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トップは「保有者の身体機能チェック強化」…高齢者の交通事故防止のための施策認識

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 本人は大丈夫と自信を持っていても何かと気になる高齢者の運転(写真:アフロ)

高齢者の増加に伴い、高齢者による交通事故が以前よりも注目される昨今。高齢者による運転事故防止には何が重要と社会に認識されているのか、その実情を内閣府が2017年1月末に発表した「交通安全に関する世論調査」(※)の結果から確認していく。

今調査の該当項目では事前に「75歳以上の運転者は、免許人口10万人当たりの死亡事故が平成27年には全年齢層の平均の約2倍でした。また、身体機能が衰えているのに運転を続ける方も多いといわれます」との説明をした上で、対策として現在成されている、あるいは検討中である施策を選択肢として挙げ、「高齢運転者の事故を防ぐために、あなたが重要だと思うことをこの中からいくつでもあげてください」と尋ねている。その結果が次のグラフ。

↑ 高齢運転者の事故を防ぐために重要だと思うこと(2016年11月、複数回答)
↑ 高齢運転者の事故を防ぐために重要だと思うこと(2016年11月、複数回答)

もっとも多い同意を得たのは「運転免許保有高齢者の身体機能のチェックの強化」で70.7%。すでに相応の対応は示され(高齢者講習など)、さらにたとえば改正道交法によって75歳以上の免許取得者を対象に認知機能の検査基準が強化されることが決まっている(2017年3月から施行)。改正道交法の施行に伴いどこまでの効果実績が挙げられるかは現時点では不明だが、多くの人が「自動車を運転するのに相応な技術を持っている」との証である免許に関して、その所有者が資格を有しているか否かの身体的チェックをより強化すべきであると感じている。

次いで多い同意率を示したのは「認知症の早期診断などのための体制整備」で59.2%。本質的にはトップの選択肢と変わるところは無い。他方それに続く「移動手段確保に向けた地域公共交通網の整備」「自主返納のメリットの拡充や広報の強化」は、そもそも論としてなぜ高齢者が自動車などの運転を続ける必要があるのか、その必要性の観点から鑑みた解決法の選択肢であり、半数以上の同意が得られている。

昨今将来可能性の高い技術として語られることが多い、むしろ高齢者の運転にこそ必要だとの認識もある自動運転も含めた、「事故を未然に防止する運転支援技術の開発・普及」は32.6%。方法論としては興味深い施策ではあるが、支持率はさほど高くない。

これを男女別に見たのが次のグラフ。

↑ 高齢運転者の事故を防ぐために重要だと思うこと(2016年11月、複数回答)
↑ 高齢運転者の事故を防ぐために重要だと思うこと(2016年11月、複数回答)

自動運転と深い関係があり、技術に関心を寄せる度合いから「事故を未然に防止する運転支援技術の開発・普及」は男性の方が高い値を示しているが、それ以外はほぼ同率か、女性の方が高い値を計上している。元々女性の方が長生きをするものの、今調査の限りでは高齢運転者は男性の方が多い。高齢者の運転のリスクを自認しているか否かが、今項目の結果にも表れていると見ると納得もいく。

その納得感は男女別に分けた上での年齢階層別でも確認ができる。

↑ 高齢運転者の事故を防ぐために重要だと思うこと(2016年11月、複数回答)(男性・年齢階層別)
↑ 高齢運転者の事故を防ぐために重要だと思うこと(2016年11月、複数回答)(男性・年齢階層別)
↑ 高齢運転者の事故を防ぐために重要だと思うこと(2016年11月、複数回答)(女性・年齢階層別)
↑ 高齢運転者の事故を防ぐために重要だと思うこと(2016年11月、複数回答)(女性・年齢階層別)

男女別に年齢階層の動向を見ると、高齢者の境目となる50代から60代で、男性よりも高い値を示す項目が多い。自らの身体能力の衰えを実感し、リスクの底上げを認識しているのだろう。同じ認識は男性もしているはずなのだが、それが数字となって表れないのは、男女間のとらえ方、判断の仕方の違いがあるのかもしれない。

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※交通安全に関する世論調査

2016年11月17日から27日にかけて、層化2段無作為抽出法によって選ばれた全国18歳以上の日本国籍を持つ人に対し、調査員による個別面接聴取方式にて行われたもので、有効回答数は1815人。男女比は856対959、世代構成比は18-19歳25人・20代119人・30代224人・40代283人・50代281人・60代397人・70歳以上486人。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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