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カサノバ社長はマクドナルド謝罪会見にのぞむべきだった

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

KNNポール神田です!

昨日のマクドナルド記者会見での違和感

昨日(2015/01/07)のニュース番組でマクドナルドの異物混入記者会見を見てとても違和感を感じた。

記者のいじわるな質問が延々と続く3時間にも及ぶ会見であった。

「ナゲットの件がなければ、これはずっと公表するつもりがなかっということですよね…」という誘導尋問が見られる。食品業界において、異物混入はゼロにはできない永遠の課題である。しかも、製造工程ではなく、最終的な店舗のサービスレベルでの異物混入は、オペレーションミスで起きうるものである。また、製造段階での「品質問題」でもなく、「産地偽装」というような悪意のあるものでもなかった。しかし、実際には、「異物混入」というコトバに過剰にナーバスになりすぎている気がしてならない。

サラ・カサノバ社長はなぜ登壇しなかったのか?

なぜ、日本マクドナルドの記者会見に、社長、会長ではなく、取締役の登壇だったのだろうか?取締役といっても、上級の取締役の登壇。しかし、上から数えると、取締役会長にベネッセHDの原田泳幸氏。そして、代表取締役社長兼CEOのサラ・エル・カサノバ氏。代表取締役上席執行役員の佐藤仁志氏の3人が名を連ねているので、上席執行役員といえども、最高レベルでも、ナンバー4とナンバー5の青木岳彦氏、菱沼秀仁氏の2名だ。

http://www.mcdonalds.co.jp/company/outline/gaiyo.html

今回、サラ・カサノバ社長は海外出張中ということだった。しかし、緊急記者会見であればあと2日早く出来ただろうし、この企業にとって一大事な時に、のんきに海外出張している社長にはあきれかえるばかりだ…。すぐに、飛んで帰ってくるべきだった。すでに、原田泳幸取締役会長は、「マクドナルドは基本に忠実になるべきでしょうね(大がっちりマンデー!!スゴイ社長が集合2015/01/04)」と、すでにベネッセHDの顔となっている。しかしだ。原田泳幸氏ならば、今回の謝罪会見に動揺することなく、しっかりと対応できたはずだ。

ウェブサイトにも、「私は取締役会長として、取締役会の議長を務め、会の運営及びコーポレートガバナンスにそのリーダーシップを発揮いたします」と明言しているにもかかわらず。もちろん、原田泳幸氏はベネッセ就任早々の顧客情報漏えいの謝罪会見があったため、イメージ的に登壇させなかったのだろう。そこは、謝罪会見での神としての面目も見せてほしかったものだ。

カサノバ社長の上に原田会長のメッセージがあるマクドナルドの企業概要
カサノバ社長の上に原田会長のメッセージがあるマクドナルドの企業概要

問題はサラ・カサノバ氏だ。昨年の謝罪会見の時の冷淡な会見[2014年7月29日]を想い出した。

この時のような、カサノバ氏が、冷酷にもみえる無表情で淡々とした謝罪をおこなえば、これぞとばかりに、日本のメディアはマクドナルド叩きに走ったことだろう。しかし、ある意味、今回は、言葉は悪いが格下役員の登壇で成功だったのかもしれない。ただ、ニュースを見ている我らはスッキリとはしない。

小保方さんのいない理研の会見モードだからである。

結果はどうあれ、今後のマクドナルドの対応を声明するのに代表者の顔が見えないマクドナルドでは謝罪会見する意味もなかった。不思議なもので、異物混入に対してではなく、この外資系組織の中途半端な日本文化圏においての対応そのものに、マクドナルドという食品への欲求が急速に減退してきている。これこそが最大のピンチである。強いリーダーシップで「今回のほとんどの異物混入の件は、店頭で防ぎきれない起こりうる事故であった。対策は0.01%を限りなく0.00%にすることだ!」言い切ってほしかった。そうでないと、そのうち、髪の毛の混入とか、些細なことまでメディアに取り上げられる事となる。

これはネットでの炎上と同じ構造で、自分はアノニマスで優位な立場で誰かが困っている姿を楽しみたいという、陰湿な日本人の誰もが持っているキャラクターをメディアがうまく同調しているにすぎないからだ。また、大ニュースがないと、こういうトップにならない平凡なニュースがトップになってしまう。そのうち何もなくなると、動物に関するトピックがニュースがトップになるといういつものメディア構造だ。ニュースが枯渇すると誰かに困ってもらうしかないというメディアのイジメ構造が同じメディア人として非常に憎らしい。

マクドナルドはこれからどうするべきなのか?

元マクドナルド伝説の店長であり、「人生で大切なことはみんなマクドナルドで教わった」の著者であるモチベーションセミナー講師である鴨頭嘉人(かもがしらよしひと)氏に「マクドナルドはこれからどうするべきなのか?」と聞いた。

『ピンチをチャンスに変える変革のリーダーシップを発揮しよう!!』この一言に尽きます。言うのは簡単…やるのは苦難に充ち満ちた道かもしれません。だからこそ!不断の決意を持って、直営とフランチャイズに関わらず、マクドナルド・ビジネスに関わる人間が一人ひとり『私がマクドナルドだ!』という…「マクドナルド哲学」を発揮することが必要だと感じてます!!ある意味、黙々と淡々と…。現場で行動で自己変革していくことが必要だと感じます。そして、5年後…10年後『あの時があったから、今がある!』と、今の困難をありがたい恵みのチャンスだったと言う歴史で応えるのが『今、マクドナルドですべきこと』だと思います。どんなに綺麗ごとだと蔑まれても…心の中で『それが私のマクドナルドだ。』と確信を持って行動するマクドナルドマンが…未来のマクドナルドをつくってくれると信じています!!

…と古巣のマクドナルドへエールを送っている。

まさに同感だ。マクドナルドに今欠けているのはこのパッションなのではないだろうか?顔が見えなければ、全員がマクドナルドマンとしてのホコリを持つことがケアレスミスでの異物混入がなくなるのではないだろうか?

マクドナルドは、彼を呼び戻すべきではないだろうか?

【参考リンク】

経営理念から最大の価値を生み出すマクドナルド

http://www.jmca.jp/column/only/only2.html

デマ、誹謗中傷を原動力とした藤田田の成功哲学

日本マクドナルドの創設者のDNA

http://moneyzine.jp/article/detail/191423

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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