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「セルフィ(自分撮り)」が大ブレーク 英オックスフォード辞典が今年の言葉に選出

木村正人在英国際ジャーナリスト

「セルフィ(自分撮り)」って知っていますか。スマートフォンやパソコンに内蔵されているカメラで自分を撮影して、TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアにアップすることを指す略語です。

オックスフォード辞典を出版するオックスフォード大学出版局が毎月、インターネット上に飛び交う英単語1億5千万語を収集して分析した結果、「Selfie(セルフィ)」が1年前に比べて1万7千%も増えていたことがわかり、「今年の言葉2013」に選ばれました。

1年で使用頻度が1万7千%もアップしたセルフィ(オックスフォード大学出版局提供)
1年で使用頻度が1万7千%もアップしたセルフィ(オックスフォード大学出版局提供)

「セルフィ」は今年8月にオックスフォード辞典オンラインに収録されています。それによると「Selfy」と綴られることもある名詞で非公式に使われ、複数形は「Selfies」。

例文にはこうあります。

occasional selfies are acceptable, but posting a new picture of yourself every day isn’t necessary

(時々の自分撮りは良いが、毎日、自分の新しい写真を投稿する必要はありません)

今年、世界で最も注目された「セルフィ」はと言えば、日本のアルバイト従業員が冷蔵庫に入った写真を投稿して炎上した事件ではありません。

ローマ法王と撮影したセルフィ( AguiariさんのFacebookで公開)
ローマ法王と撮影したセルフィ( AguiariさんのFacebookで公開)

10代の若者たちがバチカンでローマ法王フランシスコと撮影した「セルフィ」です。他にも英国のキャメロン首相の奥さんの姉妹が結婚式の朝に撮影した「ベッドの上で熟睡する首相」も英国では大きな話題を呼びました。

同出版局によると、「セルフィ」がインターネット上で最初に使われたのはオーストラリア。2002年9月に、階段から転落した人がケガの様子を自分撮りして投稿。「セルフィだからピンボケになってゴメン」とつぶやいたのが始まりだそうです。

オックスフォード辞典の編集責任者ジュディ・ピアソール氏は「ソーシャルメディアの普及でセルフィという言葉が市民権を得るようになった。ハッシュタグや写真共有サイトFlickrで2004年ごろから広がり始めたが、ブレークしたのは12年」と分析しています。

「セルフィ」の派生語として「Helfie(ヘルフィ、自分の髪型を撮影)」、「Welfie(ウェルフィ、トレーニングする自分を撮影)」、「Drelfie(ドレルフィ、酔っ払った自分を撮影)」などがあるそうです。

この夏、日本でも24時間スーパー店内のアイスクリーム用冷蔵庫の中に男性従業員が入り、涼んでいる姿がFacebookなどで流出、ラーメン店の女性アルバイトが冷凍庫内のソーセージを口にくわえた姿をTwitterに投稿して、「不衛生だ」などと大騒ぎになりました。

こうした悪ふざけ「セルフィ」は許される行いではありませんが、世界的な現象としての「セルフィ(自分撮り)」衝動が背景にあったのかもしれません。

ソーシャルメディアの発達と普及によって、みんなが世界に向かって「自分は今ここでこんなことをしているよ」と叫ぶことができるようになったのです。2013年はまさに「セルフィ元年」といえるでしょう。

過去の「今年の言葉」(オックスフォード大学出版局提供)
過去の「今年の言葉」(オックスフォード大学出版局提供)

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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