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勝てば世界、負けたら解散。U-19日本代表、命運分かつ日朝戦へ!!

川端暁彦サッカーライター/編集者
真剣な表情で鈴木政一監督の指示を聞く選手たち

世界まで、あと一勝

前日練習は負傷で帰国した二人を除く全選手が参加し、調整に励んだ
前日練習は負傷で帰国した二人を除く全選手が参加し、調整に励んだ

U-20ワールドカップのアジア最終予選を兼ねるAFC・U-19選手権は10月17日、その準々決勝を迎える。1995年以降に生まれた選手たちで構成されるU-19日本代表は、中国、ベトナム、そして韓国と同居する「グループ・オブ・デス」を劇的な勝ち残りで突破。土壇場で踏みとどまり、韓国を蹴落としての準々決勝進出となった。

アジアに与えられる世界切符は計4枚。大会のベスト4に勝ち残ったチームに自動交付されるシステムだ。日本は過去3大会、この「あと一勝」という段階の準々決勝で敗れてきた。最後にU-20の世界舞台に立ったのは2007年のこと。内田篤人や槙野智章といった1987年以降生まれの選手たちが最後だから、実に8年分の空白を作ったことになる。ここで敗れれば、その空白は10年に広がってしまう。そうした強い危機感を持って、この日に向けてチームを強化してきた。16日の前日練習には、日本サッカー協会の原博実専務理事、霜田正浩技術委員長、手倉森誠U-21日本代表監督も勢ぞろい。静かにトレーニングを見守る様子からも、協会としての期待感と危機感が感じられた。

この大一番で迎える相手は、同じ東アジアの北朝鮮。タフに“戦う”タイプの強健なチームだ。戦術的にも技術的にも特別に洗練されているわけではないが、とにかく粘り強く戦ってくる。ボールへの執着心は目覚ましいものがあり、故障を恐れていないのかと驚くほどにアグレッシブさを見せてくる。日本としては、そうした球際の勢いに気圧されないことが肝心。しっかりとボールを保持して、相手を動かしていく必要がある。

加えてイラク戦がそうだったように、極端に守備重視の布陣を敷くことも多いチームだ。2トップが自陣まで下がるのは当たり前で、「とにかく引いて守ってカウンターを狙ってくる」(鈴木監督)。北朝鮮にはかつてジュビロ磐田やコンサドーレ札幌でもプレーした金鐘成氏が参謀として付いており、日本に対してどういう策を練ってくるか分からない面もある。先制点さえ奪えればラクに戦えそうだが、それは逆もまた真なり。立ち上がりは慎重に入りたいところだ。

初先発、オナイウ阿道を投入へ

対する日本はこの一戦で、FWオナイウ阿道(ジェフ千葉)を初先発させる見込み。ナイジェリア人の父と日本人の母の間に生まれたオナイウは強靱なフィジカルと、「ちょっと他と違う」(鈴木監督)圧倒的なジャンプ力を生かした空中戦の強さが持ち味。引いて守ってくるであろう相手に対し、裏を狙うタイプのFWは使いづらい。鈴木監督は「ここはタイプ的に阿道」と決断。今大会が各年代を通じて代表初招集という大抜擢を受けた“秘密兵器”が大役を担うこととなった。

予想される先発は、GKに中村航輔、ディフェンスが右から石田崚真(ジュビロ磐田U-18)、内山裕貴(コンサドーレ札幌)、中谷進之介(柏レイソル)、宮原和也(サンフレッチェ広島)。中盤が右から関根貴大(浦和レッズ)、井手口陽介(ガンバ大阪)、川辺駿(サンフレッチェ広島)、金子翔太(清水エスパルス)、そしてFWが南野拓実(セレッソ大阪)とオナイウというラインナップだ。

今大会の日本は初戦で中国に敗れ、第2戦では終了目前でベトナムに追い付かれながら、ロスタイムに奇跡的な勝ち越し。そして第3戦では勝利しかない状況で韓国に粘り勝ちを収めた。絶望の一歩手前という死地を経て、「日の丸を背負う重みは分かっていたつもりだったけれど、本当に思い知らされた」(MF金子)。

「日本」を背負う意味を知り、一回り大きくなった若獅子たちが、最大の関門へと挑む。日本時間の2014年10月17日18時、AFC・U-19選手権準々決勝。「世界切符」を懸けた日本と北朝鮮の戦いが、ミャンマーの新都ネピドーを舞台に、いよいよ始まろうとしている。

サッカーライター/編集者

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。2002年から育成年代を中心とした取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月をもって野に下り、フリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』を始め、『スポーツナビ』『サッカーキング』『サッカークリニック』『Footballista』『サッカー批評』『サッカーマガジン』『ゲキサカ』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。著書『2050年W杯日本代表優勝プラン』(ソルメディア)ほか。

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