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理想のスポーツカー、ポルシェ718ケイマンSに乗る。

河口まなぶ自動車ジャーナリスト

車両価格813/864万円(6速MT/7速PDK)。いくらクルマ趣味が過ぎたとしても、やはりこの辺りの価格のスポーツカーが”頑張って”または”無理して”なんとかなるギリギリのラインではないだろうか?

ポルシェ718ケイマンSは、まさにそんな価格帯に位置する「いつかは」と夢見れるモデルである。これを実際に見て、触れて、走らせてみると、まさに今、現実的に考えられ得る理想のスポーツカーだった。

オープン2シーターの718ボクスターSも悩ましいが、クーペボディのケイマンSは何かと役に立つし、何かと言い訳ができる。しかもポルシェのスポーツカーとしては珍しいリアハッチを備えるモデルゆえ、頑張ればゴルフバッグ(フルサイズは厳しいか)も積めるし、筆者の知っている例ではロードバイクを積んでいる猛者もいるくらいだ。と、まぁ実用性もギリギリで現実的である。

さらにいえば、クローズドボディのクーペゆえに使いでは良く、日常域でもすこぶる快適。特にこのモデルではサスペンションやエンジン特性など、様々な制御が変更できて、ノーマル/スポーツ/スポーツ+/インディビデュアルが選べるドライビングモードのノーマルを選べば、至極快適な運転環境がもたらされるのだ。

今回の試乗車はオプションの20インチサイズのタイヤを履いていたが、それでも場所を問わず快適な乗り味走り味を披露してくれた。

一方でサーキットでは先ほどのドライビング・モードでスポーツ+を選ぶと痛快な走りを味わえる。サーキットでは圧倒的なコントロール性の高さで、このクラスのスポーツカーとしては極上のハンドリングを味あわせてくれる。スポーツ+ではエンジンもレスポンスを増し、サウンドも心に響くボリュームでスポーツ・マインドをくすぐってくれる。大人のスポーツカーはTPOにあわせて、その性格を使い分けられる。

車両制御安定装置を解除しての走行は、それこそ腕次第で自由自在に姿勢をコントロールできる優れた走りを堪能できる。ポルシェには名車911が存在するが、ケイマンSはある意味911よりもスポーツカーとしてのバランスが良く、走りを存分に味わうのに相応しい仕立てだ。もちろん911は911で、昔からのRR(リアエンジン・リアドライブ)の味わいがあるが、最近のモデルはサーキットでないとその味を堪能できない。その意味でもケイマンSはサーキットはもちろん、日常でも快適ながらスポーツを全身で感じ取れる1台でもある。

今回の718ケイマンおよびケイマンS最大のトピックは、搭載エンジンがこれまでの水平対向6気筒・自然吸気型から、ケイマンが2.0L、ケイマンSが2.5Lの水平対向4気筒ターボに”ライトサイジング”されたことだろう。とはいえケイマンの2.0Lは300ps、ケイマンSの2.5Lは350psと必要十分以上の性能を有している。

エンジンが変わったことで、そのテイストも大きく変わった。その辺りについては動画を参照にしていただければと思う。

サーキットでの圧倒的な楽しさ気持ち良さ、公道での普段使いを厭わぬ快適性、そして実用にも耐えうる最低限のユーティリティ…718ケイマンSはまさに、現在考えられる中で最も理想的なスポーツカーといえる。

もっとも今回の試乗車は、様々なオプションを装着しているため、1000万円の大台になるが…。とはいえ718ケイマンSの他に、2.0Lの水平対向4気筒ターボを搭載し300psを発生する718ケイマンもラインナップされており、こちらは6速MTが619万円、7速PDKが671.4万円とより現実味を増してくる。

自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

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