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ステップ論じゃなくて、いきなり世界に飛び出そう!

岩佐大輝起業家/サーファー

やがては世界で勝負するぞ!と言っているだけでは、おそらく死ぬまで世界には出ていけないだろう。最近学生さんと話す機会が多いが、彼ら彼女らの多くも人生で一度は世界で勝負したいと考えている。

そこで彼らがいつも言うのは、まず英語の勉強をして数年以内にTOEICで800点を取る。次に海外でMBAを取得し、海外転勤のチャンスを待つ。海外に行くことができたら、そこで自分のやりたいビジネスを考える。つまり、完全なステップ論で自分の将来を考えている人が多い。

一歩一歩課題をクリアしていく。ステップ論は誠実だし、努力家の象徴、成功への架け橋のように聞こえるけど、実は全然そうじゃない。しかも一度レールをそれてしまったら二度とそこには戻ってこられなくなる危険性をはらんでいる。想像の域がステップバイステップを超えることがないから、踏み外した時にカムバックできなくなる人もいる。

ここで私の経営する会社(GRA)で働いているK君を紹介しよう。K君とはじめて出会ったのは今から1年半ほど前で彼はまだ大学4年生の21歳。私は彼の前のめりで猪突猛進な感じが何とも好きで、アシスタントとしてインターン(アルバイト)をしてもらうことにした。

彼は、私にべったり張り付き、トップマネジメントのあらゆる意思決定の現場に同席してすべてを吸収しようとしていた。彼にとっては得難い機会だったに違いない。私もあらゆることを彼に話した。

GRAはちょうどその時期、インドでのプロジェクトが2年目に入ろうとしており駐在スタッフを募集していた。文化も宗教も習慣もまるで違うインドで現地のスタッフと英語でコミュニケーションしながら農場を運営するというタフな仕事だ。

私は、そのK君にその候補として声をかけてみることにした。彼は大学院への進学が既に決まっており、それを蹴ってインドに渡るというのは大きな決断だ。もちろん、田舎から彼を見守っている親御さんの立場にしてみれば、大学院に行かずにインドに行くなんて信じられない話だろう。

彼は反対する親御さんを見事に説得し、インド行きの切符をつかんだ。その時の彼は英語もまだまだ、いわゆる猪突猛進でやんちゃな若者だ。

3か月後、彼はインドに旅立った。約1年の駐在中、見事に結果を出した。今ではインド人とのコミュニケーションを英語で難なくこなし、GRAの海外事業において重要な人物として成長している。あの時の彼の一瞬の意思決定と行動。わずか1年で彼が何倍速で成長したかを想像してほしい。言うまでもなく彼はグローバル人材に成長した。私にとっても、とっても嬉しいことだ。まさに経営者冥利に尽きる。

ここで言いたいことは

  1. チャンスが来たら前のめりに挑戦する。そして、その波にのりながら自分を鍛え上げよう。人生で同じ波は二度と来ない。
  2. 能力開発の後で・・・は多くの場合逃げの論法だ。開発しているうちに、最初に身に着けたものはすべて忘れて、場合によっては天国に行きになってしまう。
  3. 地方で成功→東京で成功→アジア→世界なんて順番はどうでもいい。アジアに進出することは仙台から福岡に出ていくぐらいの感覚でいい。世界と直接つながろう。

1・2については前段で触れたので3番の「世界で直接つながる」を深堀する。GRAでは創業わずか2年にしてインドでの施設園芸でイチゴの栽培に成功し、中東へも進出しようとしている。もちろん、日本国内でのビジネスが完全に軌道に乗っているはずもない。

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不思議だと思われるだろうが、GRAにとっては普通だ。宮城でも福岡でも栃木でもインドでも、そして中東でさえも、イチゴは条件さえうまくコントロールできれば育つ。大切なのはマーケットだ。マーケットがどこにあるかだ。今現在、世界のどこにチャンスがあるかが大切だ。ステップ論でそれを追っかけているうちは永遠にチャンスをものにすることはできない。

ではどうやって最初のチャンスをつかむのか?

またK君を引っ張り出そう。(彼はいまごろくしゃみをしているに違いない)

彼の特徴はとにかく動く。動くというのは、そこがどこであれ、インドでも日本中どこでも僕が行くぞ!と言ったらついてくる。だから私はあらゆる機会に彼を私のビジネス相手に紹介することができる。(しかも、アシスタントではなく若手ナンバーワンとして紹介する。)彼の視座はその度に上がっていく。経営者的視点を身に着けることが出来る。

そして、彼は私の投げたボールをすべて打ち返す。細かな指示であればそつなくこなし、おおきな方針を示せば、大胆に行動し結果を出す。物おじせず、ときに猪突猛進に失敗をすることもあるが、それに余りある行動力。私はK君が近い将来GRAの経営チームに入ってくれる実力をつけてくれると信じて疑わない。

そう、失敗してもいいから、思いっきり攻めようよ。人生たったの一回だからね!

誤解が無いように書いておくが、彼が特別ラッキーだったわけではない。とにかく動いて動いて動きまくる。だからチャンスがやってくる。偶発的必然なのだ。チャンスは動きまくって考えまくる人にどんどん降りてくる。それは誰であっても何処であっても、あなたが何歳でも完全にフェアな世界だ。

Anyway、とにかくみんなで動きだそうよ。失敗してもいいじゃん。死ななきゃなんとかなるでしょ。一緒にどきどき、わくわく、甘酸っぱい人生、そして世界を創っていこう。

どきどき、わくわく、甘酸っぱいGRAのビジョンについては「99%の絶望の中に「1%のチャンス」は実る」を是非読んでほしい。血沸き肉躍るはずだ。

起業家/サーファー

1977年、宮城県山元町生まれ。2002年、大学在学中にIT起業。2011年の東日本大震災後は、壊滅的な被害を受けた故郷山元町の復興を目的にGRAを設立。アグリテックを軸とした「地方の再創造」をライフワークとするようになる。農業ビジネスに構造変革を起こし、ひと粒1000円の「ミガキイチゴ」を生み出す。 著書に『99%の絶望の中に「1%のチャンス」は実る』(ダイヤモンド社)、『絶対にギブアップしたくない人のための成功する農業』(朝日新聞出版)などがある。人生のテーマは「旅するように暮らそう」。趣味はサーフィンとキックボクシング。

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