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きゃりー&深瀬で注目。ペアルック(カップルコーデ)が、今さら流行する理由。

五百田達成作家・心理カウンセラー

人気カップルがペアルックを披露

去る1月29日、歌手・きゃりーぱみゅぱみゅと、人気バンド「SEKAI NO OWARI」のFukaseが、黒いパーカーに身を包んだ、ペアルック2ショット写真を公開。それがきっかけで、そのパーカーはあっという間に完売。ついさきごろ、ふたたび予約販売を再開したことがニュースとして報じられるなど、変わらぬ注目を集めています。

きゃりー&セカオワ深瀬がペアで着た人気パーカーが再生産開始

いつからおしゃれなものに?

一昔前までは、ペアルックは「バカップル」の象徴ではなかったでしょうか?

子どものころ、ペアルックで街中を歩くカップルを初めて見た時には、本能的に「これはダサくて恥ずかしいもの」という直感にとらわれたものです。周囲の評価も「やれやれ……」という冷ややかなものでした。

しかしどうやらここ数年でペアルックに対する風向きは変わってきている様子。特に今の10代にとってのペアルックは「むしろ何周かしておしゃれ」的な空気を感じます。

コスプレ感覚で楽しむ

SNS上では、仲良しの女の子同士でおそろいや色違いの「双子コーデ」をして街に遊びに出掛けたり、ここぞとばかりに新調したペアルックでディズニーランドではしゃぐカップルの姿を見ない日はありません。

そこへもってきて、冒頭のきゃりー&深瀬カップルのインスタグラムへの投稿。ネット上の反応も「かわいいー」「うらやましい!」と、概ね好意的に受け取られている模様。

冒してはならないタブー(禁忌)のような、まがまがしいオーラを放っていた「ペアルック」は、数十年の時を経て「カップルコーデ」として生まれ変わり、人々の心をとらえています。

ペアルックをする心理

そもそも人はなぜペアルックをしたがるのでしょうか?

昔のペアルックからは、女性が恋人と自分との関係を周りの人に知らしめたいという意思を感じたものです。「この人は私が唾をつけたもの」「私たちは二人だけで完結しています」というあまりにも強いメッセージが周囲を凍りつかせたわけです。それは実に、バブル期の恋愛らしいテンションでした。

しかし、昨今ペアルックをする女性たちに、そういったものものしい空気は感じません。友達同士で始めたペアルックが楽しかった→その結果、彼氏ともやってみた、というぐらいの気持ちでしょう。

男性側も拒否しない

いっぽうの男性側にも変化を感じます。

小さい頃からハロウィンなどのイベントに慣れ親しんできた世代は、ディズニーランドのような非日常的な場であれば、コスプレや仮装の延長でペアルックを受け入れられる心理的土壌ができあがっていたのでしょう。

それは「男たるものこうあるべき」「彼女と公然といちゃいちゃするのは恥ずかしいこと」と教えられ、育てられた世代からは想像できないほどの変化なのかもしれません。

代表ユニフォームに通じる一体感

そもそも、カップルでなくても同じものを身につけることは、様々な心理効果を生み出します。

サークルやチームで同じ洋服を着れば仲間意識が高まりますし、サッカー日本代表の試合を見るときにユニフォームを着ればチームに親近感が湧き、ライブに行く時にバンドTシャツを着れば、「いまこの瞬間に同じものを楽しんでいる」という一体感が生まれます。

これらはカップルにも同様の効果がありますから、楽しいことに貪欲な若い世代が取り入れない手はありません。

ペアリングも

また、学生たちの間では「ペアリング」が流行中。

これまたペアルック同様、一昔前であれば、過剰な「つがい感」を醸し出していたアイテムなわけですが、現代のペアリングはそうではなく、「カップルであれば、まあ、やっておくもの」ぐらいの普通の感覚になっているようです。

無理のない取り入れ方

とはいえ、ペアルックに抵抗のある世代は、まだまだ多いはず(私のように(笑))。

男女で同じものを着るのは恥ずかしい、洋服が「かぶる」なんて最悪……。でも、流行ってるならちょっとやってみたい気もする……。

そんな人たちにオススメなのは、スポーツウェアでのおそろいから始めること。ランニングやトレーニング、アウトドアシーンであれば、さりげなくペアルックを取り入れやすく嫌味になりません。

50代のカップル向け・ペアルックブランド

また、そごう・西武では、1年前から50代カップルに向けた新ブランド「アベックモード」をスタート。アイテムは違うけれど色や素材が似ていたり、同じ柄を別アイテムで取り入れるなど、さりげない「ペアルック」を提案しています。

「共有」「共感」は時代のキーワード

若者の定番行事となったハロウィンも、仮装するだけでは終わらず、その写真をSNSで発信して「いいね!」をつけてもらって初めて完結する行為。このように、「共有」「共感」は時代のキーワードです。

カップルコーデも例外ではなく、コスプレ感覚で楽しい時間をカップルで共有し、デートの一コマをSNSで発信し共感してもらうためのツールというわけです。

ペアルックは排他的、カップルコーデは共感的

排他的なアピールであり、自己表現の意味合いが強かった「ペアルック」に比べて、「カップルコーデ」はむしろ「人に共感してもらう」ためのファッション。

こんなところにも時代の空気を見て取ることができます。

■参考記事

インスタグラムで「のろけ投稿」をするのはなぜ?(Twitterではしないのに)

いつのまにか誘いが減り、結果的にひとりぼっちになってしまう、ほんのささいな会話のクセ。

「気乗りしない……」 相手を傷つけずに誘いを断る方法。【→好印象もゲット】

■参考書籍

「察しない男 説明しない女 男に通じる話し方 女に伝わる話し方」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

作家・心理カウンセラー

著書累計120万部:「超雑談力」「不機嫌な妻 無関心な夫」「察しない男 説明しない女」「不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち」「話し方で損する人 得する人」など。角川書店、博報堂を経て独立。コミュニケーション×心理を出発点に、「男女のコミュニケーション」「生まれ順性格分析」「伝え方とSNS」「恋愛・結婚・ジェンダー」などをテーマに執筆。米国CCE,Inc.認定 GCDFキャリアカウンセラー。

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