業会社の構成比率を元にした携帯電話番号3割に関して、日本語による通話を行い、応答した人が18歳以上であればインタビューを実施した結果によるもの。サンプル数は1000件。年齢、性別、教育、居住地域の人口密集度合いによるウェイトバックが実施されている。