日本の対米中韓印国連感情の現状と推移を探る
国の政策とは別に、国民の対外感情は歴史的背景や多様な事象で大きくゆらぎ、変化を見せる。日本におけるその実情を、米国の民間調査会社PewResearchCenterが2016年10月に発表した、定点観測による国際調査から日本に関わる項目を抽出分析した報告書「Japanese Back Global Engagement Despite Concern About Domestic Economy」(※)をもとに確認していく。
今報告書では日本在住の日本人による対中国、対韓国、対インド、対国連の感情度の推移が記されている。対象によっては一部の調査年に欠けがあるが、直近分となる2016年春の分はすべての対象への調査結果を計上しているので、まずはそれを見ていく。
対米感情は極めて良好、対インドがそれに続き、対国連も良好派が険悪派を超える値。対韓、対中は険悪派の方が多く、特に対中では良好派が1割強しかおらず、強い険悪派が4割超えている。また、対印・対国連は「分からない・回答拒否」が2割ほどいて、印象そのものが薄い、あまり興味関心が無い対象の人も多いことがうかがえる。
これを各国など別に、経年変化で見たのが次のグラフ。国によっては未調査の年もあるが、他国と合わせるためにあえてその年の部分は空白にしている。さらに、良好派の値を単純に足して、その推移を折れ線グラフとして生成する。
対米感情は元々良好。オバマ前大統領が選ばれた選挙戦の時の日本たたき的傾向や世界的金融危機の影響もあり一時期好感度が下がる場面もあったがすぐに持ち直し、震災時の米軍の活躍を受けて大きな上昇を示している。一方で中国は経済成長と共に対外強硬路線に転じた2005年あたりから印象は悪化し始め、震災時には持ち直しも見せたものの、その後のさらなる具体的な経済面・軍事面など多方面での強圧姿勢を受け、大きな低迷の中にある。
韓国も中国ほどの低迷ぶりでは無いが傾向は類似しており、ここ十年ほどの間に大きな好感度の低下が見て取れる。インドや国連は上記の通り、好き嫌いの判断をするに足るだけの情報を持たない人も多く、弱い印象における良好認識の人が多数派を占めており、特段の変化は無い。
国連はともかく、対米・対中・対韓・対印の好感度の現状や推移は、内閣府が定期的に調査発表している印象度の定点観測の傾向と推移しており、内容が的外れではないことが分かる。大きなうねりを見せる世界情勢の中で、今後どのような動きを見せるのか、注目したいところではある。
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※Japanese Back Global Engagement Despite Concern About Domestic Economy
日本国内において2016年4月26日から5月29日にかけて都道府県別に仕切り分けされた上での固定電話番号7割、携帯事業会社の構成比率を元にした携帯電話番号3割に関して、日本語による通話を行い、応答した人が18歳以上であればインタビューを実施した結果によるもの。サンプル数は1000件。年齢、性別、教育、居住地域の人口密集度合いによるウェイトバックが実施されている。