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ヒラリー・クリントン陣営のお膝元へ移転したばかりなのに、次のアリーナを探すニューヨークアイランダーズ

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
ニューヨークアイランダーズが昨季からホームアリーナにしているバークレイズセンター(写真:アフロ)

▼クリントン陣営のお膝元にあるバークレイズセンター

アメリカ大統領選挙へ向け、民主党全国大会で候補者に指名されたヒラリー・クリントン前国務長官が、昨夜(現地時間)受諾演説を行いました。これから11月8日の投票日へ向け、共和党のドナルド・トランプ候補とともに、クリントン氏の動向が、大きな話題となるのは間違いないでしょう。

ところでクリントン氏は、大統領選挙出馬へ向け、ニューヨークのブルックリン区の西側に事務所を構え、選挙対策本部としていますが、そこから南東におよそ2キロ離れた場所にあるのが、バークレイズセンター

2012年にオープンし、NBAのブルックリン ネッツが本拠地としたのに続いて、NHLのニューヨーク アイランダーズも、昨季からホームアリーナにしています。

▼昨季からバークレイズセンターへ移転したアイランダーズ

1972年の秋にNHLへ加盟したアイランダーズは、創設以来、マンハッタンから東へ35キロほど離れた(電車とタクシーを乗り継いで約1時間ほど)ロングアイランドにあるナッソーコロシアムで、ホームゲームを開催。

(位置関係は、ニューヨーク市の公式サイトの地図などをご参照ください)

しかし、チームとともに誕生したナッソーコロシアムの老朽化が進んだことから、創設40季目を前に、オーナーのチャールズ・ワン氏が、アリーナを含めた一帯のリノベーション計画を発表。多目的アリーナにすることで、様々なイベントを誘致できるようにし、周辺の店舗やホテルの需要拡大と、雇用の増加につながるとの青写真を描きましたが、住民投票によって否決。そのため、リース契約が終了する一昨季末(2015年5月)をもって、ナッソーコロシアムに別れを告げました

▼新しいアリーナなのに、あちらこちらに問題点が・・・

このような経緯を経て、アイランダーズは、新たにバークレイズセンターと25年のリース契約を結び、昨季からホームアリーナとしたのですが、初年度からいくつかの問題が発生。その一つが、試合当日の朝の練習会場です。

ナッソーコロシアムより、さらにロングアイランドを東へ約15キロほど進んだ場所に練習アリーナがあり、多くの選手は近隣に在住。そのため試合当日の朝の練習をホームアリーナで行うと、ホテルで休んでから夜の試合に臨むことになり、ビジターチームと変わらなくなってしまう。

逆に練習アリーナを使用すると、練習後の休息時間をあまりとることができずに、バークレイズセンターへ向かわなくてはならず、ホームアドバンテージを感じられない。

さらに加えて、

アイスコンディションが、決して良いとは言えず、ドレッシングルームなどの会場設備も、バスケットボール仕様で設計されている場所が多く、使い勝手が良くない。

という声が、数多く出ていたとのこと。

それを証明するのが、下の動画。

同じディビジョンのライバルチームが、初めてバークレイズセンターで戦うのを前に、テレビ局がレポートをしていますが、選手以外の視点から見ても、

死角が生じるシートが多い

臨場感と迫力が伝わる最前列のグラスシートが少ない

テレビやラジオの放送施設が見劣りする

スタンドの中央が、リンクの中央と異なるため、センターブロックの高価な席が、必ずしも特等席になっていない

などなど、あちらこちらに問題点が見られます。

▼チーム力はアップ! しかしチケットセールスはダウン

そしてホームアリーナの施設にも増して、アイランダーズにとって痛手だと思われるのは、観客動員。

2012-13シーズンに、6季ぶりのプレーオフを果たしてから、ホームゲームのチケット販売率を、

2012-13 → 82.3%(リーグ28位)

2013-14 → 93.4%(同22位)

2014-15 → 94.8%(同23位)

と(ナッソーコロシアムが見納めになる効果も手伝って)伸ばしてきたのですが、バークレイズセンターに移った昨季は、86.2%(同27位)に逆戻り。(いずれもESPN調べ)

23季ぶりにプレーオフのセカンドラウンドまで勝ち進んだことが示すように、チーム力はアップした上、人口の多い都市部に移転したにもかかわらず、チケットセールスはダウンしてしまったのです。

▼解決策は新たなホームアリーナ建設しかない !?

このような状況とあって、現地のメディアが報じているのが、「新たなホームアリーナ探し」

MLB ニューヨーク メッツの本拠地 シティフィールドの隣接地

ナッソーコロシアムから西へ10キロのところにあるベルモントパーク競馬場周辺

などといった場所が、新たなホームアリーナの候補地として、報じられています。

また一方で、バークレイズセンターとの25年のリース契約のうち、最初の4年を終了した後であれば、他のアリーナに移ることも可能だと記されているとの報道もあるだけに、アイランダーズが次のホームアリーナを探していても、まったく不思議ではないのです。

来年1月に就任する新大統領の任期は4年間。

2020年に行われる次の大統領選挙の頃、アイランダーズは、どのアリーナでホームゲームを戦っているのでしょうか?

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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