Yahoo!ニュース

しょう油出荷量 占有率1・5%のたまりしょう油。ニッチ市場での生き残り

池田恵里フードジャーナリスト
たまりしょうゆは、佃煮、おせんべいに使用(写真:アフロ)

日本料理には欠かせない調味料、しょう油、しかし減少の一途

「めんつゆは売れても、しょう油が厳しい・・・」

しょう油の製造量は、1984年120万KLあったのが、2014年には80万KLを割っており、2014年のしょう油メーカー全体数は1330社となっており、年々、30社ほど廃業している。そして大手5社が製造量の半分を占め、その他、中小企業でひしめき合っている。まさに競争の激しい業界なのである。

しょう油情報センターによると、業務用しょう油の出荷量の割合は、増加している一方、家庭用しょうゆ(購入量/消費量で算出)は減少し、麺つゆ、たれの購入金額は増加、94年を境にしょう油より多く、逆転している。

そこで、しょう油情報センターにお電話でお聞きしますと

「94年に大きなエポックがあったわけではないのです。食のとりまく環境がゆるやかに変化していったのです」

減少要因として

・しょう油の業務用としての増加

→しょう油を原料として工場で使用され、 家庭に惣菜といった加工品で提供されるようになり、所謂、中食の台頭である。

・食の欧米化

・高齢化、人口減少

など、これら要因がいくつか合わさっているとのこと。

しかし、食卓において、週4回から5回使用されることから、好まなくなったわけではない。

さてしょう油は、大きく5つに分かれ、濃口、薄口、さいしこみ、白、たまりがある。

しょう油メーカー

「しょう油の出荷量を見ますと、おおよそ濃口約8割、薄口17%で占められ、合わせると97%。残りの3%がさいしこみ、白、たまりとなります。この3つのしょう油(さいしこみ、白、たまり)のほとんどは、中小企業で占められ、年々、減少しております」

しょう油の出荷量の構成比 しょう油センターのデーターを元に2014年グラフ化
しょう油の出荷量の構成比 しょう油センターのデーターを元に2014年グラフ化

2014年のたまりしょう油は、全体のしょう油出荷量の1・5%。年々、しょう油が減少するに伴い、たまりしょう油も減少している。とはいえ、占有率1・5%から1・6%という数字は、この10年間、変化がないのだ。そのうえ、使用される地域は、中部のごく一部のみであり、1・5%という数字を維持しているとも言える。

しょう油メーカー

「しょう油は通常大豆と小麦配合比は5対5ですが、たまりしょう油の場合は、大豆のみ、もしくは大豆、小麦が9対1と圧倒的に大豆が多く、それに伴って大豆の旨味成分が多い分、出来上がったたまりしょう油もうま味があります」

しょう油のうま味は,窒素で測られる

しょう油の旨味は、窒素で計測する。

この図でもわかるように、たまりしょう油のうま味を見ると、豊富である。香りに関しては、濃口しょう油が最も高く、うすくち、さいしこみ、たまり、しろの順番となる.

財団法人日本しょう油技術センター
財団法人日本しょう油技術センター

たまりの差別化、それは脱色、そして減塩たまり

極めてニッチとも言えるたまりしょう油を手掛けているヤマミ醸造の方にお聞きすることに

「わが社は、しょう油業界でも歴史が浅く、約50年なんです。歴史のある大手企業がやっている濃口しょう油には、量、価格面で太刀打ちできません。そこでたまりしょう油に特化することで差別化を図り、脱色たまり、減塩たまりも開発しました」

脱色たまり・・・

以前にも色の薄いしょう油を業務で使用したことがあり、そのことなのかと思って聞くと

「色の濃いたまりしょう油から色素を抜き、琥珀色にまで脱色します。うま味を十分残しつつ、ここまで色目の薄いたまりしょう油は、わが社のみかと思います」

2009年には、脱色しても濃口醤油と同等やそれ以上の旨味成分が残る、窒素成分中のグルタミン酸豊富なたまり醤油の製造技術などが評価され、「愛知ブランド企業」に認定されたとのこと。

これを聞き、是非、見学したいと思い、半田市にある「ヤマミ醸造」へ

たまりしょう油のヤマミ醸造
たまりしょう油のヤマミ醸造

まず蒸した大豆に小麦と種麹をふりかけ、高温多湿のムロで華を咲かす。製麹工程のムロの様子

製麹工程のムロ
製麹工程のムロ

次に桶全体に均一に水分が行き渡るように石積みをしている写真。桶の底から抜いたたまりを、上から汲みかけ、循環させる。これを何度も繰り返すことで発酵、熟成が促される。

石積み
石積み

諸味の温度を緩やかに上げ、山をつくり、緩やかに下げていくことが大切とされる。ここでは仕込みタンク内の温度管理をすることで、寒仕込み製法を再現している。そうすることで年間を通じて安定したたまりしょう油が出来上がるという。

最近のしょう油は、機械でのコントロールも出来るようになり、一般に醸造期間が6カ月で出来上がり、なかには3カ月というところもある。ヤマミ醸造では、熟成期間を長く、ここでは1年かけて出来上がるため、コストがかかると言われる。

工場見学の後、しょう油の味見

左からしろしょう油、濃口しょう油、脱色たまりしょう油、国産大豆たまり、底引きたまり、底引きたまり脱塩8%
左からしろしょう油、濃口しょう油、脱色たまりしょう油、国産大豆たまり、底引きたまり、底引きたまり脱塩8%

並べ試飲したことで、色は勿論のこと、味の違いも歴然とわかる。しょう油を使い分け、ブレンドすることにより、当然、しょう油の量は同じでも味が変わる。

自宅に戻り、お出汁(かつお、昆布)、味醂、そしてたまりしょう油で小松菜の炊きものを作った。かつお・昆布の出汁とたまりしょう油の旨味が合わさり、少ない調味料で美味しく仕上がった。

今、海外で和風ブームから注目されてきているしょう油。2011年の海外での生産量は約20万KLと、1975年の約8千KLにくらべて約25倍にも伸びている。とはいえ、日本からの輸出量は約1万7千KLに過ぎない。今こそ、日本で作られたしょう油を世界に普及させる時期が到来しているように思う。

フードジャーナリスト

神戸女学院大学音楽学部ピアノ科卒、同研究科修了。その後、演奏活動,並びに神戸女学院大学講師として10年間指導。料理コンクールに多数、入選・特選し、それを機に31歳の時、社会人1年生として、フリーで料理界に入る。スタート当初は社会経験がなかったこと、素人だったこともあり、なかなか仕事に繋がらなかった。その後、ようやく大手惣菜チェーン、スーパー、ファミリーレストランなどの商品開発を手掛け、現在、食品業界で各社、顧問契約を交わしている。執筆は、中食・外食専門雑誌の連載など多数。業界を超え、あらゆる角度から、足での情報、現場を知ることに心がけている。フードサービス学会、商品開発・管理学会会員

池田恵里の最近の記事