Yahoo!ニュース

センター試験で24泊25日!~離島高校生の受験格差を考える

石渡嶺司大学ジャーナリスト

小笠原高校の生徒は24泊25日!

センター試験もひと段落したと思ったら、こんな記事がFacebookのシェアで回ってきました。

センター試験で24泊25日

記事執筆は小笠原村・一木重夫村議。

1月16日、17日は大学入試センター試験です。

小笠原高校の子供達も毎年受験しています。

しかし、小笠原高校の子供達がセンター試験を受験するためには、船便の都合で船中泊と内地泊で24泊25日しなければなりません。

えっ!24泊25日!

船中泊2泊として、残り22泊。

親戚などがいたとしても、22泊も預かるのは結構な負担。

ホテルなどで宿泊となれば1泊1万円としてそれだけで22万円!

なんかもう、小笠原高校の生徒はセンター試験を受験するな、とでも言わんばかりの不親切設計。

毎年この時期は定期船おがさわら丸のドック(定期検査と修理)があり、約20日間も定期船が父島から出港しません。

そのため、このような事態が発生します。

保護者の経済的な負担はもちろん、2月の私大受験や国公立大学受験を控える島っ子達にとって、とても大きなハンデになります。

大きなハンデどころではありません。

数年前にこの状況を何とか解決しようと関係機関に働きかけた事があります。

ドックの時期を少しでもずらせないのか?

おお、さすがブログに出すだけはあります。

政治、かくあるべし。

小笠原海運に掛け合って検討してもらいましたが、毎年数名の受験生のためにドック時期を変えることはできないとのこと。

小笠原高校でセンター試験を受験することができないのか?

独立行政法人 大学入試センターに出向いて小笠原高校の実情を説明して可能性を模索してもらいましたが、入試問題のセキュリティーの課題と採点ができないということで、小笠原高校での実施は難しいという結論になりました。

最後に試験会場を都内限定ではなく、全国の会場から選択できるよう独立行政法人 大学入試センターに検討してもらいました。

実家や親類宅に子どもを預けることができれば、経済的な負担や受験生の負担が少しは解消できます。

すると、東日本大震災の時に特別措置として住民票を置いていなくても、避難先の近くで受験できるようにした事例があったため、小笠原諸島の特殊事情を考慮すればより具体的に検討できるとの回答をもらいました。

独立行政法人 大学入試センターを管轄する文科省にも出向いて小笠原の特殊事情を訴え、文科省も理解をしてくれました。

また、検討するためには私だけの要望ではなく、地元としての要望が欲しいという事を言われました。

そのため、村役場と相談したところ、結果的に東京都教育委員会から要望を出すことになりました。

そこまで動くとは、素晴らしい。

政治、かくあるべし(二回目)。

ところが。

先日、小笠原高校に

「受験場所を全国から選ぶことができるようになっていますか?」

と聞いたところ、今も都内だけだという回答でした。

まだ改善されていないようです。

どこで止まってしまったのか?

今、もう一度働きかけを再開しています。

なんだかなあ。

どこでどう止まってしまったのか。

このような実態をマスコミの皆さんも、ぜひ報道して欲しいですね。

というわけで、マスコミの片隅にいる、不肖・石渡が記事にしている次第。

離島の受験会場は?

大学入試センターサイトによると、今年のセンター試験において、離島での試験会場は以下の通り。

●新潟県

佐渡島/佐渡高校…267人

●島根県

隠岐諸島/隠岐高校…72人

●長崎県

福江島(五島列島)/五島高校…142人

壱岐島/壱岐高校…114人

中江島(五島列島)/上五島高校…64人

対馬/対馬高校…74人

●鹿児島県

奄美大島/大島高校…275人

●沖縄県

宮古島/宮古高校…156人

石垣島(八重山諸島)/八重山高校…99人

どこの離島に受験会場がないか

国土交通省サイトによると、日本の領土は全て島でその数は6852島。このうち、本州・北海道・九州・四国・沖縄本島を「本土」。つまり、離島は6847島。

このうち、主な離島で、センター試験会場がないのは以下の島。

●北海道

利尻島

礼文島

焼尻島

天売島

奥尻島

●東京都

大島

八丈島

三宅島

父島・母島(小笠原諸島)

●兵庫県

淡路島

●香川県

小豆島

●愛媛県

来島

●熊本県

天草下島

天草上島

●鹿児島県

種子島

屋久島

徳之島

●沖縄県

与那国島

淡路島に試験会場がないのは意外ですが、まあ、橋があってバスもあるのでそれほど不便というわけではありません。

愛媛県の来島、熊本県の天草下島・天草上島も同じく、橋がかかっています。

北海道、東京都、鹿児島県などもフェリーがそこそこあります。

ざっと見ていくと、24泊25日なんて馬鹿な話は小笠原のみ。

効率重視だとあきらめるしかない?

効率、という点を考えると、小笠原高校は分が悪い、と言わざるを得ません。

学校経営シートによると、2015年時点での全校生徒数は46人。3年生は推定19人。大学進学率が44%とあるので、センター試験受験者はどう考えても10人未満。

フェリー会社にしろ、文部科学省にしろ、

「10人もいないのに」

となるのは、効率重視なら無理ないところです。

が、現在の安倍政権の看板政策は地方創生であったはず。

離島でセンター試験受験者が10人、いや、数人であってもです。そのセンター試験受験者が国公立大などに進学して、地元である離島に戻る、これだって立派な地方創生のはず。

そのためには、離島でのセンター試験受験機会を増やす、あるいは、東日本大震災時と同じく、住民票にない別会場での受験を認める、ホテル代などを補助する、それくらいはやってもいいのではないでしょうか。

センター試験受験会場の設定については、たとえば、和歌山県では県南地域での設定がない、石川県では能登半島での会場がない、などの不平等も指摘されています。

この離島受験者の対応と含めて、改善が期待されます。

というわけで、石破大臣、それと舛添知事、どうにかしてください。

大学ジャーナリスト

1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。 大学・就活などで何かあればメディア出演が急増しやすい。 就活・高校生進路などで大学・短大や高校での講演も多い。 ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。 主な著書に『改訂版 大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ/累計7万部)など累計31冊・65万部。 2023年1月に『ゼロから始める 就活まるごとガイド2025年版』(講談社)を刊行予定。

教育・人事関係者が知っておきたい関連記事スクラップ帳

税込550円/月初月無料投稿頻度:月10回程度(不定期)

この有料記事は2つのコンテンツに分かれます。【関連記事スクラップ】全国紙6紙朝刊から、関連記事をスクラップ。日によって解説を加筆します。更新は休刊日以外毎日を予定。【お題だけ勝手に貰って解説】新聞等の就活相談・教育相談記事などからお題をそれぞれ人事担当者向け・教育担当者向けに背景などを解説していきます。月2~4回程度を予定。それぞれ、大学・教育・就活・キャリア取材歴19年の著者がお届けします。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

石渡嶺司の最近の記事