Yahoo!ニュース

カネまみれFIFAについに司直のメス 副会長ら14人を起訴

木村正人在英国際ジャーナリスト

カネまみれ、疑惑まみれの国際サッカー連盟(FIFA)にようやく司直のメスが入った――。

米司法省と連邦捜査局(FBI)はスイス当局を通じて27日朝(現地時間)、ゆすり、電子的通信手段を使った詐欺、マネーロンダリング(資金洗浄)の容疑でFIFAの幹部14人を一斉に起訴した。

スイス・チューリッヒの高級ホテルで逮捕された7人は逮捕犯罪者引き渡し条約に基づき、身柄は速やかに米国に引き渡される。

米紙ニューヨーク・タイムズ電子版などが報じた。ゼップ・ブラッターFIFA会長(写真下はAsianFCより)は含まれていないが、今後、捜査の手が及ぶ可能性は否定できないという。この日朝、4年に一度のFIFA会長選のため加盟209カ国のサッカー協会代表が集まるチューリヒの超豪華ホテルから容疑者は連行されたと報じられた。

ブラッターFIFA会長(C)AsianFC
ブラッターFIFA会長(C)AsianFC

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、米ブルックリン地区の検察当局とFBIニューヨーク支局が捜査を指揮。1990~2011年まで北中米カリブ海サッカー連盟(CONCACAF)事務局長を務め、FIFA実行委員会のメンバーだったチャールズ・ブレイザー氏が司法取引に応じ、FIFA幹部との会話を極秘に録音したという。

逮捕された14人の中には実行委員会のジャック・ワーナー元副会長、ジェフリー・ウェッブ氏ら現職副会長2人、スポーツマーケティング部門の幹部4人も含まれている。

巨額の放映権料などスポーツマーケティングを通じて賄賂やキックバックを要求し、1億5千万ドル以上の不当利得をあげていた疑いも含まれている。

米国の裁判管轄は国際テロの捜査などの場合、米国の金融機関、インターネットのサービスプロバイダが使われているだけでも認められる。ウエッブ副会長はCONCACAF会長。捜査協力者のブレイザー氏もCONCACAFの事務局長だったことなどから、今回の捜査はCONCACAFが舞台になっている可能性が強い。

1990~2011年までCONCACAF会長を務めたワーナー氏は06年ワールドカップ・ドイツ大会でチケット販売で不当利得をあげたり、出身国トリニダード・トバゴの代表選手の報奨金をピンはねしていた疑いで糾弾されていた。

このほかワーナー氏をめぐっては10年のFIFA会長選で買収工作を企てていた疑惑も浮上。13年のCONCACAF報告書で数千万ドルを受け取っていたと指摘されている。

2010年10月、英日曜紙サンデー・タイムズは18年と22年に開催されるW杯開催地の決定を2カ月後に控え、招致について投票権を持つFIFA実行委員会のメンバー2人が投票の見返りに金銭を要求したという衝撃のスクープを放った。

同紙のおとり取材に引っ掛かった西アフリカ・サッカー連盟会長は18年大会の開催地を決める投票に関して80万ドルを要求。オセアニアサッカー連盟会長はスポーツ学校の開設資金として230万ドルを要求していた。

FIFAはこの報道を受けて2人を職務停止処分にした。後に英イングランド招致チームの代表がFIFA実行委員会のメンバーから250万ドルを要求されたり、ナイトの称号を要求されたりしていたことを暴露している。

さらに22年カタール大会招致に関してFIFA実行委員会のメンバー3人がカタールからそれぞれ150万ドルずつ受け取ったとカタール招致チームの一員が内部告発。サンデー・タイムズ紙はカタールがW杯開催地が決まる前に、世界中のサッカー関係者に500万ドル以上を支払ったと報じたが、カタール側は疑惑を否定している。

42ページのFIFA倫理委員会の報告書は「18年と22年のW杯招致に関して再投票を実施べきとする十分な証拠はなかった」という結論を下したが、調査を担当した米国の元連邦検事マイケル・ガルシア氏は「報告書のまとめ方は間違っていて不完全」と厳しく批判している。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

木村正人の最近の記事