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【スコットランド独立投票】出口調査は賛成46%、反対54%。賭け屋も市場も「NO」。しかし…。

木村正人在英国際ジャーナリスト

[エディンバラ発]18日午後10時(日本時間19日午前6時)、スコットランド独立を問う住民投票が締め切られた。登録した投票権者は16歳以上の428万5323人。投票権者全体の97%が登録するなど、関心の高さを示した。

大手世論調査会社YouGovは同日深夜、出口調査から反対54%、賛成46%と結果を予測した。

英高級紙デーリー・テレグラフ(電子版)は、労働党幹部の話として、投票率は推定84%で、過去最高だった1950年総選挙の83.9%を上回る見通しだと報じた。

24時間ニュース局スカイ・ニュースによると、スコットランド東部ダンディーの投票率は90%に達したという。

9月に入ってからの世論調査動向を折れ線グラフにしてみた。

筆者作成
筆者作成

独立反対派の優勢は動かし難くなっている。世論調査で独立賛成派が反対派を上回ったのは2011年8月の1回、昨年8月の1回、今年9月に入ってからの2回だけ。

18日、無料夕刊紙イブニング・スタンダードが発表した最後の世論調査では反対が53%で、賛成47%を6ポイントリード。世論調査動向からは独立反対派が過半数を占める見通しだ。

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英国名物の賭け屋の倍率は、反対が1.2倍、賛成が4.5倍と、やはり独立反対派が優勢。

為替市場がどう見ているかと言えば、9月15日に1ポンド=173.19円までポンド安が進んだが、この日は178.23円までポンド高が進んだ。独立反対を織り込んだ動きだ。

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筆者はエディンバラ中心部にある投票所で朝と夜に簡易世論調査を行った。投票の締め切りが済んだので下に示してみた。

朝は独立賛成派が勢いがあった。

賛成15票

反対8票

無回答8票

夜は――。

賛成8票

反対7票

無回答4票

棄権1票

無回答の人の中には、「明日どんな結果になっても両サイドに亀裂を残さないよう、どちらに投票したかは言えない」という人もいたが、多くは独立に反対票を投じたような印象を受けた。

サイレント・マジョリティーを考慮すると、筆者も独立反対派が優勢のように感じる。

しかし、大衆酒場パブでは、スコットランド・ブルーとスコットランドの民族衣装キルトに身をつけたシンガーがスコットランド精神を高らかに歌い上げていた。

ロンドン五輪の男子シングルスで金メダルに輝いたスコットランド出身のプロテニスプレーヤー、アンディ・マレーは影響力を配慮して、ずっと公平な立場を保ってきた。

しかし、「ここ数日の反対派のネガティブ・キャンペーンを目の当たりにして考え方を変えた。これ(独立)を成し遂げよう」と怒りのツィート。

スペイン・カタルーニャ自治州からやってきた学生(筆者撮影)
スペイン・カタルーニャ自治州からやってきた学生(筆者撮影)

エディンバラには分離独立運動を抱えるスペインのカタルーニャ自治州やバスク地方から若者が大挙して押し寄せ、スコットランド旗とカタルーニャ旗、バスク旗を掲げた。

中央に踏みつけられてきた民族の精神が真っ暗な闇に向かって咆哮しているようにも思えた。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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