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大阪都否決で大阪市立大・大阪府立大はどうなる?

石渡嶺司大学ジャーナリスト

大阪都構想の住民投票が否決され、シルバーデモクラシーの是非が盛り上がっている今日この頃。

大学業界では、否決を受けて、大阪市立大・大阪府立大の統合はどうなるか、よく話題になります。

さて、否決後、両大学は統合について、コメントを出しています。

●大阪市立大

住民投票結果を受けての本学の考え方

・5月17日、大阪市において特別区設置に関する住民投票が行われ、反対の票数が半数を超え、今後とも政令指定都市・大阪市が存続することとなりました。

・これにより、いわゆる「大阪都構想」は実現しないこととなりますが、さらなるグローバル人材の育成が期待され、ますます国内外の大学間競争の厳しさが増すなか、今後の公立大学のあり方を考えると、大阪の地域活性化に寄与し大阪の発展を牽引する「知」の拠点として、新大学の実現が望まれるものと考えております。

・今後の方針等については、改めて設立団体から示されることになると思われますが、本学といたしましては、今年2月に策定しました「新・公立大学」大阪モデル(基本構想)を深化させるべく、今後とも大阪府立大学と議論をしっかりと積み重ねるとともに、グローバルキャンパスの開設など、今までにない連携強化を図っていきたいと考えています。

・また併せて、こういった状況の中で、本学は、これまでにも増して本学の歴史伝統を礎に教育力や研究力の強化に力を注ぎ、広報活動も強化して発信力を高め、さらに多様なステークホルダーの方々の支援も仰ぎながら、今まで以上に大学のプレゼンスやブランド力を高めていきたいと考えています。

●大阪府立大

大阪府立大学と大阪市立大学は、大阪における公立大学のあり方について検討し、平成27年2月27日に『「新・公立大学」大阪モデル(基本構想)』(以下『基本構想』)を取りまとめ公表しております。

去る5月17日に大阪市における特別区の設置についての住民投票が実施され、反対多数となりました。なお、『基本構想』の今後については、関係者と協議していく考えです。

平成28年度および平成29年度入学試験については、現行どおり、4学域(「現代システム科学域」「工学域」「生命環境科学域」「地域保健学域」)13学類体制による入学試験を行いますので、受験生の皆さんは安心して受験していただきますようお願いいたします。

平成27年5月21日

公立大学法人 大阪府立大学

理事長・学長 辻 洋

大阪市立大はサイトには出ていませんが、コメントを出したのが5月25日。文責は学長(理事長兼任)とのこと。

読み比べると、大阪府立大はあっさりしており、

「関係者と協議していく考えです」

としかありません。

一方、大阪市立大側は、

「さらなるグローバル人材の育成が期待され、ますます国内外の大学間競争の厳しさが増すなか、今後の公立大学のあり方を考えると、大阪の地域活性化に寄与し大阪の発展を牽引する「知」の拠点として、新大学の実現が望まれるものと考えております」

と、統合に前向きな姿勢を悪文(長すぎるってばさ)の中に打ち出しています。

グローバルキャンパスと聞きなれない言葉が出てきますが、これは、「新・公立大学 大阪モデル(基本構想)」に出てきます。

要するに都心に新キャンパスを作ろうとするものですね。

大阪は中心部にある大学が意外と少なく、宝塚大看護学部が梅田・茶屋町、大阪保健医療大が天満橋にある程度。

大阪工業大が梅田・茶屋町にロボティクス&デザイン工学部を梅田・茶屋町に新設します(2017年予定)。

が、それを入れても3校。

グローバル人材のためかどうかはおくとしても、都心に新キャンパスを設立する方向性は間違っていません。

大学統合に話を戻すと、大阪府立大側は消極的、大阪市立大側は積極的とも読み取れます。

ただ、12月の大阪市長選、来年5月の大阪府知事選で、新たな市長・府知事がそれぞれ大学統合にどんな反応を示すか。

それによって、大きく変わるわけで、当面は動きようがない、というところでしょうか。

大学ジャーナリスト

1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。 大学・就活などで何かあればメディア出演が急増しやすい。 就活・高校生進路などで大学・短大や高校での講演も多い。 ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。 主な著書に『改訂版 大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ/累計7万部)など累計31冊・65万部。 2023年1月に『ゼロから始める 就活まるごとガイド2025年版』(講談社)を刊行予定。

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