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J3長野に電撃加入。元スイス代表GKレオーニが演出した伝説のジャイアントキリング

河治良幸スポーツジャーナリスト

J3のAC長野パルセイロに元スイス代表のGKジョニー・レオーニが加入した。

2010年にはヴォルフスブルクで活躍するベナーリオの控えながら、南アフリカW杯に参加したインターナショナルなGKが31歳という脂ののった年齢でJ3の長野を新天地に選んだことは注目するべきトピックだが、このレオーニこそ世界最高峰の欧州チャンピオンズリーグでも歴史に残るジャイアントキリングを演出した“生ける伝説”なのだ。

2009−10シーズン、当時レオーニが所属していたチューリヒはスイス王者としてプレーオフに臨み、ラトビアのベンツピルス相手に合計スコア5−1で勝利。悲願のチャンピオンズリーグ本大会出場を成し遂げた。

しかし、グループリーグは優勝候補のレアル・マドリーとミラン、フランスの名門マルセイユ。まさに“3強1弱”とも言える組み合わせだった。そして下馬評通り、レアル・マドリーとの開幕戦ではホームで5−2の大敗を喫してしまう。明らかな格上にも果敢に挑んだ結果として2得点できたが、ゴールマウスを守るレオーニにとっては災難としか言い様のない内容が招いた5失点だった。

しかし、この経験はその後のチューリヒの戦いに活かされた。アウェーのサンシーロに乗り込んだミラン戦。アバーテのワイドからのシュートをレオーニが足でクリアするなど、序盤からのミランの攻勢に耐えたチューリヒは前半10分、CKからティヒネンの芸術的なヒールキックで先制点を決める。

そこからミランが猛攻を仕掛けてきたが、守備陣の体を張ったディフェンスとレオーニの冷静な対応でピンチを防ぎ続ける。攻撃に転じればワイドにボールをつなぎ、ミランに波状攻撃を許さなかった。敵将のレオナルド監督がロナウジーニョを投入すると、危険なFKをレオーニが間一髪のセーブ。さらにインザーギのヘッドをワンハンドでゴールの上にそらすと、アンブロジーニのパスから再びインザーギが放ったシュートも足で弾き出した。

最後はザンブロッタの技ありシュートがポストに直撃する幸運にも恵まれたチューリヒは0−1で勝利。チャンピオンズリーグの歴史においても語り種になるジャイアントキリングを最後方から演出したのはレオーニだった。そこからチューリヒは1分3敗で勝ち点は4。結局グループの4位で終えることとなったが、彼らの戦いぶりは大きなものに挑む勇者のそれであり、レオーニはその中心にいたのだ。

長野パルセイロの挑戦をこの守護神がどう支えていくのか。J3いや日本サッカーに新たな楽しみが1つ加わったことは間違いない。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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