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柴田に倒された男の村田デビュー戦予想

本郷陽一『RONSPO』編集長

村田諒太のデビュー戦相手である柴田明雄に倒された男がいる。

現在、日本スーパーウエルター級の上位にランキングされている細川貴之(六島ジム)だ。執拗に前に出ることでチャンスをつかむ無骨なファイトスタイル。最近では、関西の深夜番組でメイクアップアーティストの彼女から逆プロポーズされる恋物語として取り上げられるなど、そのゴリラみたいな風貌とは、対象的に愛される人柄ゆえ大阪では密かな人気のあるボクサーだ。

彼は、今年1月、後楽園ホールで行われたチャンピオンカーニバルで、柴田の持つ日本スーパーウエルター級タイトルに挑戦した。ラフな接近戦を仕掛けて左目をカットさせるなど見せ場は作ったが、8ラウンドに、右のカウンターと左フックで2度ダウンを奪わて立ち上がったが、最後はレフェリーに止められTKO負けとなった。

細川は、柴田に敗れた後、一度は、引退を考えていたが、5月に再起戦で勝利、現在、再びタイトル奪取を狙ってトレーニングを積んでいる。

実は、細川は10年以上前に南京都ボクシング部OBで、六島ジムのチーフトレーナーだった藤原俊志(現ワールドスポーツボクシングジム)に連れられ、南京都ボクシング部を訪れて、当時、高校2年生だった村田諒太とスパーリングをしたことがあった。細川は、ボクシングを始めてまだ8か月。プロテスト受験直前のアマだったが、重いクラスのパートナーがなかなか見つからないため、村田とスパーリングをしたのである。

「まだ僕は、素人同然だったんですが、高校生の村田に、まったく何もできなかったです。うまいし、パンチあるし、スピードあるし村田がおそらく高校2年か1年ですよ。ボコボコにされました。ほんま強かったです」

村田と拳を交えた経験は、昔の話と言えど、柴田、村田の両方を肌で知る数少ないボクサーの一人の細川に、この試合がどうなるかの対戦予想を聞いてみた。

――村田対柴田の結果はどうなると思う?

「早い回に村田が柴田を倒すでしょう。村田のパンチは半端ないっしょ。凄いパンチ力らしいですね。柴田って意外とパンチが当たるんです。僕の右も当たりました。そして当たったら、ちょっと焦るんですね。それがわかりました。メンタル的に弱い部分があるのかもしれません。アマチュアの大きいグローブでやってきた村田がプロの小さいグローブでやれば、確かに足はあります。打って動くというパターンを守るボクサーです。でも村田を相手にしたら逃げ切れないと思います」

――ほっそんは、柴田攻略はどう考えていたの?

「前に出て、リングの中央からプレッシャーをかけて、ごちゃごちゃな展開に持ち込むのが作戦でした。僕なりにやれたんです。まあ、僕はボクシングが下手だったので、最後は、やられちゃいましたが、村田のプレッシャーは僕とは度合いが違うような気がします」

――結局、倒されたけれど、柴田のパンチ力はあった?

「柴田はパンチがないように思われているようですが、パンチ力はありました。効きました。ストレートが伸びてくる感じでした。でも村田は、その1万倍はパンチ力が上でしょう」

村田、柴田の両選手は、この日の計量で73.0キロのリミットを一発でクリアした。

村田は「試合が楽しみ。ファンの人の期待に答えるのが僕の仕事ですが、それ以上に僕が僕自身に一番期待している。練習してきたこを出す」と短く語り、柴田は「これまでの人生で、こんなに多くの報道陣に囲まれたのは初めてだし、一番大きなイベントとなる。大事なことは勝つこと。みんな柴田はどう負けるかを見たいのだと思うが、おれはこんなもんじゃないというところを見せたい」と、長々と語った。

何人かのボクシング関係者に聞いて回ったが、柴田の勝利を予想する人は、思った以上に少なかった。しかし、柴田が勝つか、村田が勝つかと、話題になるような好カードを提供したこと自体、この村田のデビュー戦は意味のあるものだと思う。

村田は「デビュー戦から……なんかの罰ゲームですか?」と、東洋チャンピオンとの激突を得意のユーモアーあふれる言葉でまとめたが、プレッシャーがないはずはない。

「腹減った。夜はウナギでも食べに行きますわ」

運命のゴングは、25日、20時20分である。

『RONSPO』編集長

サンケイスポーツの記者としてスポーツの現場を歩きアマスポーツ、プロ野球、MLBなどを担当。その後、角川書店でスポーツ雑誌「スポーツ・ヤア!」の編集長を務めた。現在は不定期のスポーツ雑誌&WEBの「論スポ」の編集長、書籍のプロデュース&編集及び、自ら書籍も執筆。著書に「実現の条件―本田圭佑のルーツとは」(東邦出版)、「白球の約束―高校野球監督となった元プロ野球選手―」(角川書店)。

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