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ベアーズ役員「女に読んでほしくない女性マネジメント術」大炎上!は単なるセクハラ問題か?

河合薫健康社会学者(Ph.D)
著者:Photography by Dallas Hanger

家事代行業の株式会社ベアーズの執行役員である片切真人氏の「女性に読んでほしくない女性のマネジメント」が大炎上。女性のみならず男性からも、批判・非難の大荒れとなった。

同社は、

「世の中をお騒がせいたしましたこと、世間の皆様に不愉快な思いをさせてしまいましたこと、申し訳ない気持ちでいっぱいでございます。(中略)

『女性の“愛する心”を応援します』というコンセプトを掲げている私どもベアーズとしても、非常に遺憾であるとともに重く受け止め、この者の処罰につきましては降格とすることと決定いたしました」

とホームページ上で報告した。

「また、いつもの過剰反応か?」と思いきや……、これがかなり度肝を抜く内容でして。

実名入りで公表したのは、むしろ“エラい!”かもしれない。

しかも、自身の『女性マネジメント経歴』として、

・女性を部下に持った数100名以上

・面談で女性を泣かしてしまった回数は50回以上

・「あなたがいるなら私は辞めます。」と言われた回数2回

・「セクハラしないで」と密告2回

なんことまで告白しているのだ。

ただ、確かに突っ込みどころ満載ではあるのだけれど、「でも、これって……」と思うこともあり。

というわけで、まずはその「女性に読んで欲しくない女性のマネジメント」コラムをお読みください(一部抜粋&概略)。

女性に読んでほしくない女性のマネジメントについて

「これからの時代は男女でわけて考えるのではなく、性別ではなく、個々としてみないといけないから男女でマネジメントをわけるなんていうのはナンセンスだ。」

と自分に言い聞かせてきましたが、やはり男女は違うという答えに行き着きました。

中でも大きく3つポイントがあると思っています。

1、口は出すが責任は負いたくないわがままな生き物

女性は全員「何にでも言いたがりだが責任は絶対に負いたくない生き物」。いきなり香ばしいスタートですが女性はそうなのです。「私はそうじゃない女性をみたことがある!」という方はそれは股間の膨らみが胸部に移動しただけの中身は男だと思います。

女性は上司のことを「あれができてない、これがよくない」と言いたい放題言っといて、「じゃああなたがやってよ」と言ったら「それは別の話です。」と突き返します。「それは私の仕事じゃないと思います。」と切り返されます。ここで大切なのはムカつかないこと。だってそういう生き物ですもの。

2、数字だけでは燃えてくれないめんどくさい生き物

ふたつめは女性は数字だけでは一切燃えてくれない生き物です。 「数字を追うというだけで毎日燃えられる意味がわからない。」と思っています。「何のためにこの仕事に取り組むべきか?どのような意味があるのか?」ということの説明が必要です。

「女性はすぐに動かない。」とか思っている方はそのような生き物だと認識することから始めて、丁寧に意味を説明できないならそもそも女性の部下を持ってはいけません。

3、解決しなくても共感してくれればいいと思ってる意味不明な生き物

女性は会話でつながりを感じて安心感や満足感を得るものだと思っています。昔グータンヌーボというテレビ番組があって、女性3人がただただ喋って同調しているだけの番組を30分流し続けていて、私はフジテレビのプロデューサーは気が狂ったのかとおもったら、まさかの高視聴率に溜飲を下げざるを得なかった覚えがあります。

・「で、結局何が言いたいの?」

・「じゃあ早くそうしたらいいじゃん。」

・「話が長くてまわりくどい。」

これらは『女性に対してのタブー三大用語』なので、これらを今後一切言わないようにしましょう。

さて、どう思いますか?

ご本人の言葉をお借りすれば、かなり「香ばしい」。

で、「これを読んだ女性から相当な攻撃を受けるとおもいます」と最後に書いている“期待”どおり、大炎上の結果となった。

「でも、これって…………」

と、冷静に立ち止まった方もいるのではないか?

実は、私自身、読み終えたときに、「あらあら、ずいぶんとまぁ」と呆れはしたけど、言ってることはそのとおり!

上記の「女性」を「上司」に置き換えれば、彼のいう「女性の特徴」が至極全うであることがわかる。

上司は全員「何にでも言いたがりだが責任は絶対に負いたくない生き物」

上司は「あれができてない、これがよくない」と言いたい放題

上司は数字だけでは一切燃えてくれない生き物

上司はすぐに動かない

上司は会話でつながりを感じ満足感を得るもの

「で、結局何が言いたいの?」「じゃあ早くそうしたらいいじゃん。」

「話が長くてまわりくどい。」これらは『上司に対してのタブー三大用語』

どうだろう? 「いる!うちの上司、まさしくこれ!」ーー。って具合にならないだろか?

