AV女優が日経新聞記者でもいいじゃないか!
【追記】実に痛快な本人からのコメントがLivedoor NEWSに掲載されている。
『「AV女優」の社会学』の著者は、「偏見を鑑みて」などという言い訳の裏で、どこかで自分の著作を読む偉いオジサンたちを「巨乳で馬鹿っぽいAV女優が書いたって知ったらどんな顔するの?」と嘲笑するような気持ちは持っていなかったと言えるだろうか。であるとしたら、これは大いに議論・批判されてしかるべき問題である。「日経記者がAV女優」であることよりも「鈴木涼美がAV女優」であることのほうが余程大きな問題を孕んでいる、と私は思う。
「文春」に“AV女優歴“を暴かれた元日経記者・鈴木涼美が緊急寄稿!
http://news.livedoor.com/article/detail/9327280/
KNNポール神田です!
思わずこの時代錯誤のニュースを見てとても腹立たしく思った。
しょせん、大出版社「株式会社文藝春秋」であっても、週刊雑誌部門はイエロージャーナリズムである。
電車の中吊り広告で関心を煽り、毎週部数を競う。広告獲得で成績が決まる。結果として、より扇情的であり、刺激のあるタイトルが並ぶようになる。
さらに、発売された記事をネタに今度は夕刊紙がさらに下品に食いつく…。ウェブ版でも同様だ。
「仰天過去」「新聞業界もAV業界も大騒ぎ」「佐藤るりクン(女優名)」「鼻の下を伸ばしている都庁の役人」
もう、書いている記者の年代が「言わずもがな」な年齢なんだろう。まさに、死語レトリックの「オンパレード」だ。
そもそもアダルトAV業界ってどうなの?
そもそも、AV女優というのは一職業であり、日本の法令の中でも認められている合法的な職業だ。ブラック企業は多いかもしれないが、反社会的な職業でもないだろう。また、自分の肉体を使って演技をするという仕事も、特定多数な出演者とのカラミが主体であり、性風俗嬢同様にSTD検査も義務づけらている。不特定多数をいとわない素人女性よりも倫理的にも感染症的にも健全ではないだろうか?
AV女優という職業は「AV」という需要があるから成立する事業だ。パッケージビジネスがネットへと変遷している。
シュリンクしているレンタルビデオ業界
2007年に3,600億円あったレンタルビデオ市場は、2010年には2600億円と、1,000億円も市場がシュリンクしている。1/3がアダルトビデオとして考えても、レンタルでのAV市場は、900億円程度の市場だろう。当然、AV女優のギャラもデフレ化している。
さらに、全国レンタルビデオ店3,600店のうち、TSUTAYAは1400店、GEOは1200店と、2社で3分の2以上を占めている。店頭で顔見せするよりもネットで簡単にという側面や違法サイトでの無料公開などで、市場はシュリンクしているが、ユーザーの総消費時間は逆に増えているのではないだろうか?
同様に元・AV女優とい肩書きや経歴を持つ人が、かつての作品をネットで発見されやすい環境も生じている。ネットにおける「忘れられる権利」がないのだ。
なぜ、日経新聞記者や東大卒がAV女優だったら仰天過去なんだろう?
たとえ、元ヤンキーとかヤクザとか、犯罪歴がたとえあったとしても、懲罰を受けたならば、それ以上、個人にヒモづけられた罪はないはずだ。しかし、社会は元◯◯に対して手厳しい。さらにそれが、新聞記者や東大卒というヒモづけがつくときびしくなる。それはエリートに対する羨望の現れと侮蔑の重なった感情だからだ。
AV女優は犯罪ではない。なのに、なぜ、犯罪者と同様に元AV女優という肩書について「仰天過去」となってしまうのだろうか?
おそらくアダルトビデオを一度も見たことがない、お世話になったことがないという男性は非常に少ないと思う。男性の多くが、サービスの受益者でありながら、そのサービスの事業者側にいた人をどこか勝手に侮蔑しているのではないだろうか?。それはどこか話がおかしい。「職業に貴賎なし」という言葉を借りれば、社会のニーズがあり、法律を犯していない限りれっきとした職業なのだ。
イタリアの元・国会議員のチッチョリーナ氏はポルノ女優(「エーゲ海に捧ぐ1979年」)だった。しかし民主的な投票で選ばれた国会議員だ。オーストラリア・メルボルンのデイリー・プラネットは、売春宿チェーンだがオーストラリアで店頭公開し資金調達を行った。
江戸時代、おおらかだった日本の性文化が、戦後勝手に隠微で陰湿で社会悪のようにガラパゴス的に進化してきているような気がしてならない。世界と比較しても日本だけが、こっそり利用していながら、偏見に満ちているのだ。日経新聞でも、政治家でも、教育者でも、NHK職員でも、公務員でも、AV女優がなってはいけないという法律もない。面接で通るかどうかは別だが…。しかし、元キャバクラ、元性風俗、元水商売というだけで、損をしている女性は少なくないだろう。
まずは、職業に対しての偏見と、過去の経歴を公人でない人まで暴くジャーナリズムそのものに対して、強気をくじき弱気を助けるメディア精神そのものがないことが問題だ。
新聞の読者は、東大卒の記者だから記事を読むのではない、記事として新聞社の報道姿勢を代弁していれば良いのだ。ゆえに元の職業がなんであれ、記者の資質とは関係ない話だ。まるで、どこかの週刊誌が政治家の出自を暴いて叩く構図と一緒のことだろう。
人の弱気をくじき売上をあげるなど、一番卑劣なジャーナリズムではないだろうか?
同じメディア業界に身をおくものとして恥ずかしい限りだ。