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「荒れる成人式」と「大学進学率」の関係

石渡嶺司大学ジャーナリスト

もう、すっかり成人式と言えば、「荒れる」「ケンカ」「大騒ぎ」「派手」などが枕詞になってしまいました。

私はこの成人式、大学進学率の上昇が関連している、と考えます。

成人式は、埼玉県蕨町(現在の蕨市)が1946年に実施した、青年祭・成年式が起源、と言われています。

「成人式は、今日、国民の祝日として定着していますが、その起源は蕨町の行った第一回青年祭に由来するとされています。 『成年式発祥の地記念像』は市制施行20周年と成人の日制定30周年を記念して昭和54年1月15日に城址公園に建立されました」

(蕨市サイト)

当時の開催要項(蕨市サイト)によると、

町長式辞、来賓式辞(埼玉県選出代議士、県議)の他、「文部大臣の青年に與ふる言葉」「埼玉県知事の青年に與ふる言葉」

などがあります。

なお、当時の成年式開催日は11月22日。青年祭自体は、22日から24日まで、模擬店、芸能大会、産業展示会などがあった、とあります。

この成年式が1949年、1月15日を成人の日、として制定され、多くの自治体ではこの日に成人式が開催されることになります。

そして、2000年、ハッピーマンデー制度(祝日法改正)で、1月15日から1月第二月曜日に移行。

第二日曜か第二月曜のどちらかで開催する自治体が大半です。

ただし、自治体によっては、

・正月三が日開催(青森県鶴田町、栃木県大田原市など)、

・夏開催(秋田県小坂町、鹿角市、長野市の一部など)

などもあります。

夏や正月三が日に開催するのは、「集まりやすい」「冬だと雪で交通機関がストップすることが多い」「お盆休みや正月休みにやった方が出席率が上がる」などの理由があるようです。

さて、この成人式、1970年代ごろまでは高卒で働いている成人の出席者が大半でした。

その後、大学進学率が上昇。高卒者のうち、それまでトップだった「就職」が「大学等進学(現役)」に譲るのは1993年のことです(就職率33.1%、進学率34.5%)。

※出典は文部科学省「学校基本調査」

※読者のご指摘をいただいて文献を明記しました(2016年1月12日)

その結果、大学受験浪人はセンター試験当日か、直前ということもあって出席できなくなりました。

このあたりから、おとなしかったはずの出席者が暴れるようになり、1990年代から「荒れる成人式」が定着してしまいます。

これは、「大学進学率が上がり、受験浪人は参加しづらい」「大学進学者も、地元外の大学進学者だと、日程によっては後期日程が始まっていて参加できない」などが影響しています。

さらに、「同窓会」化すると、暴れないまで行かなくても、来賓挨拶をきちんと聞かない参加者も増えてしまいました。

これも、大学の講義を聞かなくても怒られない事例が影響しているのではないでしょうか。

こうした事例から、「荒れる成人式」「いまどきの20歳はバカ」と結論付けることは可能です。

ただ、来賓挨拶が続くだけの式が本当に成人のためになるのか、というのはちょっと疑問です。

来賓や21歳以上のための成人式なのか、それとも20歳・成人のための成人式なのか。

ケンカや無理な飲酒などは論外としても、ど派手な格好をする、同窓会として楽しむなどは別にいいんじゃないか、と思います。

そのためには、無理に来賓挨拶などを入れない別の形が求められているのかもしれません。

大学ジャーナリスト

1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。 大学・就活などで何かあればメディア出演が急増しやすい。 就活・高校生進路などで大学・短大や高校での講演も多い。 ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。 主な著書に『改訂版 大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ/累計7万部)など累計31冊・65万部。 2023年1月に『ゼロから始める 就活まるごとガイド2025年版』(講談社)を刊行予定。

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