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20代 女性単身者 年収240万の食生活 「ダイエットに気を使っています」

池田恵里フードジャーナリスト
ある日の夕食、クラムチャウダー、豚の塩炒め、ホウレンソウのお浸し

20代の女性の食実態

若い20代の女性の体形を見ると、足もすらりと長く、顔、あごも小さく、そのスタイルの良さに圧倒し、昭和生まれとは違うように思う。

一方で、20代の女性が一日に摂取するカロリーの低さは、問題視されるほど低い。確かに「国民健康・栄養の現状」によると、20歳から29歳の「低体重 BMI<18.5%」つまり「痩せている」人の割合は、平成24年では21.8%を占めている。これは前年度の21.9%より、若干減少しているものの、過去10年間(平成14年から24年)をみると、20%以上であり、それより下がっていない。そして平成24年度、他の年齢層と比較しても、20代の女性は「痩せている」人が多いのだ。

「国民健康・栄養の現状」 平成24年 厚生労働省国民健康・栄養調査報告書より作成
「国民健康・栄養の現状」 平成24年 厚生労働省国民健康・栄養調査報告書より作成

行き過ぎたダイエットから、栄養の欠如

主たる原因として、若いゆえの「ダイエット」に勤しみ、加減がわからず、痩せすぎになると言われている。

野菜の摂取量についても、厚生労働省が一日350g以上の野菜をとることを推奨している。しかし現状、20代の女性は構成比率を見ると全体の18.4%。他の年齢層と比較しても少ない。

「国民健康・栄養の現状」 平成24年、厚生労働省健康・栄養調査報告より作成
「国民健康・栄養の現状」 平成24年、厚生労働省健康・栄養調査報告より作成

意外ではあったが、20代の男性と比較しても、20代男性で350g以上野菜を摂取しているのが22.9%となっており、女性の18.4%より多い。男性は調理をあまりしない、女性より外食することが多く、その結果、野菜をあまり摂っていないのでは、と思っていたからだ。勿論、野菜さえ摂れたら大丈夫というわけではない。他の栄養成分もある程度摂取が必要であり、何事もバランスが大切である。例えば、20代の女性を見ると、カルシウム、ビタミンK、ビタミンDの摂取量は低い。20代が骨密度のピークとなるなか、いかに骨を備蓄し、極力、減らさないようにするか、若いときが肝心である。これらをきちんと摂取することで、40代以降の健康状態に大きく影響してくる。とはいえ、若い女性に「ちゃんと摂った方がいいよ」と言っても、「まだまだ先の話である」と思っている様子で、なかなかピンと来ないようだ。

今回、年収240万の女性に食日記をお願いし、その後、スカイプでインタビューをお願いした。

20代前半 女性Kさん、関東地域、年収240万 正社員、事務職

Kさん「年収が低いので、食費3万、外食は7000円で抑えようと思っているのですが、予算の3万に近づいてくると、ストレスになります。今のところ何とか抑えられています」

「自炊が好きだ」とも言われる。普段、朝食を摂らないKさんだが、朝食に珍しく登場したレーズントーストには、作り方も載せて「おすすめです」と書かれ、ほほえましい。

Kさんのとある平日
Kさんのとある平日

食日記を見てみると、結構、手の込んだ料理もあり、聞いてみると、「母は料理を作らない人だったので、その反動もあって、自炊し、ちょっとこだわった料理も作ったりしています」とのこと。

飲料について質問すると、幼い頃から水だったことから、普段はお水。ティファールでお湯を沸かし、さゆで飲むこともある。スイーツは常備せず、万が一食べたいときは「自分で作る」とも。ご飯は食べないため、炊く場合は一合しか炊かない。これは出来立てがやっぱり美味しいので、冷凍庫にストックしない。冷蔵庫の調味料について聞くと、和洋中、いずれも揃っており、プラス、オリーブオイル、そしてドレッシングは2種類入っているとのこと。サプリメントは、ダイエットサプリを飲み、食後にヨガの時もある。

さて平日、休日、全体をみてみる。平日の社食を利用する事で、野菜、タンパク質の摂取量は何とかバランスよく摂られるものの、朝食を抜いている事からカロリー摂取量が低いことが気になる。「国民健康・栄養調査」(2013年)によると、女性のうち朝食を摂らないのが最も高いのは、20代(25.4%)で4人に1人。この一人にKさんは該当するのだ。それもあって、Kさんの食事を平日、休日で見ると、摂取カロリーが1000カロリーを切る場合も少なくない。

ダイエット教への警告

他国の人が日本の若い女性の体形を見ると、とても細い印象を受けるという。事実、年々、拒食症は増加しており、現在、2万5000人いるとされ、治療をしていない人を合わせると、水面下ではもっと多く(一説には20万人)が拒食症に陥っているとされる。要因はいろいろあるが、痩せていることへの強い願望、つまり社会的要因も大きい。フランスでは、昨年、「痩せすぎモデル」の雇用禁止法が可決された。そのなかに「BMIが18未満だと雇用してはいけない」とされ、もしも雇用した場合、罰金980万 最大6カ月の禁固刑を言い渡されるという。これはフランスの拒食症が4万人にも達したためと言われ、他国の事情として日本でも済まされない。増え続ける単身者は、どうしても偏りがちな食生活に陥りやすい。その上、若い女性では「ダイエットにこだわりをもつこと」で、偏った状況により陥りやすい。食品に表示されるカロリー表示を見ると、必要とはいえ、知識がないと間違った見方でカロリーを見てしまう。これはカロリーに限ったことではない。単身者の利用頻度の多い、惣菜、つまり中食産業、そして外食産業は、単身者の動向を年齢別に一つ一つ注意し、健康提案する必要があるのかもしれない。

フードジャーナリスト

神戸女学院大学音楽学部ピアノ科卒、同研究科修了。その後、演奏活動,並びに神戸女学院大学講師として10年間指導。料理コンクールに多数、入選・特選し、それを機に31歳の時、社会人1年生として、フリーで料理界に入る。スタート当初は社会経験がなかったこと、素人だったこともあり、なかなか仕事に繋がらなかった。その後、ようやく大手惣菜チェーン、スーパー、ファミリーレストランなどの商品開発を手掛け、現在、食品業界で各社、顧問契約を交わしている。執筆は、中食・外食専門雑誌の連載など多数。業界を超え、あらゆる角度から、足での情報、現場を知ることに心がけている。フードサービス学会、商品開発・管理学会会員

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