早慶上智、学部生向け留学がしっかりしているのはどこ?
Twitterにて、海外志向のある受験生からの質問を受けました。
たむ @tam__you
早慶上智、それぞれの特色・長所・短所を比較も含めて列挙するとどうなりますか?
これが元でしばらくやりとりしまして。
留学についてご質問を受けたときは、
当初、
「そりゃあ、上智かなあ、まあそれほど差はないと思うけど」
など思いっきり、流した返事をしていました。
しかし、改めて私の本『時間と学費をムダにしない大学選び2016』を読み返しても、特に詳しく書いているわけでもなく、その差がわかりません。
仮にも大学ジャーナリストを名乗っていて、受験生の質問に生返事しかできないなど慢性的自殺行為もいいところ、と反省して、改めて調べてみました。
人数、割合はどう違う?
まずは留学者数から。各学部の数字は左から留学・研修(学部のプログラム)参加の学生数、学部の学生数、割合です。
留学・研修参加の学生数は『大学の実力2015』(中央公論新社)、学生数は『大学ランキング2016』(朝日新聞出版)。
数値はいずれも2014年5月1日時点のものです。
●慶応義塾大
文学部76/3489 2.2
経済学部81/5120 1.6
法学部157/5235 3.0
商学部54/4466 1.2
医学部29/675 4.3
理工学部181/4336 4.2
総合政策学部110/2903 3.8
環境情報学部57/3702 1.5
看護医療学部32/568 5.6
薬学部9/1208 0.7
●上智大
神学部2/220 0.9
文学部144/2382 6.0
総合人間科学部35/1413 2.5
法学部59/1435 4.1
経済学部65/1441 4.5
外国語学部219/2423 9.0
総合グローバル学部0/188 0.0
国際教養学部47/816 5.8
理工学部55/1799 3.1
●早稲田大
政治経済学部165/4397 3.8
法学部77/3570 2.2
文化構想学部×/4206
文学部×/3276
教育学部×/4763
商学部88/4453 2.0
基幹理工×/2578
創造理工×/2784
先進理工×/2520
社会科学部80/3215 0.5
人間科学部×/2663
スポーツ科学部60/1914 3.1
国際教養学部554/2906 19.1
人数が多く、割合で高く出ているのは早稲田大国際教養学部。
1年間の留学が義務付けられているので、高く出るのは当然でしょう。
この早稲田大、文学部、文化構想学部、教育学部、人間科学部と理工系3学部の横が「0」ではなく「×」になっています。
この「×」、人数がゼロというだけでなく、留学・海外研修のプログラムがそもそもないことを示しています。
これは私も意外でした。
仮に、早稲田の制度ゼロの7学部に進学した場合、留学希望の学生は大学留学センター実施のプログラムに参加するか、私費留学という形を取ることになります。
ただ、通年科目を設置している学部の場合、科目登録ができず、留年する可能性が高くなります。
それから、これはどの大学にも言えることですが私費留学だと、手間暇だけでなく、費用も高く、学生の負担が重くなります。
早稲田大で7学部が制度なし、というのは、注目ポイントであり、文・教育・社会学部系統と理工系学部系統の志望で、留学も考える受験生であれば、早稲田ではなく上智か慶応の方がいい、という話になります。
上智大は外国語学部が9.0%と高いですね。
グローバル総合学部は0ですが、2014年新設で、留学・海外インターンもサポートする、とあるので、これからでしょう。
法・経済・文学部も、早慶よりも割合では一番上。
国際的、というイメージは伊達ではないというところでしょうか。
慶応義塾大は経済・商学部が1%台。
かと思えば、医学部4.3%、看護医療学部5.6%で海外志向の学生もそれなりにいるのかな、と。
海外協定校の数は?
早稲田大はリストが不明も300校以上あるとのこと。
慶応義塾大、上智大はリストを手計算して、116校、201校。
奨学金は大丈夫?
留学する以上はお金がかかります。では、支援する奨学金は?
