AKB、少女時代、オリコン1位が与える社会への影響
KNNポール神田です。
2014/07/23/水に発売された少女時代のベスト・アルバム『THE BEST』(ユニバーサルミュージック)が発売当日に3万7,104枚を売り上げ、オリコンランキングで1位になった。しかし、その売上の構成要素を見ると、ランキング1位の意味を考えるべき時期にそろそろ来ているように感じる。
熱心なコレクター的なファンは、14種類の中から選ぶか、3万910円を選ぶという選択肢が残されているが、予約は完売という。オリコン1位が水増しと言われるが、ボクはそうは思わない。
※読者からこの「水増し」はおこなわれていないという指摘がありましたので、週明けにでもオリコン様に確認してみたいと思います。
熱心なファンの重要と音楽業界側の供給マーケティングが均衡しているから成立するビジネスだと思う。しかし、そこに「オリコン」という社会的な側面を持った計測装置で測定した場合、そのデータは必ずしも、期待する音楽産業の消費動向を知るためのものではなくなっていることも事実だ。
AKB48「ラブラドール・レトリーバー」初日だけで146.2万枚
AKB48の36作目に当たる「ラブラドール・レトリーバー」は、2014年5月21日発売時に146.2万枚を売上げている。このシングルには、37作目の2014年8月27日(水)発売を予定されている新曲「心のプラカード」の『第6回選抜総選挙』の投票用のシリアルナンバーが含まれていたのもヒットの理由のひとつであろう。
ピンクレディーの最大ヒット曲「UFO」は、オリコン枚数155万枚
昭和のアイドル時代、ピンクレディーの「UFO」は(1977年12月5日発売)広く日本国内で知られているヒット曲であり、社会現象でもあったピンクレディー全盛期5年間(1976-1980年)の最大のヒットである。現在でもNTTドコモのCMにリメイクされて使われるなど、当時を知らない人にも世代を越えて認知されている楽曲である。
しかし、実際の売上は、オリコン枚数155万枚、出荷枚数195万枚という、AKB48の「ラブラドール・レトリバー」の初日にかろうじて勝ったという記録だ。
UFOは10週連続オリコンチャート1位であり、ザ・ベストテンでも3週1位。第20回日本レコード大賞(1978年)
を受賞し、1978年FNS歌謡祭で最優秀ヒット賞を受賞している。
「日本のレコード産業2014(日本レコード協会)」によると、音楽ソフト/有料音楽配信合計で、3,121億円(2013年)である。
内訳は、オーディオレコード1985億円+音楽ビデオ720億円+有料音楽配信417億円。
ピンクレディーの頃(1978年、昭和53年)と比較してみると…
1978年(昭和53年)生産枚数2億4,278万枚、2,457億円
2013年(平成25年)生産枚数2億4,770万枚、2,700億円
音楽ソフトの売上と枚数は、なんと36年前と変わりがなくなっている。
しかし、1978年当時のピンクレディーと、AKB48を比較してみて、同じかというとそうではない。
1970年台のテレビにおける生歌番組の比率は、現在とは雲泥の差である。つまり、露出量が圧倒的だった。また、1970年代はインターネットもなければ、CDもなく、レコードプレーヤーとブラウン管とテレビとレコードの時代なのだ。そして現在、インターネットと液晶テレビにおける総選挙、CDと音楽配信の時代へと、同じ音楽産業としても大きく変化している。
そして、大きな一番大きな変化は、ピンクレディーの「UFO」とAKB48の現在の「ラブラドール・レトリーバー」が社会に同等に浸透しているかという肌感覚の違いだ。
一部のファンの間では熱狂的だが、社会全体としてみた場合、AKB48は社会現象と呼べるが、「ラブラドール・レトリーバー」は、「UFO」ほどのインパクトはない。つまり、AKB48はニッチなマーケットにおける絶大なる熱心なファンが支えているマーケットとも言い換えることができる。また、昭和の時代とちがって、メディアの選択肢がありすぎる現在においてのニッチマーケットは、それだけでもマスと同等の記録を打ち立てるようになっているのだ。
そして、その売上は、個人が一枚だけ購買するのではなく、多数購買するフリーケンシー型の消費にあらわれている。マスによる広いリーチ型購買の70年代とはまったく違った音楽ビジネスモデルが成立しているのである。
オリコン1位の意味は同じでもそれを支える要因は全く別の市場で構成されていると考えるべきだろう。
そう、音楽産業のメジャーメントは、もはや、PV(ページビュー)的な測定ではなく、UU(ユニークユーザー)的測定にするほうが意味があるのではないだろうか?
音楽産業PVが1978年と同じ規模で公表されるよりも、音楽産業UUが36年前の10倍以上を担っている側面を公表したほうが、オリコンとしてもビジネスの幅が見えてくるのではないだろうか?
しかし、現在のUU数は、純粋に「音楽」を購買しているのではなく、音楽産業に加わる権利を購買していることも理解しておかなければならない。そしてこの販売スキームが永遠ではないこともだ。今のAKBバブルの間に次の戦略を構築しなければならない。