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どの地域がいちばん牛豚鶏肉を食べているのだろうか

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 主要な精肉をいちばんたくさん食べているのはどこの地域か(写真:アフロ)

餃子の消費量日本一をめぐり各地域が激しいつばぜり合いをしていることはよく知られている。これは総務省の家計調査の年次調査結果を基に、金額ベースでの高低を比較したもの。そこで似たような手法で、しかも支出金額ではなく分量から、主要な精肉の消費動向を見ていくことにしよう。つまり「どの地域がいちばん多くの量の牛肉、豚肉、鶏肉を食べているか」を公的データから確認する次第である。

今回精査では「二人以上の世帯」を対象とする。本来なら総世帯(全部の世帯)の値を用いることで世情全体の動向を推し量るのが筋ではあるが、「家計調査」の年次データでは総世帯と単身世帯において分量の調査が行われておらず、値の抽出は不可能となっているため。

まずは大まかな状況確認のため、牛肉・豚肉・鶏肉の大よその相場を東京都区部の値で示しておく。

↑ 東京都区部での主要肉価格(二人以上世帯の調達価格)(100グラムあたり/円、2016年、家計調査年報・家計支出編)
↑ 東京都区部での主要肉価格(二人以上世帯の調達価格)(100グラムあたり/円、2016年、家計調査年報・家計支出編)

部位や市場、産地、販売地域など多様な条件で変動はあるが、大よそ種類毎にこの程度の価格差が出ているとの認識ができる。やはり牛肉は高めに違いない。豚肉の2倍以上である。

続いて「金額編」同様に「牛肉」「豚肉」「鶏肉」それぞれの、年間購入(消費)量上位10位の都道府県庁所在地をグラフ化し、状況を確認する。世帯単位での年間消費量を示したもので、例えば牛肉消費量トップの奈良県奈良市なら、二人以上世帯限定だが2016年の1年間で1世帯あたり平均9.7キロを消費したことになる。

↑ 都道府県庁所在市別・二人以上世帯における年間牛肉消費量トップ10(グラム、2016年、家計調査年報・家計支出編)
↑ 都道府県庁所在市別・二人以上世帯における年間牛肉消費量トップ10(グラム、2016年、家計調査年報・家計支出編)
↑ 都道府県庁所在市別・二人以上世帯における年間豚肉消費量トップ10(グラム、2016年、家計調査年報・家計支出編)
↑ 都道府県庁所在市別・二人以上世帯における年間豚肉消費量トップ10(グラム、2016年、家計調査年報・家計支出編)
↑ 都道府県庁所在市別・二人以上世帯における年間鶏肉消費量トップ10(グラム、2016年、家計調査年報・家計支出編)
↑ 都道府県庁所在市別・二人以上世帯における年間鶏肉消費量トップ10(グラム、2016年、家計調査年報・家計支出編)

牛肉は奈良県奈良市、豚肉は福島県福島市、鶏肉は佐賀県佐賀市が一番たくさんの量を食している計算になる。個々の精肉の比較なら、「西日本は牛肉」「東日本は豚肉」「九州は鶏肉」との構図が見て取れる。また各グラフの横軸の区分を見れば分かるが、分量的には全般として「豚肉」>「鶏肉」>「牛肉」であることがわかる。重量当たりの単価は鶏肉が一番低いが、鶏肉の消費量が一番多いわけでは無い。

もちろん「地域によっては豚肉以上に牛肉が(重量の観点で)食べられているところもあるかもしれない」との疑問がわいてくる。しかし今データの限りではそれは皆無だった(のでグラフの類は省略する)。残るは「豚肉」と「鶏肉」のどちらが多く食べられているか。つまり主要精肉3種類のうち、「豚肉」ではなく「鶏肉」が分量面でもっとも多く食べられている地域はあるのか否かが気になる。

そこで実際に「豚肉」と「鶏肉」の購入消費量を比較し、「鶏肉が豚肉より多く食されている」(=主要3種精肉では量の上で鶏肉を一番多く食べている)地域を抽出し(該当する都道府県庁がある地域)、日本地図に反映させたのが次の図。図版の作成には【白地図ぬりぬり】を利用している。

↑ 都道府県別・「豚肉」「鶏肉」の年間消費(購入)分量の高低(2016年)
↑ 都道府県別・「豚肉」「鶏肉」の年間消費(購入)分量の高低(2016年)

大体九州から中国西部に集中していることが分かる。この地域は唐揚げ文化が活性化しており、結果として消費分量が多いのも納得できる。例えば「鶏肉」の最多消費量を誇る佐賀県佐賀市と東京都区部の消費量を比較したのが次のグラフ。

↑ 主要三精肉年間消費量(グラム、2016年、家計調査年報・家計支出編)
↑ 主要三精肉年間消費量(グラム、2016年、家計調査年報・家計支出編)

単純計算で佐賀は東京の1.49倍。佐賀の人がいかに鶏肉を愛しているかが、改めて理解できる次第ではある。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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