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【トレードデッドライン】NBAの次はNHL! 兄弟揃ってトレードを志願する選手も !!

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
NHLのベストGKに輝き、オリンピックアメリカ代表として活躍したライアン・ミラー(写真:ロイター/アフロ)

NBAは23日(北米東部時間15時)に迎えたトレードデッドラインを過ぎました。

プレーオフへ進んでチャンピオンを狙うチームと、来季以降の巻き返しへ向けた再建を目指すチームの思惑が合致して、複数のトレードが成立。

3年続けてオールスターゲームに出場しているデマーカス ・カズンズが、ニューオリンズ ペリカンズへ移籍し、7季目にして初めてのポストシーズン出場なるか!? など、早くも多くの話題が報じられています。

▼NHLのデッドラインは来月1日

一方、3月1日(北米東部時間15時)がデッドラインとなるNHLでは、各チームのGMの動きが慌ただしくなってきたようです。

なかでも注目されるのは、デトロイト レッドウィングス

昨夜の試合が終了した時点で、イースタンカンファレンスの全16チーム中15位(プレーオフに進めるのは8位まで)と低迷。

本来であれば、冒頭に記したように、「来季以降の巻き返しへ向けた再建を目指す」ため主力選手を放出し、ドラフト指名権や若手の有望なプロスペクトを獲得したいところ。

しかし、今月11日に掲載した

の記事で紹介したとおり、

★足掛け35年にわたってチームを支えたオーナーが亡くなった。

★37季もの間、戦い続けたホームアリーナが今季で最後を迎える。

★北米4大スポーツ(現在継続中では)最長の26季連続プレーオフ進出中。

という背景があるだけに、容易に白旗を上げるわけには、いかないのです。

▼トレードで補強ができない理由は?

さすれば、トレードで有力な選手を補強すれば? と思われるでしょうが、デトロイトにとって問題なのが、「サラリーキャップ」です。

NHLでは、「サラリーキャップ」と呼ばれるチーム年俸総額制限が定められています。

これは他の北米メジャースポーツにも定められていますが、年俸総額をオーバーしても、「ぜいたく税」と呼ばれる課徴金さえ支払えばOKなMLBと異なり、NHLでは(長期負傷選手やマイナーリーグに降格した選手を除く)アクティブロースターの年俸総額を、サラリーキャップ以下に収めなくてはなりません。

しかし、デトロイトのキャップスペース(年俸総額の上限からアクティブロースターの年俸総額を引いた金額)は「ゼロ」

現状では有力な選手を補強したくても、高額な年俸を支払っている主力選手が揃っている限り、トレードができないのです!

▼最終手段はバイアウト!?

このような状況のチームにとって、最後の手段として考えられるのは、ズバリ!「バイアウト」

バイアウトとは、契約を結んでいる選手の残りの契約を買い取って、チームの支配下から外す(ありていに言うとお払い箱にする)手段。

(契約年数や年俸額などによって異なりますが)規約に基づいて、バイアウトした選手のサラリーキャップ負担額は、ケタ違いに少なくなるため、キャップスペースを広げることができます。

しかしながら、キャップスペースを広げるために、年俸の高い選手(=実績を積み重ねてきた選手)をバイアウトすれば、戦力ダウンにつながってしまう可能性も。

逆に、年俸の安い選手をバイアウトしても、他チームの主力選手を獲得するほどのキャップスペースを広げることが難しく、目利きが確かでないと、特効薬になるとは言えません。

▼トレード放出を直訴する選手が出現 !

そんな中、デトロイトから「トレードの話題」の話題が聞こえてきました。発信源となっているのは、FWのドリュー・ミラー(33歳)です。

アナハイムダックスに在籍していた2007年に、主力FWの負傷者が出たことから、プレーオフでNHLデビューを飾ると(3試合出場しただけでしたが)チームが初優勝を飾り、スタンレーカップに名前を刻んだ実績を誇るミラーは、タンパベイ ライトニングを経て、2009年11月からデトロイトの一員に。

派手さはないものの、ディフェンシブなFWとして持ち味を発揮していましたが、今季は1月末に(NHLの一つ下のリーグに相当する)AHLのアフィリエイトチームに降格となったあと、デトロイトから再昇格の声がかからずじまい。

デッドラインが近づくにつれ、「願わくばトレードして欲しい。みんな同じだろうけれど、オレはNHLでプレーしたい!」と話し、トレードでの放出を願う胸の内を明かしました。

▼兄もトレードを望んでいる !?

一方、ドリュー・ミラーの兄のライアン・ミラー(36歳)からも、トレードの噂が聞こえてきます。

バッファローの守護神として君臨したライアン・ミラー(Rights of Jiro Kato)
バッファローの守護神として君臨したライアン・ミラー(Rights of Jiro Kato)

1999年にバッファロー セイバーズからドラフト指名されたあと、AHLで実績を残しNHLへ昇格。

労使交渉が決裂し、全く試合が開催されなかったシーズン(2004-05)の翌年から、バッファローの正GKの座に起用され、その名を馳せました。

最も印象的だったのは、2010年に開催された「バンクーバー オリンピック」での活躍で(覚えていらっしゃる方も多いのでは?)、アメリカ代表のゴールを守り、スーパーセーブを連発 !!

決勝戦でカナダに敗れ銀メダルに終わったものの、大会のMVPに選ばれると、勢いそのままに、バッファローの守護神としても獅子奮迅の働きを披露し、ベジナトロフィー(最優秀GK賞)に輝きました。

ところが、近年は成績がダウンしてしまい、2014年のトレードデッドライン直前に、セントルイス ブルースにトレード。

その年のオフにFA権を行使して、3季前からはバンクーバーカナックスでプレーをしていますが、バッファロー時代の成績には及ばず、今季は先発マスクを譲る試合も、多く見られます。

▼代理人はトレードを画策 !?

自身からのコメントは、公には伝わってきていませんが、代理人は「選手の考えを尊重する」と言ったのに続いて、「全ての話に耳を傾けるつもりだ」とトレードの画策を視野に入れている模様です。

とはいえ、近年の成績に冴えが見られない中で、他のチームが獲得に動くのか?

ポジティブな見方をすれば、今季終了をもって現在の契約が満了となるため、以前の活躍した姿の再来を期待して「今季のプレーオフだけを見据えた補強策」として、デッドライン直前に獲得する可能性もありますが、手を上げるチームは現れるでしょうか?

▼ミラー兄弟の対決は再び見られるのか !?

守護神の座を取り戻したい兄のライアン。

もう一度、NHLのステージで戦いたい弟のドリュー。

GKの兄(白#30)とFWの弟(赤#20)がNHLの公式戦で対戦する姿を、また両親に見せてあげるためにも、二人は新天地でのプレーを熱望しているようです。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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