日本の学歴・年齢階層別失業率の最新情報
最新の学歴・年齢階層別の完全失業率
世間一般には高学歴ほど就職は容易で、また失業もしにくいとのイメージがある。そのイメージが確かなものかを確認するデータの一つが、総務省統計局が毎年発表している労働力調査。その最新年次値となる2016年分が先日発表された。今回はその値などを元に、実状を確認していく。
まず「完全失業率」の定義を確認しておく。これは「完全失業者÷労働力人口×100(%)」で算出する。総務省統計局では「仕事についていない」「仕事があればすぐにつくことができる」「仕事を探す活動をしていた」のすべてに当てはまる人を「完全失業者」として認定している。例えば仕事についておらず仕事があればすぐに働くことができるが、雇用に関するニュースを見聞きして「今就職活動をしても徒労に終わるだろう」とあきらめ、就職活動をしていなければ、完全失業者としてはカウントされない。
学歴区分では大学と大学院を分けるべきとの意見もあるが、公開値が万人単位であるのに加え、大学院の失業者数はゼロか1万人との事例が多く、単独では異常値が計算結果として算出されてしまうため、過去の公開値の仕切り分けに習い、大学と大学院をまとめている。
完全失業率に関する全体的な構造「高学歴ほど低失業率」「若年層ほど高失業率」に変わりは無い。ただし高齢層の失業率では学歴の差がほとんど出てない、むしろ高学歴の方が失業率が高いことが確認できる。これは多分に「定年退職・早期退職後の再就職をこれまでの職場、新規職場を問わずに果たし、その際には学歴はさほど影響しない」からに他ならない。実際、この世代における就業者の多くは非正規雇用となっている。
さらには「元々高学歴≒高年収であり、定年退職以外で失業・早期退職して再就職を望む場合、できる限り以前に近い待遇を望む傾向が強く、条件がかなう職に就きがたい状況が生じている」こともあり、高学歴がかえって仇となっている(当人が自ら足かせをしている)ことの表れとも考えられる。再就職のハードルをあえて自ら上げ、結果としてそのハードルを飛び越えられない状態と表現できよう。
大卒・大学院卒の15~24歳における、つまり大学卒業後間もない新社会人の失業率は5.3%であるのも目に留まる。たとえ高学歴であったとしても、若年層の就職難の状況にさほど違いは無いようだ。ただし上記で解説の通り、この年齢階層の高学歴、とりわけ「大学・大学院」の完全失業者は元々数が少ないのに加え、万人単位までの公開のため、値が多分にぶれやすい(統計局でもかつて年齢階層別の失業率を公開していた時には、万単位で計算をしていた)。実数としては2016年分は大学と大学院を合わせて5万人。前年の2015年は6万人であり、失業者数に限れば前年よりは良い状況となっている。
失業率は改善の方向に
昨年発表された2015年分の値を元に算出した失業率と、今回算出した2016年分の算出値の差異を計算した結果が次のグラフ。これは2015年から2016年の1年間における失業率の変化を表す。数がプラスに大きく振れるほど失業率が増加、つまり雇用状況が悪化していることを意味する。
やや振れ幅にはばらつきがあるが、マイナス値が多い、つまり雇用の改善が見られるのが分かる。15~24歳層でプラス、つまり悪化が見られた理由は上記の通り、統計上の事情によるもの。一方、高齢層の一部で失業率の悪化が見られ、懸案事項として留意すべき動きではある。ただしこれは大幅に該当層の労働人口が増加していることから、労働市場のバランスのゆがみによるところが多分に考えられる。上記で触れている通り、再就職の際にも望みが高く、雇用側も雇い入れが難しいケースも多分に考えられよう。
なお今件データでは「完全失業者」の定義に従い、就職をあきらめて大学院入りした人、就職を一時留保し就職活動をしていない人などは考慮されていないことに留意する必要がある。
今回分となる2016年におけるポイントは「全体的な雇用状況の改善」「一部高齢層における状況悪化の懸念」の2点にまとめられる。高齢層の雇用状況の改善は多分に非正規社員としての再雇用であるが、それでもなおカバーしきれない状況に違いない。
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