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城彰二氏が指摘する「ザックJの宿題」。

本郷陽一『RONSPO』編集長

ザックジャパンは、オランダ、ベルギーとの欧州2試合で、最高の結果を残しポジティブなイメージを残したまま、いよいよワールドカップイヤーへと突入することになった。ポジティブなイメージは“積み残した宿題”をうやむやにしてしまう危険な空気でもある。アスリートジャーナルの取材で城彰二さんの話を伺う機会があったが、元日本代表戦士もまたザックジャパンが“積み残した宿題”を指摘されていた。詳しくはアスリートジャーナルのコラムを参照して欲しいが、ここに城さんの提言の一部を紹介したいと思う。

――オランダ、ベルギー戦で、ザックジャパンの期待値が高まっていますが、冷静に試合を振り返ると、失点パターンは相変わらずでした。

「カウンターとセットプレーですよね。確かにいくつかの評価すべき収穫を見せてくれたけれど、失点パターンに対する宿題は、そのままなんです。選手というのは、日本がオランダ戦の2点目に見せたような素晴らしい崩しで失点したものに対しては『しょうがない』『相手が上』と引きずらないものなんです。でもカウンターやセットプレーでの失点ではチームメンタルに与えるダメージが強い。『止められたのに』と引きずるんです。それが嫌な空気というものを作ってしまい、気持ちが引き、守備から積極性が失われることにもなりかねないんですよ」

――ベルギー戦で2失点目は、コーナーからのヘッド。ノーマークで打たれました。

「日本はマンツーマンで守っていますよね。高さがないからゾーンでは難しいのはわかります。マークの徹底、確認は当然ですが、ここで重要なのが、密集の中での“ずる賢さ”です。押す、寄せる、体をぶつけるといった反則ギリギリのプレーでプレッシャーをかけなければなりません。それと絶対にマークの受け渡しをしないこと。Jリーグのフェアプレーの精神は、世界に例を見ない、子供たちの範ともなる素晴らしいものですが、世界の舞台に通じる“ずる賢さ”をプラスアルファで身につけることが必要ですよね」

――この宿題を残り少ない時間で、どう解決するか。

「実戦がもう1試合しかありませんから。オランダ、ベルギーの試合を見て、『なぜもっと早くこういうことをやっておかなかったのか、もったいないな』と強く思いました。欧州の強豪チームに結果を残しましたが、とうてい楽観視はできません。私は、ワールドカップでの戦いは厳しいものになるという意見が持っています。課題を残したまま戦えるほど世界は甘くないんです」

『RONSPO』編集長

サンケイスポーツの記者としてスポーツの現場を歩きアマスポーツ、プロ野球、MLBなどを担当。その後、角川書店でスポーツ雑誌「スポーツ・ヤア!」の編集長を務めた。現在は不定期のスポーツ雑誌&WEBの「論スポ」の編集長、書籍のプロデュース&編集及び、自ら書籍も執筆。著書に「実現の条件―本田圭佑のルーツとは」(東邦出版)、「白球の約束―高校野球監督となった元プロ野球選手―」(角川書店)。

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