Yahoo!ニュース

NHL新記録を狙うロシア人GKの前に立ちはだかる「魔の2月」

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
3季前の世界選手権で優勝しプーチン大統領に称えられるセルゲイ・ボブロフスキ(右)(写真:Alexei Druzhinin/RIA Novosti/Kremlin/ロイター/アフロ)

コロンバス ブルージャケッツの勢いが止まりません! 

昨年12月31日に掲載したNHL史上初「14連勝」vs「12連勝」の絶好調チームが激突!で紹介したミネソタワイルド戦に続き、エドモントン オイラーズ戦にも勝利して、11月29日から続く連勝は「16」に!

今夜(現地時間)のワシントン キャピタルズ戦で勝利すれば、24季前にピッツバーグ ペンギンズが打ち立てたNHL記録の「17連勝」に肩を並べ、さらに続いて、ニューヨーク レンジャーズを迎える7日のホームゲームでも白星を手にすると、100季目を迎えたリーグの歴史で最長の「18連勝」となります!

▼コロンバスの最大の武器は攻撃力

先日の記事でも紹介したように、コロンバスの最大の武器は攻撃力。

連勝中の16試合の平均得点は「3.88点」と、全30チームの平均得点「2.68点」を大きく上回っています。

さらに、パワープレー(相手チームの反則退場によって数的有利な状況)のチャンスでも、開幕から高い得点率を誇り、リーグ平均の「18.4%」を大きく上回る「28.3%」

「守り(に入った試合運びをすること)は、チームの死を意味する」と公言し、タンパベイ ライトニングを初優勝に導いた実績を誇るジョン・トートレラヘッドコーチ(HC)の胸中には、13季前に頂点に立ったチーム(当時のタンパベイは平均得点リーグ3位)と同じ思いが沸いているかもしれません。

▼最後の砦に控えるロシア生まれのGK

対して、ディフェンス面に目を転じると、連勝中の平均失点は「1.79点」と、こちらもリーグ平均の「2.68点」を下回っています。

とはいえ、1試合あたりの被シュート数は「29.8本」で、全30チーム中「19位」

同じメトロポリタン ディビジョンのライバルと比較しても、8チームの中で3番目に多いシュート(1試合あたりの平均値)を浴びているだけに、「盤石の守備力を誇るチーム」ではありません。

しかしながら、2点以下の平均失点を誇るのは、最後の砦に控えるロシア生まれのGKセルゲイ・ボブロフスキ(28歳)の存在です!

セルゲイ・ボブロフスキ(Rights of Jiro Kato)
セルゲイ・ボブロフスキ(Rights of Jiro Kato)

▼NHL新記録達成の期待!

「ソチオリンピック」や昨秋の「ワールドカップ」で、ロシア代表のゴールを守ったボブロフスキは、白星が続いている16試合のうち、14試合に先発して、シュートセーブ率は「9割4分1厘」

この数字は「シュートを100本打たれても、5得点しか許さない」ほどの高いアベレージをキープしている証で、昨季のベジナトロフィー(最優秀GK賞)に輝いたブレイデン・ホルトビー(ワシントン キャピタルズ)のセーブ率が「9割2分2厘」だったことを考えると、特筆すべき数字だと言えるでしょう。

さらに、もう一つ特筆すべき数字は、11月以降の成績。

今季のボブロフスキは、開幕当初の10月こそ二度の連敗を喫するなど波に乗れず「3勝4敗」・・・。

ところが、11月以降は一転して「22勝3敗」の好成績!

現時点で「25勝」をマークしているボブロフスキに続くGKは、まだ「19勝」しかしていないとあって、今季の最多勝はもちろん、「レギュラーシーズン48勝」という数字を上回るNHL新記録達成の期待も高まっています。

▼ボブロフスキの前に立ちはだかる「魔の2月」

これまでにレギュラーシーズン(=シングルシーズン)で「48勝」をマークしたのは、NHL歴代最多勝のマーティン ・ブロデューア(ニュージャージー デビルス時代の2006-07)と、前述したホルトビー(昨季)の二人だけ。

ちなみに、この二人が48勝したシーズンに、10月の開幕から大晦日までに積み重ねた白星は、

ブロデューア → 22勝  ホルトビー → 24勝

それに対して、ボブロフスキも24勝をマークして新年を迎えたとあって、(消化試合数の違いはありますが)新記録達成は十二分に可能。

ところが、ボブロフスキの前に、大きな壁が立ちはだかっています。

それは「魔の2月」です!

▼2月の通算成績は4勝9敗。一昨季と昨季はケガで全休・・・

2010年5月にフィラデルフィア フライヤーズと契約し、祖国のロシアからNHLへ活躍の場を移したボブロフスキは、すぐさまメインGKに抜擢されて28勝をマーク。

2季目のシーズン終了後に、コロンバスへトレードされてからも守護神の座を担い続け、先発が見込まれる今夜の試合で節目の「通算300試合出場(うち途中出場が10試合)」を迎えます。

7季目を迎えたNHLのキャリアで、ボブロフスキは、現役選手の中では20位タイとなる「165勝」をマーク。昨季までの6年間でプレーオフに勝ち進めたのは3度だけと、強豪チームに在籍し続けたわけではないものの、勝率「5割7分5厘」と健闘しています。

ところが、2月だけに限ってみると、通算24試合に出場して「7勝17敗」(延長以降での4敗を含む)で、勝率は「2割9分1厘」と大きくダウン。しかも、昨季と一昨季はケガで戦列を離れ、1試合も出場できなかっただけに、ボブロフスキにとっては、まさしく、、、

「魔の2月」

だと言えそうです。

「攻撃は水物」との言葉があるように、最大の武器となっている攻撃力にも、陰りが出始めそうな頃だけに、ボブロフスキにとっても、チームにとっても「魔の2月」とならないように、コロンバスのファンは願うのみかもしれません。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

加藤じろうの最近の記事