金正恩氏キモいりの「北朝鮮観光」に未来はあるのか!? 活路は「共産主義テーマパーク」
外国人観光客の誘致は、金正恩氏が掲げる重点政策のひとつだ。
たとえば今年2月には、北朝鮮と中国、ロシアが国境を接するエリアに「豆満江三角州国際観光合作区」を建設する計画が存在することが明らかになった。計画は、北朝鮮の羅先、中国の防川、ロシアのハサンのそれぞれ10万平方メートルをノービザ訪問が可能な免税地域とするものだ。実現すれば、地域は限定されているとはいえ、かつてなく北朝鮮への出入りが自由になる。
また最近では、東海岸の港湾都市・元山(ウォンサン)と、同国有数の景勝地である金剛山(クムガンサン)に国際観光地帯を設ける計画を立て、外資を呼んで投資説明会も行っている。
さらに、フラッグキャリアである高麗航空も客室乗務員の制服をイメチェン。機内食も改善努力をしている。もっとも、国際評価は散々なままなのだが……。
やはり全般的に言って、北朝鮮の取り組みにはちぐはぐ感が否めない。観光特区は中朝国境を流れる鴨緑江沿いにも設置されるようだが、デイリーNKが現地を取材してみると、そこはただの「農村」に過ぎなかった。
一方、スイス・ベルンで行われた観光産業の展示会「ホリデイフェア」にブースを出展するなどして、2013年末にオープンした馬息嶺(マシンリョン)スキー場も大々的に宣伝している。しかしこれに対しては、アムネスティ・インターナショナルが「北朝鮮でスキーをすることは、アウシュビッツ強制収容所の隣でスキーをするのと同じ」「ブースを提供したことは、北朝鮮の反人道的な人権蹂躙状況を無視して、北朝鮮がまるで正常な国家のようなイメージを与える」などと厳しいコメントを現地メディアに寄せた。
当然だろう。すぐ近くに日本の素晴らしいスキー環境があるのに、強制収容所に10万人単位の人々を閉じ込めたり、裁判なしで軍高官を処刑するような国に遊びに行こうという人は少ない。
観光産業はイメージが第一であるということを、北朝鮮はまったくわかっていないのだ。
もちろん、現在の北朝鮮のイメージに魅かれて行く観光客もいないわけではない。当局が付けたガイドの尾行を気にしながら、こっそり街中を散歩するのもなかなかにスリリングだ。
現状において北朝鮮観光の活路は、前時代の名残を残す「共産主義テーマパーク」として、珍しい物好きの西洋人などに高めのツアー商品を売りつけることぐらいしかないのかもしれない。