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日本海に「冬の台風」

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
秋田沖に出現した「ポーラーロウ」(2月11日午前9時,ひまわり8号)

日本海に出現した渦巻状の雲。その形状から冬の台風とも呼ばれ、激しい突風や大雪をもたらす危険な雲だ。

冬の台風「ポーラーロウ」

表紙の写真は11日、ひまわり8号が捉えた秋田沖の大きな渦巻状の雲です。渦の大きさは約300キロ、大陸から吹きだす寒気の中で発生する低気圧のため、「ポーラーロウ(Polar Low)」または「寒気場内低気圧」といいます。

また、その形状から冬の台風とも呼ばれ、発達すると台風のような眼ができます。回転する雲は大きさの大小にかかわらず、強い風や発達した雲を伴っているため、上陸すると激しい現象が起こるのが特徴です。

冬の日本海はしばしば、ポーラーロウが発生しますが、このようにスケールの大きい、明瞭なポーラーロウはあまり見かけません。

秋田沖の小低気圧(2月11日午前9時の天気図)
秋田沖の小低気圧(2月11日午前9時の天気図)

このポーラーロウは日本海沿岸を北上したあと、日本海北部でUターンし、11日午後4時頃、秋田県付近に上陸しました。

天気図で見ると平凡な低気圧にしか見えませんが、ひまわり8号の雲画像では雲が回転している様子がはっきりとわかります。気象衛星がなかった時代はポーラーロウの接近、上陸がわからず、不意打ちの悪天だったでしょう。

冬の日本海沿岸ではポーラーロウに伴う突風や落雷などが多く発生し、札幌市内に大雪を降らせる「石狩湾小低気圧」もポーラーロウの一種です。

上陸直前のポーラーロウ(2月11日午後3時,ひまわり8号)
上陸直前のポーラーロウ(2月11日午後3時,ひまわり8号)

これは上陸直前(11日午後3時)のポーラーロウです。日本海沿岸に近づくにつれて、渦巻状の雲が崩れ、不明瞭になっています。でも、ちょうどその頃、山形県酒田市では24.0メートルの突風が吹きました。

【参考資料】

小倉義光,2015:第11章ポーラーロウ,日本の天気 その多様性とメカニズム,東京大学出版会,213-227.

気象衛星センター,2002:気象衛星画像の解析と利用 航空気象編,第6章寒気場内の現象.

柳瀬亘,2010:ポーラーロウの理想化実験,天気, 57,372-381.

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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