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楽天逆襲の条件はマー君の完投勝利!

本郷陽一『RONSPO』編集長

2回が終わったときに掛布雅之さんから電話がかかってきた。

阪神の育成&打撃コーディネイターの就任が決まり、26年ぶりの現場復帰の準備などで、忙しい日々を過ごしている元ミスタータイガースである。

「則本は、ふたまわり、みまわり目でつかまるぞ」

「ボール来ているように見えますけど。なぜですか?」

「若干、ボールが上ずっているんだ」

あの18.44メートルの距離で、斬った張ったの勝負を続けてきた掛布さんならではの慧眼だろう。

5回、その予言通りに、その則本が先につかまってしまう。

その裏、楽天が反撃の狼煙を上げた。無死一塁からバスターエンドラン。逆をつかれた坂本は浮き足立ち、投げてもセーフのタイミングで一塁への送球を試みてしまう。ミスといえばミス。その間、松井は三塁を狙った。ボールは一塁から三塁へ転送されてアウト。松井の仕掛けは失敗に終わったが、どこかでひとつプレーが狂えば三塁を落としていただろう。その積極性は買えるのではないか? イニングの間に、また掛布さんに電話をかけた。

「暴走だな。一死ならば、ありえる走塁だが無死だろう。120パーセントの成功の確信がなければ行ってはいけない場面。1点を追う直後で、まだ5回。大事にいってよかったんだ」

なるほどなるほど。

7回から巨人は、あの防御率1点台の3人にスイッチした。

楽天は、走者を出して苦しめたが、あと1本が出ない。

私は試合が終わると再び掛布さんに電話をした。アスリートジャーナルというWEBサイトのコラム構成のためだ。掛布さんの詳しいシリーズ評論については、ぜひアスリートジャーナルを覗いて欲しいのだが、「これで明日はマー君が完投勝利しなければならなくなった」と掛布さんが言う。

巨人はマシソン、山口、西村という3枚看板が対楽天に通用することを実証した。防御率1点台のブルペンである。楽天は6回までに先制しておかねば勝ち目がないことを強い脅迫観念として刻みこまれてしまった。要注意の4番・村田にも打たれた。「シリーズ男を作るな!」の鉄則も守れず亀井というラッキーボーイも出現させてしまった。

巨人有利の予想でスタートしたシリーズで、巨人は先にらしさを見せ、流れ的にも、次につながる勝ち方をした。まだ1試合しか終わっていないのに、ついつい、果たして楽天に逆襲のチャンスはあるのか?と、考え込んでしまう。

掛布さんは「楽天がシリーズの流れを5分に持ち込むには、明日の第2戦が最重要だろう。1勝1敗にするという結果だけでは物足りないと思う。マー君が、巨人打線を1失点までに抑え完投勝利。楽天の勝利のカタチをハッキリと示すこと。するとチームに『やはりマー君は負けないんだ』という雰囲気と自信が生まれ空気が変わるはず」と言う。

マー君の不敗神話の継続が、楽天逆襲の頼みの綱か。

24勝利無敗の投手が開幕登板を回避したことに納得はいかないが、それだけ大きい責任を負う行動でもある。

オフのメジャー挑戦を見据えて肩を大事にしたのではないかという推測を封じ込め、巨人に向きかけている流れを引き戻すには、確かに掛布さんの言うように、巨人につけいる隙を与えないほどのショックとインパクトを与えるピッチング内容での勝利でなければならないだろう。堂々の完投勝利で、らしさを見せた巨人を逆に楽天らしさを見せて眠らせるのだ。

則本は敗戦投手となったが、巨人相手にもゲームを作れることはわかった。マー君の次回登板予定は第6戦。掛布さんの言うようなカタチで1勝1敗に持ち込めば、再び仙台に戻っての決戦も見えてくるかもしれない。いずれにしろ楽天にとって早くもシリーズの天王山を迎えたわけである。

『RONSPO』編集長

サンケイスポーツの記者としてスポーツの現場を歩きアマスポーツ、プロ野球、MLBなどを担当。その後、角川書店でスポーツ雑誌「スポーツ・ヤア!」の編集長を務めた。現在は不定期のスポーツ雑誌&WEBの「論スポ」の編集長、書籍のプロデュース&編集及び、自ら書籍も執筆。著書に「実現の条件―本田圭佑のルーツとは」(東邦出版)、「白球の約束―高校野球監督となった元プロ野球選手―」(角川書店)。

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