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2017年 20億円で人類初の頭部移植、3人の遺伝子を持つ赤ちゃん誕生へ AIへの投資は300%増

木村正人在英国際ジャーナリスト
パンダ姿で東京・上野を案内する人型ロボット「Pepper」(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

えッ、人の頭部を移植

2017年はどんな年になるのでしょう。英紙デーリー・テレグラフの科学技術担当編集者・記者が大胆に予測しています。人工知能(AI)、ビッグデータ、モノのインターネット(IoT)の発展もさることながら、生理学・医学分野では目が飛び出すような出来事が起きるようです。

まずは切り離した頭部を別の体に接合するという頭部移植。このニュースは16年9月に世界中を駆け巡りました。執刀するのはイタリアの神経科学者であるセルジオ・カナベーロ教授と中国のチーム。患者は、脊髄性筋萎縮症(ウェルドニッヒ・ホフマン病)を患うロシア人のワレリー・スピリドノフさん(31)です。

手術の費用は1400万ポンド(約20億円)。カナベーロ教授率いる150人の医師や看護師のチームが36時間がかりで行うそうです。移植に備えて摂氏12度の低温に保たれたスピリドノフさんの頭部を切断し、脳死と判定された他の体にひっつけるというものです。

スピリドノフさんの意識は、医師が脊髄を刺激するまで3~4週間戻らないそうです。カナベーロ教授のチームは16年1月に猿の頭部移植に成功しています。同教授は「90%手術は成功する」と保証していますが、論争を呼び起こすのは必至です。

クリスマスには3人の遺伝子を持つ体外受精児誕生へ

英国のヒト受精・胚機構(HFEA)が不妊治療として2人の母親の卵子と1人の父親の精子を用いた体外受精(IVF)を認めたことを受け、17年のクリスマスには3人の親を持つ体外受精児が誕生しそうです。

筋ジストロフィー症など難病の遺伝を防ぐため、母親の卵子の細胞質にあるミトコンドリアDNAを健康な女性ドナー(提供者)のものと置き換えた上で体外受精を行おうというものです。

体外受精のパイオニアであり、外科医パトリック・ステプトー氏とともに体外受精の技術を完成させた英国の生物学者ロバート・エドワーズ氏(故人)は10年ノーベル生理学・医学賞を受賞。世界初の哺乳類の体細胞クローンである雌羊ドリーはスコットランドのロスリン研究所で誕生しています。

3人の遺伝子を持つ赤ちゃんの誕生でも英国が先陣を切りそうです。このほかアルツハイマー病の治療薬が最終試験の段階に入るほか、がん患者のDNAを編集する大掛かりな研究も始まるそうです。コンピューターの処理能力が飛躍的にアップし、ビッグデータが活用できるようになったことが背景にあります。

AI投資は300%以上も増える

米フォレスター・リサーチの報告書によると、AIへの投資は17年、前年より300%以上増えると予測されています。16年は、人工知能開発会社「グーグル・ディープマインド」(ロンドン)が開発したプログラム「アルファ碁」が韓国のプロ棋士で世界トップレベルのイ・セドル9段に勝ち越すという非常に大きなブレークスルーがありました。

自動運転でも有人運転を補助するだけなら実用化の目途はつき始めています。有人運転には事故がつきものですが、自動運転となると事故は絶対に許されず、どうしてもハードルは高くなります。しかしインテリジェンス・アシスタントという面ではもうすでに実用化は始まっています。

筆者は日常の取材でグーグルマップの音声案内や、多言語に対応するためグーグル翻訳のお世話になっています。

質問すれば答えてくれるアマゾン・エコー、「テレビをつけて」と話しかければスイッチを入れてくれるグーグル・ホーム。外国人観光客に対応するためアップルのSiriを活用する旅館の経営者もいるほどです。マイクロソフトにもCortanaというサービスがあります。

AIに問い掛ければ、一番自分が欲しいものを探し出して瞬時に提示してくれるのです。こうしたICT(情報通信技術)の革新は法律事務所、セキュリティー会社、マーケティング代理店、ビジネス、医療サービスの向上にも活用されています。

バイオメトリクス(生体)認証も実用化されています。スマートフォンのロックを解除するための指紋認証、虹彩のパターンを認識する空港での本人確認。近赤外光を指に透過させて静脈パターンを確認する自動支払いシステムも間もなく普及しそうです。

指の静脈パターンを認識する生体認証システム(STHALERのHPより)
指の静脈パターンを認識する生体認証システム(STHALERのHPより)

テクノロジーは常に人間の能力を追い越してきました。これからAI、ビッグデータ、IoT、3Dプリンターなどの普及で産業構造が劇的に変わっていくことは避けられません。フィナンシャル・タイムズ紙は次の5~10年で存続が脅かされる5つの業種を挙げています。

(1)ハイストリートの旅行代理店

飛行機、鉄道、ホテル、レストランなどオンライン予約がもっと普及するため

(2)小部品のメーカー

3Dプリンターが普及し、どこでも簡単に部品がデザイン・製造できるようになるため

(3)自動車保険業

自動運転の無人車が普及すれば自動車事故が激減するため

(4)ファイナンシャル・アドバイザー

金融規制が強化される一方、AIの発達によるロボット・アドバイザーの普及で必要な金融情報が入手しやすくなるため

(5)自動車整備工場

電気自動車が普及すると現在のガソリン車、ディーゼル車に比べて構造が簡単になり、整備・修理を頼むことが減るため

こうした技術革新をピンチとみるか、チャンスとみるかは私たち次第だと思います。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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