日本の主食は米かパンか…米類・パン類・麺類の世帯単位での購入性向をさぐる
米、パン、麺をどこまで「主食」と見るか
関連技術やインフラの進歩、販売店舗の浸透により、食生活は大きな変化の中にある。最近では「主食は米からパンに変わったのでは」との話もあるほど。そこで米・パン・麺といった主食の移り変わりを、総務省統計局の家計調査の公開データを元に、世帯単位の支出額から、少し幅広い仕切り分け、つまり内食だけで無く中食や外食も合わせて見ていくことにする。
今回対象とする世帯種類は「総世帯」。つまり単身世帯と二人以上世帯を合わせた全部の世帯。「世帯購入頻度」は世帯単位での購入頻度。例えば構成員の誰かが特定期間に2回雑誌を購入すれば、その世帯の該当期間における購入頻度は200%になる。非購入世帯も含めての計算であることに注意。
米類・パン類・麺類それぞれについて、内食以外に中食と外食の分を加えるわけだが、加える項目は取得可能な値のうち、次のものに限定した。
●米
おにぎり・その他、すし(弁当)、すし(外食)
●パン
調理パン、ハンバーガー
●めん類
日本そば・うどん(外食)、中華そば(外食)、他のめん類外食
この他にも例えば「弁当」項目が中食では該当しそう。コンビニやスーパーのお弁当コーナー、お弁当屋のメニューを見ると、多くはご飯が主食扱い。しかしサンドイッチやパスタ、グラタンなどのようなものも少なからずある。このような混合した実状下で米項目に加えたのでは、正確さに欠けてしまう。そこで今回は外すことにした。
まずは直近2016年分のみについて。こちらは支出金額と購入頻度双方を、各細部項目別にグラフ化する。
「米」の購入頻度が低いのは、数キロの袋単位で調達する購入スタイルであるため(一食分ずつ買うわけでは無い)。「パン」の購入頻度がかなり高めだが、これは食パン以外にバターロールやコッペパン、フランスパン、さらにはアップルパンやあんぱん、コロネ、カレーパン、揚げパン、ピザパンなどまで含むため。一方「調理パン」は焼きそばパン、ホットドック、ハンバーガー(ハンバーガーショップ経由のものは「ハンバーガー(外食)」となる)などが該当する。「麺類」は「麺類」そのもの以外はすべて外食系。
購入頻度だけを見ると、パン類が圧倒的に多いように見える。ところが支出金額まで目を通すと、「米類」の金額の多さが目に留まる。特にすし系は単価が高いので、当然かもしれない。
米類は減少傾向だが、なおパンを凌駕中
それでは経年変移による、各主食系別にまとめた値の推移は…との話に進むわけだが、購入頻度については計算を行わない。「米」や(食パンを多分に含む)「パン」は、他の食品と購入・利用スタイルが異なるため(米は数週間、数か月単位でまとめ買い。パンも食パンの類は数日分をまとめて買うことになる)、そのまま全部を足しても意味のない値しか出てこないからだ。そこで支出金額のみ、各系統別に合計し、2002年から2016年までの推移をグラフ化したのが次の図。
厳密には上記で説明したように、今回の試算では盛り込まなかった「弁当」もご飯物が多いことから、さらに「米類」は上乗せされることになる。このグラフを見る限り、今なおお米、つまり「ご飯類」は主食の玉座を明け渡していないことがはっきりと分かる。
同時に「ご飯類」とのまとめでも、支出金額が漸次減少中であること、そして「パン類」が少しずつ伸びており、あるいは10年単位の流れの中で両者の金額が逆転する可能性は十分にあることが予想できる。他方麺類は横ばいのまま……だが、この数年に限ればパン類同様に上昇の気配を見せているのが興味深い。
また直近2016年では米類が有意に上昇へと転じている。これは昨今の中食スタイルの普及浸透に伴い、「おにぎり・その他」の購入性向が増していることが大きな要因となっている。次のグラフは個々の単独項目の動きを見ているので、頻度推移も有効な精査材料となる。
「調理パン」は早期から購入性向の増加が確認できるが、金額は小さめ。他方で金額的に大きな「パン」が伸び悩んでいるため、「パン類」全体の金額はゆるやかな伸びにとどまっているのが実情。
震災を機に、食生活を中心とした日常生活全般のスタイルに少しずつ、そして確かな変化の兆しを端々で見受けることができる。特にスーパーやコンビニて調理系の惣菜の進歩は著しく、中食文化の急速な浸透と共に、食生活に小さからぬ影響を及ぼし始めている。今件「幅広い範囲で見た主食動向」で、今後どのような動きを示すのか。今後もしっかりと見定めていきたい。
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