キャサリン妃の日帰り出産 海外では当たり前
ロンドンのセント・メアリー病院リンド病棟で体重3700グラムのプリンセスを無事、出産したキャサリン妃(33)は2日午後6時すぎ、ウィリアム王子(32)が運転するレンジ・ローバーで退院しました。出産入院からわずか約12時間の「早業」でした。
患者さん、病院関係者、警備に当たる警察にできるだけ迷惑をかけたくない。21世紀の英国を占う総選挙から世間の関心をそらしたくない。みんなが緊縮財政に耐えている時だから贅沢は禁物――。そんな2人の気持ちがにじみ出たスピード出産でした。
2日の動きをおさらいしておきます。
午前6時、キャサリン妃がウィリアム王子に付き添われてレンジ・ローバーでリンド病棟に到着。ケンジントン宮殿から出産が始まったことが発表される
午前8時34分、体重3700グラムのプリンセス誕生
午前11時、出産を公式発表
午前11時34分、リンド病棟前で昔ながらのタウン・クライヤーが祝福の鐘を鳴らし、「女の子誕生」を知らせる
午後3時56分、ウィリアム王子がリンド病棟を出る
午後4時14分、ウィリアム王子がジョージ王子を連れてリンド病棟に戻ってくる
午後6時11分、キャサリン妃がプリンセスを抱いてウィリアム王子の運転する車で退院
「それにしても退院が早すぎない」「キャサリン妃は大丈夫」と思われた方が日本では多いのではないでしょうか。
日本では分娩後2時間ぐらい分娩室で過ごしたあと、部屋に戻り、6~12時間ぐらい休んで体力を回復させます。以前は1週間の入院が当たり前でしたが、産婦人科医が不足していることから、退院が少し早まりました。それでも5日間は入院することが多いようです。
英国では自然分娩なら出産から数時間で退院できます。産婦の体調が思わしくなく、自宅に戻っても世話をしてくれる人がいない場合に限り、病院に留まることができます。しかし翌日には退院です。
帝王切開の場合は24~48時間の入院が認められ、3~4日目には退院です。英国のNHS(国営医療サービス)はすべて税金で運営されているため、入院期間をできるだけ短縮し、患者は自宅で療養するのが普通です。
出産は病気ではないため、英国では日帰り出産が当たり前になっています。イングランド地方の統計では病院で出産する人が全体の94%、助産所で出産する人が3~4%、自宅出産は2~3%です。
NHSではなくプライベート医療で出産するキャサリン妃の場合、リンド病棟のお値段は1泊約6千ポンド、プラス相談料。キャサリン妃は第2子出産なので10%オフですが、5400ポンドは日本円にして98万円です。
できるだけ普通の国民と同じように生活することを心掛けているキャサリン妃は1泊するのではなく、日帰り出産を選択したようです。
ウィリアム王子は4月下旬から6月1日まで無給の育児休暇を取り、キャサリン妃のそばにいます。出産という人生の大イベントで、日本のように夫が産婦と新生児を病院に放ったらかして仕事に出かけたら「即、離婚」ということになる恐れ大です。
英国の日帰り出産は、ウィリアム王子のような「イクメン」に支えられていると言って良いでしょう。合計特殊出生率を見てみると、日帰り出産が当たり前の英国は1.97、5~7日間入院する日本は1.39です。男性が女性の子育てを支援する英国の方が出生率は回復しています。
キャサリン妃は退院時、故ダイアナ元皇太子妃の形見であるサファイアの指輪をはめて、プリンセスを抱いていました。私たちはいつもあなたと一緒ですという心温まるメッセージです。
キャサリン妃が着ていた白に黄色い花模様のドレスはお気に入りの英国の女性デザイナー、ジェニー・パッカムさんの作品。世界中のメディアが注目する中、さり気なく英国ブランドをPRするのもキャサリン妃の自然流のようです。
(おわり)