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外国人として史上2人目の沢村賞に輝いた広島・ジョンソンが臨む3年目のシーズン

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
MLB時代と変わらない投球ができていると話すジョンソン投手(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

昨年はエースだった前田健太投手がドジャースに移籍したこともあり、先発陣に不安を抱えながらも25年ぶりにリーグ優勝を果たしたカープ。最多勝に輝いた野村祐輔投手の台頭もあったが、移籍2年目のクリス・ジョンソン投手が開幕投手を務めるなど安定した投球を続け、先発陣を牽引し続けた。その実績が評価され、外国人選手として史上2人目の沢村賞受賞投手となった。

「自分が選ばれたことを本当に光栄だと思っている。これまで選ばれてきたたくさんの素晴らしい投手と同じ場所に名を連ねることに、これ以上光栄なことはないと感じている」

チームは今年、リーグ連覇と日本一制覇を目指す一方で、今度は投手陣の精神的支柱だった黒田博樹投手を失った。先発陣で最年長になったジョンソン投手が果たす役割はさらに大きくなりそうだが、本人は意外に冷静に受け止めている。

「誰か1人の手で牽引できるものではない。もちろん若手選手のロールモデル(お手本)にはなれるだろうが、あくまでチーム全体で頑張っていくことだ。昨年我々は最高のチームのつながりを築き上げることができた。今年もそれを継続し、昨年同様のようなシーズンを始められればと思っている。

確かにクロダの穴は大きいが、自分が今まで以上のことをやらなければとは思っていない。このチームは将来有望な若手投手がいる。彼らが台頭してきて穴を埋めてくれるような活躍をしてほしいと願っている」

それにしても過去2年間のジョンソン投手の安定感は絶大だ。同じ野球とはいえ日米間には練習環境を含め大きな違いがあり、すべての外国人選手が期待通りのパフォーマンスをできるわけではない。なぜジョンソン投手は瞬時に日本のプロ野球に適応できたのだろうか。

「必要なのは風景、景色が変わるのを認識して、早く自然な状態になれるかだと思う。このチームは最高の環境を用意してくれ、コーチ陣も初日から自分に対し敬意を表してくれ簡単にチームに馴染むことができた。自分のリズムが確立されてからは、雪球が転がるようにどんどんいい方向に向かっていった。自分自身アメリカの時と何も変わっていないと思うし、だた風景が変わっただけで何かアジャストしたというわけではないんだ」

かつて10年以上前にNPBで活躍した外国時選手の1人から、入団1年目のキャンプでアメリカとの練習量、メニューの違いにカルチャーショックを受けたというエピソードを聞いたことがある。もちろん時代の違いもあるだろう。だがジョンソン投手の言葉を聞いて、カープの外国人選手に対する接し方がまったく違っているのがわかる。

昨年はジョンソン投手以外にもジェイ・ジャクソン投手、ブラディン・ヘーゲンズ投手、ブラッド・エルドレッド選手──の外国人選手たちがリーグ優勝に貢献しているように、カープには外国人選手が成功できる環境が整っているのだろう。

3年目のシーズンも自然体で臨むジョンソン投手。いずれにせよ彼の活躍無くしてチームの連覇はあり得ない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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