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今度こそ!の電子書籍元年、普及への壁を突破するのはスマホとマンガであると言い続けなくていけない理由

いしたにまさきブロガー/ライター/アドバイザー

何度目かの電子書籍元年になった(はずの)年が、2013年であったといっていい1年だったと思います。ヒット作の小説・少し古い本に脚光を浴びせる・マンガ・写真集、そして個人出版など、主にアマゾンkindleのおかげで、今年は電子書籍が大きく動きました。私はご縁があって『Amazon Kindleダイレクト出版 完全ガイド』という本に関わることができました。

電子書籍最大手といっていいアマゾンはキンドルのテレビCMもはじめており、電子書籍端末のCMをテレビの画面で見ているという現実にちょっと驚くものがあります。

そして、私がkindleのすごさをいちばん味わったのは、海外旅行の際でした。行き先はサンフランシスコだったので、フライト時間と空港の滞在時間を合わせると10時間以上普段と違う仕事をしない時間が発生します。今までは、その時間は読書に当てられていたのですが、どの本を持っていくかが最大の問題でした。

今読んでいる本を持っていくのは当然としても、それを読み終わってしまったらどうしようか問題というのが紙の本にはついて回ります。それに、まだ読み始めてない本を持っていく場合は、その本を早く読み終わってしまうかもしれない、もしくはその本がハズレだったらどうしようか問題というのもあります。

そんな問題が、kindleで一変しました。まずは、電子書籍なので、物量を気にせずに何冊も持っていけます。そして、そこにマンガも含まれるというのが、今回ものすごくよかったのです。

みなさんも見に覚えがあるかと思うのですが、話題になっているマンガですでに15巻とか出てしまっていて、いまさら読み始めるには乗り遅れた感もあるし、でもいつか読みたいと思っていたマンガ。マンガも10冊を超えると、さくっと1時間で読み終わるわけにはいきません。その時間が普段の生活の中でなかなか取ることができないので、あとで読もうと思っていたマンガが発生してしまうわけです。でも飛行機のフライト時間を利用すれば、そんなマンガをかなりの数、それも一気に集中して読むことができてしまうわけです。

そもそも、これから旅行に行こうと言うのにマンガを何冊も持っていくなんて、まさに荷物の無駄なので、これまで旅先にマンガを持っていくという発想そのものがありませんでした。でも電子書籍なら海外旅行にですらマンガを持っていくことができる!、この変化は私にとってはとても大きなことでした。

マンガを読むことを前提にすると、やはりカラーのタブレットの方が読みやすいです。その場合、どうしてもバッテリー問題というのがあるわけですが、それも今時の飛行機だと、エコノミーでも座席にUSB端子がついていたりするので、問題ありません。

ボーイング787のシートについているUSB端子
ボーイング787のシートについているUSB端子

こんな感じにマンガが電子書籍普及の起爆剤になることはマンガ大国日本では当たり前のことですし、実は過去に何度かあった「電子書籍元年」でも起きていたことです。でも、今度はホントにちょっと違うのかもしれないのです。

そのサンプルになるかもしれないのが、Yahoo!JAPANーが行ったまさに旬のマンガである「進撃の巨人」で行ったキャンペーンです。12月はじめに実施されたキャンペーンなので、もうネタバレしてもいいでしょう。

突然崩れ落ちたYahoo!JAPANのトップページ
突然崩れ落ちたYahoo!JAPANのトップページ

ふらっといつものようにYahoo!JAPANトップページを見ると、そこから物語よろしくトップページが崩れ巨人が登場して、実際のキャンペーンに画面が自動的に遷移していく。これは見事なキャンペーンでした。それもPC・スマホ・タブレット、どのデバイスでアクセスしても、このキャンペーンは表示されました。

Yahoo!JAPAN「進撃の巨人」キャンペーン
Yahoo!JAPAN「進撃の巨人」キャンペーン

そして、ここに実は今後の電子書籍普及のために崩さなければいけない壁を壊すもう1つのヒントが隠れています。

テレビCMまでやっているアマゾンを批判するわけではないし、実際のアマゾン・キンドルがそういう仕様になって、それもそれを推奨しているにもかかわらず、なぜか大きな勘違いをしていることがあります。

これが要するに意外と大きな壁なんですが、電子書籍は専用端末じゃないと読めないと勘違いしている人がけっこうな数いるんです。同時に今時手持ちのスマホで読めない電子書籍なんてほとんどないという事実もその人は知りません。

どっかにアンケート結果とか、なにかのデータがあるわけではないのですが、今年1年「あー、でもそれって端末買わないといけないんでしょ」というコメントを何度聞いたことか…。

電子書籍のマンガも小説も全部スマホでも読めます!

これをまた来年もしつこく言い続けることが、まずは電子書籍普及のはじまりなんだということをうっかり自分でも忘れそうになるので、ここに書き残しておきます。

ブロガー/ライター/アドバイザー

Webサービス・ネット・ガジェットを紹介する考古学的レビューブログ『みたいもん!』管理人。2002年メディア芸術祭特別賞、2007年第5回Webクリエーションアウォード・Web人ユニット賞受賞。「ネットで成功しているのは〈やめない人たち〉である(技術評論社)」「あたらしい書斎(インプレス)」など著書多数。2011年9月より内閣広報室・IT広報アドバイザーに就任。ひらくPCバッグ・かわるビジネスリュックなど、ネット発のカバンプロデュースも好調。 #カゲサポ

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