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ブロッキング高気圧が発達 寒さ終わらず

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
ベーリング海のブロッキング高気圧が偏西風を大きく蛇行させる

上空の流れを大きく変化させるブロッキング高気圧がベーリング海で発達する。今後も寒気が流れ込みやすくなるため、一度暖かくなっても、寒さがぶり返す予想だ。この寒さは桜の開花にも影響する。

いつもと違う天気図

日々、天気図を見ていると、ちょっとした違いに気がつくことがあります。

こちらの天気図はきょう(10日実況図・上)と12日(予想図・下)を並べたものです。違いがわかるでしょうか?

上:3月10日午前9時の実況天気図,下:3月12日午前9時の予想天気図
上:3月10日午前9時の実況天気図,下:3月12日午前9時の予想天気図

もちろん、天気図はその時の大気の状態を表した図ですから、一枚として同じものはありません。

注目したのは北海道付近(黄丸)です。きょう(10日・上)は低気圧ですが、12日(下)は高気圧になっています。この程度の変化は当たり前と思われるかもしれませんが、冬型の気圧配置は中国大陸に高気圧、北海道付近に低気圧がある組み合わせです。これを見て、これまでとは天気図が変わったと思いました。

ブロッキング高気圧が寒さを長引かせる

なぜ北海道付近にできる高気圧に注目するのでしょう?

それはブロッキング高気圧と呼ばれる背の高い高気圧であり、停滞して異常気象を引き起こす原因にもなるからです。

こちらの図を見てください。

ベーリング海でブロッキング高気圧が発達する(3月12日予想図)
ベーリング海でブロッキング高気圧が発達する(3月12日予想図)

注目している高気圧は徐々に勢力を強め、上空ではブロッキング高気圧として発達する予想です。

ブロッキング高気圧が出現すると、上空を流れる強い西風(偏西風:黄矢印)が妨げられ、南下して日本付近を流れるようになります(オレンジ矢印)。偏西風が南に偏って流れると、北極からの寒気が日本列島に流れ込みやすくなるため、いったん暖かくなっても、また寒さがぶり返すのです。

ブロッキング高気圧は桜にも影響か?

ブロッキング高気圧はその名のとおり偏西風の流れをブロックし、寒気の流れや強さに大きな影響を与えるため、季節予報では一番に注目される気象現象です。

3月11日から4月10日までの平均気温の予想(1か月予報,気象庁,3月9日発表)
3月11日から4月10日までの平均気温の予想(1か月予報,気象庁,3月9日発表)

最新の1か月予報ではブロッキング高気圧の影響で寒気が南下しやすくなるとみられ、西日本や東日本では今月末にかけて、気温が低くなる可能性が高くなっています。まもなくお花見シーズンを迎えますが、これからの気温が桜の開花に最も影響するでしょう。

見落としてしまいそうな天気図の小さな変化でも、それが意味することを考える。天気の奥深さを感じます。

【参考資料】

前田修平,2013:季節予報とは,平成24年度季節予報研修テキスト「季節予報作業指針」,気象庁地球環境・海洋部,1-13.

新保明彦,2017:ブロッキング高気圧,平成28年度季節予報研修テキスト「1か月予報システムの更新」,気象庁地球環境・海洋部,38-41.

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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