片切氏曰く、

「女性は特徴を理解し、受容したらあとは特にすることと言ったら褒めることくらいでじゅうぶん一生懸命働いてくれる」らしい。

「“上司”は特徴を理解し、受容したらあとは特にすることと言ったら褒めることくらいでじゅうぶん一生懸命働いてくれる」のかもしれない。

そもそも人間とは、「自分でも認めたくない自分自身」を突きつけられたとき、ムカつく動物である。昔の人は、いみじくもそれを「腹の虫がおさまらない」という、言葉で表現した。

自分が無意識に否定している自分のいやな部分を指摘されすると、眠っている腹の虫が目を覚ます。その作業をしたのが、彼の1000人もの女性部下の存在で、理不尽なものいいに泣いた50名であり、「あなたがいるなら辞めます」、「セクハラしないで」と意義を申し立てた女性だったのだろう。

氏は、このコラムの冒頭で、「ただひたすら逃げずに立ち向かったことにより見えてきたことがある」として、今回の「女性の3つの特徴」を上げているのだが、「腹の虫の正体」を必死に、逃げることなく、考えて考えて考えて、今回の3点にたどり着いた。

だが、これは「自分たちの姿」であり、「女性の特徴」じゃない。女性たちが文句を言ってること、やっていることは、自分たちがやるべきことをやっていないだけ。それを指摘されただけなのに、その解釈を「女性の特徴」と排除することで、歪曲した。

例えば、「何のためにこの仕事に取り組むべきか?どのような意味があるのか?」ということの説明が必要」としているけど、人は「意味がある」と思うからこそ、いかなる困難でも乗り越えられる。いったいどこの誰が、「意味がない」「意味がわからない」ことを必死にやるというのだ。

意味をきちんと説明できなくて、上司でいる資格などない。女性の特徴ではなく、上司の手抜きでしかないのである。

「これからの時代は男女でわけて考えるのではなく、性別ではなく、個々としてみないといけないから男女でマネジメントをわけるなんていうのはナンセンスだ。」(コラムより)

と書いているが、女性をマネジメントするという行為は、広い意味のダイバーシティだ。

ダイバーシティとは、「ちょっと無理じゃないか」「これはないだろう」という異分子を受け入れること。つまり、「自分を否定するような人」を受け入れる許容性が求められる。

誰だって、「自分の当たり前」を否定的されれば、ムカつくし、落ち込むことだってある。

だが、その人にとっての事実を私がどう受け止めるか。「そういう話は聞く必要がない」とするか、「あ、それもあるよね」と未熟な自分を受け入れ、成長するかは、自分次第だ。

氏は、この難しい作業を「僕は逃げずにやった」という自負があるからこそ、実名入りで書いたのだろうけど、彼は最後まで受け入れられなかった。結局、「別モノ」として排除した。

せっかく

「女性は男性に比べて気配り目配り心配りと言われるようなきめ細やかなことによく気づくので、顧客満足の発想は男性より豊かですし、「なんとなくそう思う。」みたいな男から言ったら理解できない勘というのも鋭いですし、地頭も良い人が多い気がするし、かわいいしで女性は能力は高いことだらけです」

とまで書いているのに。あと一歩、自分に置き換え、「自分たちが当たり前にしていることを、彼女たちは教えてくれていることに気がついた」としてくれれば、共感を得るコラムになったのに……。残念なことだ。

え? それができないから、股間の膨らみだの、胸部だの品のない言葉を使うって?

ああ、その通りですね。

要するに、これはただのセクハラなんてもんじゃない。男社会の病巣を描き、ダイバーシティが進まない理由を、見事に呈してくれたコラム。

彼の超下品な言葉、「○○の膨らみが胸部に移動した男」は、おっさん化したオバさんだと思いますよ。

なんてことを、穏やかな春の光を背に考えたひとときでした。

健康社会学者(Ph.D)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。 新刊『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか』話題沸騰中(https://amzn.asia/d/6ypJ2bt)。「人の働き方は環境がつくる」をテーマに学術研究、執筆メディア活動。働く人々のインタビューをフィールドワークとして、その数は900人超。ベストセラー「他人をバカにしたがる男たち」「コロナショックと昭和おじさん社会」「残念な職場」「THE HOPE 50歳はどこへ消えたー半径3メートルの幸福論」等多数。

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