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NBA,NFL,NHL,MLBの北米4大スポーツチームの中で、最も大きなプレッシャーと戦う監督は誰?

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
デトロイトタイガースとレッドウィングスのオーナーを務めたマイク・イリッチ(右)(写真:ロイター/アフロ)

ミシガン州のデトロイトでリトルシーザースピザを創業し、1982年から、NHLのレッドウィングス。さらに、その10年後の1992年からは、MLBのタイガースと、デトロイトのメジャースポーツチームのオーナーを務めてきたマイク・イリッチ氏が、昨日(現地時間)亡くなりました(享年87歳)。

▼シーズン119敗を喫してもタイガースを支え続けた

1987年を最後にプレーオフへ進むことができず、2003年には「シーズン119敗」を喫し、勝率が2割台(2割6分5厘)まで落ち込むなど、低迷期が続いたタイガースを支え続けたイリッチ氏。

19季ぶりのポストシーズン進出を果たした2006年に続いて、プリンス・フィルダー(タイトル下の写真左側) が加わった2012年にもワールドシリーズに進出するなど、タイガースの再興を後押ししました。

それだけに、タイガース一筋のエース ジャスティン・バーランダーを筆頭に、、、

選手たちはもちろん、MLBのロブ・マンフレッド コミッショナーも、哀悼の意を表しています。

▼4度も優勝したレッドウィングスを支え続けた

一方、タイガースに先駆けて、オーナーに就任したレッドウングスでは、1997年に42季ぶりのチャンピオンとなったのをはじめ、2連覇を含めて4度も優勝。

2003年にはアイスホッケー殿堂入りも果たしているとあってNHLのゲーリー・ベッドマン コミッショナーが、早々と追悼コメントを発表。

レッドウィングスの現役選手たちも弔意を述べ、故人の生前の足跡を称えていました。

▼42歳で就任したHCが率いるレッドウイングス

MLBがオフシーズンなのに対し、NHLはシーズン真っ只中だけに、イリッチ氏の訃報に際し、現地メディアの間では、レッドウィングスへの取材が多いようです。

そんなレッドウィングスの中で、注目しなければならないのは、チームを率いるジェフ・ブラシル ヘッドコーチ(HC=野球の監督、MLBのマネージャーに対して、NHLはヘッドコーチ)

ブラシルは、大学を卒業した翌年から、母校のアシスタントコーチに就任。以来19季ものコーチ経験を誇ります。

NHLの一つ下のリーグに相当する AHLのアフィリエイトチームを率いて、最優秀HCに輝くなどの手腕を評価され、一昨季に42歳の若さで、レッドウングスの指揮官に任命されました。

もっとも、ブラシルがHCに就任したのには、思わぬ経緯がありました。

それまでレッドウイングスを率いてきたマイク・バブコックHC(現53歳)が、契約期間満了を迎えたのを機に、優勝から38年も遠ざかっているトロント メイプルリーフスが、「8年総額 約5000万USドル(約60億円=当時)」という破格の待遇を提示して、ヘッドハンティング。

GM就任の道を用意していたレッドウイングスも、10季もの間、毎年チームをプレーオフに導き、優勝にも輝いた功労者であることから、オーナーだったイリッチ氏の意向もあり、本人の意思を尊重。

こうして、アシスタントコーチだったブラシルが、レッドウイングスのHCに就任する運びとなったのです。

▼大きなプレッシャーと戦うブラシル

就任1季目こそ、チームをプレーオフへ導いたブラシルですが、昨夏には、ロシア代表でも中心CFを担うパベル・ダツック(現36歳)が、「家族との時間を長くとりたい」と希望して、祖国のチームへの移籍を希望。

これまたイリッチ氏の意向もあって、契約が残っていたにもかかわらず、レッドウイングスはダツックの移籍を了承したのです。

チームの顔だった看板CFを失った今季は、昨季にも増して苦戦を強いられる試合が多く、昨夜の試合を終えた時点で、レッドウイングスは、「イースタンカンファレンスの最下位(16位)」

就任2季目のブラシルは、、、

「北米4大スポーツチームの中で(現在継続中では)最長の26季連続プレーオフ進出」

の期待を断ち切ってしまうわけにいかない上、来季から新たなアリーナへの移転を控え、37季にわたってホームゲームの舞台となってきた、

「ジョールイスアリーナでの最後のシーズン」

となるだけに、レギュラーシーズンで敗れるわけにはいかない! という、

「北米4大スポーツチームの中で、最も大きなプレッシャーとの戦い」

に臨んでいるのです!!

今季が最後となるジョールイスアリーナ(Rights of Jiro Kato)
今季が最後となるジョールイスアリーナ(Rights of Jiro Kato)

果たしてブラシルは、栄光の歴史を記したバナーが連なるジョールイスアリーナの “有終の美”を、飾ることができるでしょうか?

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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