一眼レフはフルサイズがいい?(その1)
増えてきたフルサイズ機
最近、カメラメーカー各社から発表されたデジタル一眼レフカメラの新製品に、フルサイズセンサーを搭載したモデルが多く見られます。
カメラ好きのユーザーも、「ついにフルサイズセンサー搭載機が手の届く価格帯に!」と喜んだりしています。
では、なぜフルサイズセンサーがいいといわれるのでしょう。
なぜ、人々はフルサイズ機が欲しいのでしょうか。
フルサイズとは、フィルムの規格である35mmフィルム(パトローネと呼ばれる円筒形の金属ケースに入った、もっとも一般的に使われてきたフィルムです)と同じサイズのセンサーのことです。若干の誤差はありますが、おおむね24mm×36mmというサイズになっています。
フルサイズじゃないデジタル一眼レフカメラの多くはAPS-Cサイズという、フルサイズよりは小さなセンサーを採用しています。
では、なぜAPS-Cサイズではなくてフルサイズがいいのでしょう。
同じ画素数ならフルサイズのほうが画素サイズが大きい
フルサイズセンサーとAPS-Cサイズの大きさを比べると、フルサイズセンサーのほうがAPS-Cよりも2.4倍から2.6倍程度、面積が大きいことになります。
分かりやすくおおざっぱなイメージでお話ししますが、
センサーの画素数というのは、例えば1000万画素であれば、センサーが1000万分割されていて、その一つ一つに光を感じる画素が配置されているわけです。
つまり、フルサイズセンサーの1000万画素とAPS-Cセンサーの1000万画素では、フルサイズセンサーのほうが2倍以上も大きなセンサーを1000万分割することができ、結果的により大きな画素を配置できるという理屈になります。
画素が大きければ、微弱な光も感じやすいし、光の強弱も判断しやすく、高感度性能も上げやすいという利点があります。
もちろん、画素の大きさだけでそれらのすべてが決まるわけではありませんが、高画質な写真を記録する上で有利であることは間違いありません。
このため、デジタル一眼レフカメラの黎明期には、プロ向けの高級モデルには画質的に有利なフルサイズセンサーを採用するようになったのです。(その後、アマチュアが気軽に買うことはできないけど、カテゴリー的にはハイアマチュアモデルと呼ばれるカメラの一部にもフルサイズ機が登場しますが)
この「プロ機、高級機はフルサイズ」という各社の製品ラインアップが、一般のアマチュアユーザーにも「いつかはフルサイズ」と思わせる要因の一つになったのかもしれません。
レンズの焦点距離はフルサイズが自然でいい
デジタル一眼レフカメラの多くは、従来のフィルム一眼レフカメラと同じレンズマウントを採用しているため、フィルムカメラで使用していたレンズをそのまま装着して使うことができます。
フルサイズセンサーのカメラだと、まさにフィルムカメラで使っていたときと同じ画角で撮影することができます。
標準レンズと呼ばれることの多い50mmという焦点距離のレンズは、フルサイズのデジタル一眼レフカメラなら50mmの標準レンズとして使うことができます。ところが、APS-Cサイズのカメラではこれがちょっと望遠レンズになってしまうのです。センサーが小さいため、50mmレンズの中央部だけが写真に写るような形でトリミングされてしまうからです。このため、フルサイズの50mmレンズは、APS-Cサイズのカメラで使うと「75mm相当」と表示されます。(何mm相当という数値が大きくなるほど、望遠レンズになります)
そういった意味で、フィルム時代から一眼レフカメラを使ってきた人にとっては、50mmレンズが50mmとして使えるフルサイズが使いやすいのです。
ただ、デジタルになってから本格的に写真をはじめた人にとってはあまり関係ない話かもしれません。
APS-Cサイズ専用設計のレンズも多く発売されていますし、ズームを使えば厳密なレンズ焦点距離も気にならないからです。
ですから、昔ながらの人はフルサイズが使いやすいし、新しくはじめた人にとっては使い勝手は関係ないということが言えると思います。
画質面では有利なフルサイズセンサーですが、APS-Cサイズのカメラもずいぶんと高画質になっています。普通に撮影を楽しむだけなら、どちらも十分に高画質なのです。
理由もなく、「なんとなくフルサイズセンサーがいい」と思うのはあまり意味のないことかもしれません。
話が長くなってしまいましたので、今回はこの辺で。
次回はフルサイズセンサーとAPS-Cサイズの表現の違いについてお話しをしたいと思います。
フルサイズセンサーのカメラで50mmレンズを使って撮影した写真。
50mmは標準レンズと言われるように、見たままに近い距離感で撮影ができます。
ちなみに、APS-Cセンサーのカメラでも35mmレンズを使えばこれと同じような距離感の写真が撮れます。
そのあたりのお話しはまた次回に。