各留学担当部署の奨学金のコーナーで、日本学生支援機構、留学先大学・国の奨学金以外で、何が掲載しているのか、まとめてみました。
●慶応義塾大
・慶應義塾大学交換留学生(派遣)奨学金…留学支援金として50万円を出発前に給付する奨学金/採用人数は年間30名程度
・TOMODACHI住友商事奨学金プログラム(学部生のみ)…アメリカの協定校へ派遣される派遣交換留学生を対象とし、150万円を給付する奨学金/採用は1~2名程度
※学部等の交換留学については掲載なし
●上智大
グローバルリーダー養成奨励費…5~30万円/交換留学生または本学指定の海外短期研修に参加する者
・ケルン奨学金 …月額650ユーロ/交換留学生としてドイツのケルン大学への留学者/年間1名
大坂ドイツ留学奨励費 …10万円/文学部ドイツ文学科または外国語学部ドイツ語学科からドイツ連邦共和国にある大学への留学者
・吉彌・愛琳アイルランド留学奨励費…15万円/交換留学生としてアイルランドに留学する学生/年間1名採用
・海外留学奨励費(一般留学者向け)…1学期10万円、2学期20万円
●早稲田大
・WSC メンバーズ基金グローバル人材育成奨学金…留学センターが設置する派遣留学プログラム(ダブルディグリープログラムおよび1年間程度の交換留学)によって、海外の大学に派遣される本学学部正規学生の中で、特に成績優秀な者が給付対象者。奨学金は年額100万円(給付)/採用者数は10名予定
・早稲田大学学生交流奨学金…早稲田大学の派遣留学プログラムによって留学する学部・大学院学生 /年額25万円(給付) /採用は150名(2015年度予定)
・Waseda-USA 奨学金 〜早稲田大学創立125周年記念〜…イェール大学に 留学センターのプログラムで留学する学生が対象/年間上限20,000USドル(給付)/採用者数は5名(予定)
・校友会海外留学派遣奨学金…留学センターのプログラムで早稲田大学が指定するオックスフォード大学、ケンブリッジ大学の特定のカレッジに派遣される学生/年額150万円(予定)(給付)/採用者数は最大5名(予定)
・ハワード・ハギヤ奨学金…本大学ダブルディグリープログラムにより台湾へ留学する日本人学部生 /最大80万円(給付)/採用者は最大2名(予定)
ものすごくさっぱりしているのが、慶応義塾大。日本学生支援機構のものを含めても4本しか掲載がありません。
まあ、学部の交換留学などを掲載していないので、無理ないところですが、これだけ見ると、やる気があるのか、疑ってしまいます。
好感が持てるのは、上智大。
日本学生支援機構の奨学金についても採用予定者数がどれくらいになりそうか、明記しています。
人数指定のない奨学金は対象者全員ということでしょうか。
だとしたら、かなり手厚く支援しています。
早稲田大も充実しています。
ただ、数が多いとはいえ、細かすぎます。
その奨学金の内容をだらだら書いているあたりも、受験生や学生ではなく、基金支出者を向いているような印象を持たせる構成です。
総評
サイトとデータを見た限りでは、順番は、
上智大>慶応義塾大>早稲田大
早稲田大は協定校自体は多そうですが、そのリストが分かりづらいです。
協定校リストだけでなく、制度にしろ、奨学金にしろ、分かりにくさがコンセプトなのか、これで国際志向の受験生が早稲田志望になるのか、疑問に思います。
制度は充実しているのでしょうけど、その分かりにくさ、そして、制度自体がない学部もある点で大きく減点し、3位に。
慶応は制度はあるけど、行くか行かないかはご自由に、という印象。早稲田大よりも制度はそれほど充実はしていなそうですが、分かりやすさという点で2位に。
協定校の数自体は早稲田大の1/3程度なので、2・3位は僅差ですね。
分かりにくさという点を除けば、早稲田大を1位に評価する専門家も多そうです。
上智大は協定校・制度の多さだけでなく、サイトの分かりやすさがいいですね。日本学生支援機構の奨学金(給付)についても人数を出すなど、学生・受験生目線で作っています。
と言うわけで、
「そりゃあ、上智でしょ」
という生返事は間違えていませんでした。さすが、俺(ウソ)。
※いい加減な返信をした、たむ君に深くお詫びします